3 奪う妹と奪われる姉

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 一歳下の妹リリアンは、昔から私が持っているモノはなんでも全て欲しがった。


 たとえ同じモノを両親から与えられたとしても、お姉様のモノがいいと言って泣いて駄々を捏ねる。


 そして自分が大して欲しくないモノだったとしても、私が持っていれば事あるごとに妹は欲しがり最後には必ず奪っていく。


 そんな我儘な妹の事を私は面倒だなとは思っていたけれど、小さい頃はまだ嫌いじゃなかった。


 だって小さい頃はそれがオモチャであったり、お人形だったり、ドレスだったりで、全然我慢出来たから。


 けれど。

 年齢を重ねて私達姉妹の行動範囲が子爵家の外にまでなると、リリアンが欲しがり奪う対象がモノだけでは収まらなくなり。


 それは時に私の友人や、私の大切な人達へと変わっていきました。


 それからはもう地獄で。


 私が仲良くなったお友達は、次に会うと私のことが大嫌いになり。


 リリアンの友達になって私の事を無視したり、いじめたりしてきました。


 それは家に仕える使用人達もそうで。


 最初は私に優しくしてくれていたとしても、リリアンに一度でも関わると。


 私に冷たく接するようになっていく。


 そして私が一番辛かったのは、両親がリリアンばかりを贔屓してその行い全てを許すこと。


 妹は陽の光を浴びてキラキラと輝くふわふわの金髪に、丸く大きな瞳はガラス玉みたいで美しく。


 まるで花の妖精のように可愛いリリアン。


 それに比べて姉の私は灰を被ったような暗い銀髪に、冷たい印象の切れ長の瞳で。


 驚くほど地味な容姿の私。


 別に自分の容姿が不細工などとは決して思いませんが、華やかな容姿の妹とはまるで違っていて。

 鏡を見るたびに、リリアンと容姿を比べられるたびに心は憂鬱になった。

 

 ……だから、なのでしょうか?


 花の妖精のように可愛いリリアンを両親は甘やかし、とても可愛がった。


「姉なのだから我慢しなさい」


 何度この言葉を両親に言われたことでしょう。


 リリアンと私は、たった1つしか年齢が変わらない姉妹なのに。


 私には姉だからと我慢を強いる両親。


 そんな両親はリリアンが欲しがれば、私のものを何でも取り上げてあげる。


 そしてリリアンが気に食わなければ。


 珍しく私に優しくしてくれていた使用人だろうが、家庭教師だろうが全て追い出した。


 その人達の事をどんなに私が大事にしていたとしても、全て無視され。


 どんなに嫌だと言っても、泣いて縋ったとしても私の願いは聞き入れられない。


 両親は私から大切なモノを取り上げる、そしてリリアンを喜ばせる。


 そうして私から奪う事に成功したリリアンは、それはそれは嬉しそうに笑う。


 そんな妹が私は大嫌いになった。


 そして妹だけを贔屓して大事にする両親に、私は嫌気が差した。


 だから私は実家の子爵家を出て働き、一人で生きていくと決めた。

 私から何でも奪う妹、そして妹を贔屓して優先する両親の元から離れたくて。 


 幸いな事にリリアンにしか興味のない両親は、私が家を出る事を全く反対しませんでした。


 ただリリアンは私が家を出て働くと知って『お姉様、貴族令嬢なのに働くなんて……恥ずかしくないの? それともそんなにお金が欲しい?』と、軽蔑するように笑っておりましたが。


 それ以外私の邪魔をして来なかったので。


 これ幸いと放っておきました。



 そして十八歳の成人を迎え。

 私は直ぐに実家の子爵家を出て、何日も馬車に揺られて王都に辿り着き。

 

 王宮の侍女として働き始めました。


 私の実家は辺境にあるあまり豊かではない子爵家ですので、王宮で侍女になれるだなんて初めは全く思っておりませんでした。


 私としてはメイドでも洗濯係でもなんでもいいから、あの家から出られるならばどんな仕事でもいいと思って王宮までやって参りました。


 ですが私が王宮に着きますと、侍女の採用試験があると教えて頂き。


 進められるがまま王宮の侍女採用試験を受けましたら、なんと幸運な事に侍女として働ける事になりまして。


 第一王子殿下の元で、侍女として仕える事になったのでございます。

 

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