お伽商事
お伽商事は食品系商社である。商社は仕入に利益を乗せて販売するが、お伽商事は例外的に吉備団子の直営工場を持っていた。吉備団子は、味付も設備も変えておらず、消費者から飽きられていた。工場の操業度を上げるため、社員に吉備団子を現物支給していたが、焼け石に水だった。
お伽商事の桃太郎班では、犬原がPCにてこずっていた。
「出張精算ができないワン」
「音声認識を使って」
「ワンワン。1しかでてこないワン」
「もういい。俺がやるよ」
桃太郎は思った。こんな状態で、何で外出したがるのか。そもそも、PCをまとも使えないのに、どうやって初級シスアドを取ったというのか?
「いつもありがとうワン」
「どういたしまして」
桃太郎が席を立つと、猿田がひっそり付いてきた。
「今度の出張ですけど、遅れていいですか?妻が調子悪いものでして」
猿田は、最近、モチベーションが高くない。出張に遅れると言って、当日になって欠席にする。そんな状況が続いていた。
「何で打合わせで言わなかったの?」
「みんなの前だと言いにくいじゃないですか」
みんなの予定と状況を互いに確認するために打ち合わせをやっているのに、その打ち合わせで言いにくいんだったら、何のための打ち合わせなのか?桃太郎は思わずため息をした。
しかし、猿田はさらに吐き出すように言った。
「みんな、あの吉備団子食べて頑張ってるじゃないですか」
「どういう意味?」
「味しないじゃないですか?」
猿田はさらっと問題発言をした。吉備団子は主力商品のはずなのに、それを『味しない』と言ってしまったのだ。
「俺は気にならないし、俺に言われても困るんだけど」
「桃太郎さんから言ってくださいよ。吉備団子の現物支給が嫌だって。みんなの意見なんですから」
「だったら、現物支給をやめて、日当をもらうことにして下さい」
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