助けてくれたのは、おちんちんだった。銀河最強の宇宙船らしいがホントかよ。
藤原くう
プロローグ
西暦21XX年。
世界は核の炎に――包まれはしなかった。
が、地球は爆発した。
最初、宇宙人は原因を調べようとしなかった。「ハムロ・ツカサ」という地球人が長いこと漂流していた事実すら知らなかった。
というのも地球は田舎も田舎、ド田舎だ。地球人が都会を好むように、宇宙人だって都会が大好き。他人の不幸がオカズでメシウマなのだ。
――地球なんか行きたくねぇ。
と誰もが思っていたし「ざまーみやがれ」と言われたほど。
理由は、金属板を贈りつけてきやがったから。しかも、裸の男が描かれてるやつ。
そのおかげで、地球人のおちんちんは銀河中に知れわたっている。
おちんちんのことはさておき、地球爆発の原因はよくわからないまま、一年が経過したある日のこと。
地球のあった場所で人工物が見つかった。
一連の騒動の後、それを見た宇宙人A(仮名)は、
「高台にあるお城を思いだしました。ええ、それです。紫色のひかりで照らされているという、地球人が交尾していた場所です」
と苦笑まじりに言った。そんな彼は翌日、行方不明となった。
その人工物は確かに、人類が中世に建築したキャッスルそっくりだった。建物だけではなく、その下の大地もあった。
誰が呼んだか、コンペイトウ。
ダイヤモンドのかたちをした人工物から放たれたのは、それまで存在が否定されてきた魔法。
銀河中のありとあらゆる生命体のあたまの中に、とろけるような甘ったるい少女の声を響かせた。
「この世界に住まう、くそったれのおまえらへ。わらわは魔王アザトー。この世界を手にするものじゃ」
全銀河の生命体の頭のなかへと響いた、可憐な声の宣戦布告を、気絶していたツカサだけは聞くことがなかった。
いやむしろその方が、世界ひいてはアザトーのためにもよかったのかもしれない。
だって、ハムロ・ツカサは、ロリコンであったから。
さてここに、地球人とはなんの関係もない宇宙船ディック号がある。大きさは地球人がつくった超ド級戦艦くらい、形としては、棒に球体が2つくっついている。
地球人なら誰もがぎょっとするであろう、その宇宙船にツカサが衝突したのは、タマタマ――じゃなかった偶然である。
そもそもディック号は、その姿かたちゆえ、宇宙人たちに嫌われていた。もちろん最初から嫌われていたわけではない。地球人が知られるようになってからだ。
もっといえば、地球人のおちんちんに似ているとわかってから。
まあ、そういうことなので、A級強襲揚陸艦1番艦〈ディック〉は建造されてすぐに、スクラップ処分されそうになる。
「
とある真っ赤な大佐の言葉を借りるなら、そういうことになる。
そこを助けたのが、ディック号の艦長。彼によってこの
そのおかげで、魔王城なんてへんてこなものが出現したことを、だれもが知ることとなり、我らが主人公も助かったのである。
宇宙を漂流していた両者が、ぶつかる。それは極めて低い可能性だった。SF世界へファンタジー世界が攻めてくるくらいにはめずらしく、それが実際に起きたのだから、そういうこともあるよね。
とにかく。
ディック号の棒の先端に、ツカサはキスした。いや、ヘルメットしていたし、キスというほど生易しいぶつかり方じゃなかったが。
その衝撃といったら、スリープ状態にあったディック号のAIが、攻撃されたと思うほど。すぐに目を覚ましたAIは、その衝突物へと、左曲がりの棒状兵器を向けた。
まっすぐ伸びる棒の先端から、白いビームがびゅるるるっと飛びだそうとしたまさにそのとき、AIは気がついた。
――これ、見たことない生命体だ。
そんなことがあって、一年間、宇宙を漂流していたツカサはやっとこさ回収され、新たな艦長として目覚めることとなる。
酸欠でツカサの頭がおかしくなってしまう、一日前のことであった。
この出会いがのちに、宇宙へ出現した魔王さまを散々苦しめることになるとは、いったいだれが想像できただろう。
もっとも苦しむことになるのは、魔王だけではない。
この後、ツカサは銀河連合軍へ所属することとなり、少尉という地位とディック号を与えられる。
最新鋭機といえば聞こえはいいが、地球最後の人間と、その地球人のブツとそっくりなやつ――ベストマッチだ、と人事の宇宙人がほくそ笑んだのは想像に難くない。
それからひと月で、ツカサは惑星ひとつを消し飛ばし、はじめての上司と取っ組みあいのケンカをしでかした。
宇宙船〈ディック〉号と魔王城をめぐる物語は、主人公がお縄についてからはじまるのだった……。
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