2.3
『向井春一? あぁ、ハルのこと? ハルは、茶髪でピアスが開いてて、ピアノ界隈では有名人さ』
『
『というか、君がハルのこと知ってどうするの?野次馬?』
新学期初日からの帰り道、
声楽への夢が一番なのだけど、五十鈴附属高校に編入したら、ストリートピアノの彼が弾く音色をもう一度聞けるものかと、仄かに期待していた自分がいた。
見かけなかったのは、気のせいではなかったんだ……。
サエコ:新学期初日はどうだった? 今度の土曜日に話きかせて?
冴子のタイミング抜群の連絡に、
土曜日の午後ともなると、
その中で待っていた冴子が、
「
桜冬も冴子に手を振りながら、駆け寄った。
「冴子、お待たせ。午前だけとはいえ、土曜日も授業は慣れないかも」
「そんなこと言って、きっとすぐ大丈夫になるよ。でさ、今日はパフェでも食べにいくのどう?」
価格だけでなく、長時間友達と話していようが、ひとり勉強していようが、咎められることがない。
席に案内され、
「で、
「やっぱり五十鈴附属って、普通の高校じゃなかったよ! 音楽室は3か所あるし、少人数で練習できる教室もあってさ、それに、クラスの子も良くしてくれてさ」
「そっかぁ。友達は、できそう?」
「……うーん。それは、どうだろう」
「良くしてくれるって言っていたのに?」
「たぶんだけど、コンクールとか選抜とかあるからかな。ライバル感漂ってる感じだった」
視線を落とした
「ところで、冴子。宇治小春駅でピアノ弾いてた五十鈴附属の生徒、覚えてる?」
「もちろんよ。
「新学期の初日から、その人の噂で持ち切りなの。なんだか、ピアノ弾いてないみたい」
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