転生しても社会の歯車

石炉氏

転生しても社会の歯車

転生したとしても私の性根から歯車根性が抜ける事はないんだなと、獄中で書類仕事をこなしつつ、外から聞こえるパーティーの音を聞きながら、その様な事を考えていた。


事の発端は私の転生から始まる、いわゆるブラック会社勤務の前世の私が過労で死んでしまい、神と自称する謎の光に、剣と魔法の世界に転生させられた所からだろう。


男爵家の跡取りとして産まれ、転生前の知識で神童と目され、また転生特典の水精霊の加護で魔法使いとしても格別の期待をされていた。

男爵家では私の教育は出来ないと、両親と伯爵様の計らいで伯爵家で教育を受ける事になった。

それ自体は何も問題なく、両親や弟妹も頻繁に会いに来てくれ、より多くの蔵書がある伯爵家は読書しているだけで楽しく、教育の質も高く、外様の私に皆とても良くしてくれた、伯爵家で過ごした時間は私の人生でも特に輝いている時間だ。


潮目が変わったのは貴族の子供が成人前に六年間入る、王国立貴族学園に入学してからだろう、入学年は第二王子、将軍の息子、宰相の息子、公爵令嬢、大商人の娘、外国貴族、聖教国の聖女、国内外問わず様々な有力者やその関係者が並んでいた。

そんな中で男爵家出身の私が入学成績上位に入り込んでしまい、悪目立ちしてしまったのは、後を考えた際、悪手であったことは明白だ。

悪目立ちしたせいで、王子と宰相息子と共に生徒会に属する事になってしまったのだ、男爵家という吹けば飛ぶような出身は、問題があった際のスケープゴートとして、また雑務担当として都合がよかったのだろう、6年間の雑務と家族の身の安全を天秤にかけられたなら迷うことなく後者を選択し生徒会雑務担当になった。



1年目は充実した生徒会だった、王子に遠慮はしても優秀な先輩方が丁寧に説明しながら進めてくれたからだろう。


2年目から何故が王族直轄地の経営にも手を出す事になっていたが、転生前の知識などで大商人の娘に儲け話に一枚噛ませ、様々な品を無理に取り寄せてもらい意欲的に施策をし、宰相息子と共に問題を片付けながら生徒会業務と直轄地経営をこなしていった。


3年目は地獄が始まった、王子が子爵家の令嬢に手を出したからだ、婚約者大激怒の騒動対応が、直轄地の治水事業が本格化するタイミングに重なり、婚約者との騒動対応に宰相息子含め多数の人員がかかりっきりになり、学業そっちのけで直轄地の治水事業と経営を私1人が行う事になってしまった。

さすがに文句と応援要請を宰相息子に言いに行った時、宰相息子が草場の陰で泣いていた、文句を飲み込み一緒にこの困難を乗り越えようと私の胸で受け止め、学園での騒動はそれ程までの苦労があったのかと弱音を聞き、話の流で直轄地は私に任せろと言った手前、こっちで問題があっても何とかしてやるという意地もあった。幸い、水精霊の加護もあり治水事業は計画通り進ませる事は出来たが、私の3年目は殆ど直轄地で生活をする事になり、直轄地の皆からは役人と思われていたのは良い思い出といえるのだろうか。

経営の方も学園の先生方を始め、宰相息子や大商人の娘など様々人から、参考書類や過去の事件など王国法に則った対応など助言をもらい、つつがなく進める事が出来たと自負している。

進級に関しては先生方の温情もあって、試験でトップを取って無理矢理進級を納得して貰えた。


4年目から直轄地と学園の往復が基本的な生活となった。

意図せず治水事業の中心となったからか、下手に外れる事も出来ず他の人に引き継ごうとしても、業務が膨大な為、治水事業が落ち着くまでは私に任せてしまう、という共通認識で代わりも少数が経営を手伝い、治水事業の方は私に一任するという規模の大きい事業とは思えない不安定さで進む事になった。

この頃から王子の判子を私が持つ、謎の現象が起きたのである。

理由と経緯は簡単だ、直轄地の治水事業や経営の最終決は王子の判子が必要だか、王子が女連れで行方不明になり決議が遅れて進まなくなる、宰相息子が王子を説得をして判子を借り受ける、宰相息子は女遊びの火消しで直轄地に関われないため、直接経営している私に渡すというなんとも杜撰な対応だ、私が変な案を出して私が決議してそのまま通ってしまうが良いのかと宰相息子に聞いたら、やつれた顔で「王子の決議より良い」と瞳に歪な光を宿しながら答えてきた、3年目の苦労は聞かないことにした。

学園との往復生活の為に乗馬も出来るようになった、私のよく乗る馬のムーネは頭が良く、よく甘えに来てくれ、とてもかわいい上に、乗馬しながら書類が読める程静かに動く為、移動時間すら仕事や読書が出来た。

ムーネに乗って移動しても、それなりの時間がかかってしまうため、野営なども慣れたものになった、私1人での移動に不安があったのか、問題が合った際の護衛として、将軍息子と往復生活を送るようにもなった。

水精霊の加護があるから大抵の者は敵では無いと断ったが、将軍息子と一騎打ちで勝てたら護衛なしで良い言われ、戦い、敗北してしまった、水精霊のいない砂漠地方での戦いは、今思っても卑怯だ。

「往復路に水精霊の加護が無くなる場所はないのに」、と言い訳していたら、「死んだ後に誰がその言い訳を言うのか」と正論で返され、護衛をつける事になった。

とはいえ、将軍息子とは馬が合ってか、往復生活は思いのほか楽しく、偶に護衛が変わる時は寂しさを感じたほどだ。

野営のたびにお互い料理を批評し合うようになり、掴み合いの喧嘩に発展する事もあったが、私の趣味に料理が入ったのは、間違いなくあの経験があったからだろう。

ただ、我が家秘伝の薬湯を「不味い雑草を煮ただけ」と評したのは末代まで恨み言として残すと決めている、クセはあるが美味しいのだ。


5年目、軟禁された王子の外遊を私がやることになっていた、いや、分かっていた、生徒会業務はまだしも直轄地の経営などは明らかに王子の仕事だ、手伝う程度なら分かるがガッツリ中心で働いていたからね、王子の仕事を生徒会で回していたのは分かっていたし、ここ数年延ばしに延ばしていた外国相手の仕事は誰も手を出していなかったのも知っていた、誰かがやるだろうと何処か他人事に思っていたら、私が王子の懐刀として処理しに回る事になっていた、私が王子と面会した事は1年目の時に数回あっただけなのに。

「生徒会業務がー、直轄地がー」と、ごねてみたが生徒会業務は後輩が任して下さいと目を輝かして、直轄地は施策の効果が高水準で安定し治水事業は一区切り着いた所だった為、逃げ道が無かった、極めつけは王子のやらかしの国内謝罪行脚と外遊の二択で迫って来られた、謝罪行脚しないとまずいのかと聞いたら、私が謝罪行脚をしたら百回は殺されると目の笑っていない笑顔で答えられた、王子の起こした問題に対してスケープゴートとしては首が軽すぎて助かったのだ。

宰相息子の胃のため秘伝の薬湯を作ろうかと提案したら、幼子を諭すような顔でゆっくりと否定された。

将軍息子には蹴りを入れた。


とはいえ外遊先は学園内で面識のある聖女や外国貴族の関係者を主な相手として選んでいた為、此方の内情は知られているので重要案件は無く、観光と第二王子の学園卒業後廃嫡を示唆するだけの簡単なお仕事だ、むしろ直轄地発展のご褒美としての旅行という側面が強いのでは、と思っていたのに。

何処でも居そうな特徴の無い特別教師による外国語の学び直しから始まり、マナー、外国側から見た歴史、現在外国での軋轢や権力闘争、中央から地方までの有力者や利害関係等々、人心掌握から表情読心、果ては毒物の効果と使用方法や判別方法、暗器の使い方まで、諸外国に失礼が無いようにという建前で様々な知識を短期間で憶えるために寝る間を削って猛勉強させられた。

「私を密偵にでも仕立て上げるのですか?」と聞いたら「密偵と外交官などさしたる違いも無い、外遊は外交偵察だ、細かな情報も拾い上げるように」と事もなげに特別教師に言われた、「地方男爵家領主には必要ない知識が多いのですが?」と訪ねると、「知識はいくら有っても困らない学べる内に学べ」と言葉では言いつつ眼で『お前は王宮で便利な歯車として使われる未来しか無いぞ』と伝えてきた、読心術を早速活用させるとは良い教師ですね、と皮肉ると邪悪な笑みを浮かべてきた、その表情を読心しなかった、世の中には知らない方が良い事など沢山あるのだ。

猛勉強の甲斐もあって外遊はスムーズに進んだ、特別教師の外遊先の事情は悔しいが役にたった、私を放蕩王子の懐刀と侮ってかポロポロと情報を落としてくれるのだ、最初は罠かと疑ったが裏付けを取りに出れば、それなりの精度の情報であることが分かった。

どれだけ王子の悪評が国外に流れているのだろうか外遊の合間、学園に戻った時に大商人の娘に雑談がてら聞いてみたら、ニヤリと笑いながら「人の噂話は無責任に何処までも行くよ、悪評なら輪をかけてね」と言われ、対応している宰相息子の健康を祈っていたら、「祈るだけ?魔法薬とか友人価格で売るよ」と商談に持ち込もうとする大商人の娘に、宰相息子と将軍息子は味覚音痴の薬嫌い、健康に良い物なんて食べない偏食と伝えておいた、この悪評が世界中に広まるように。


外遊先で唯一問題が起きてしまったのは聖女のいる聖教国だろう、聖女の義父が倒れたという事もあり聖教国に戻って来ていた彼女は、聖教国でのマナーや言語に苦労すると思い通訳等を買って出てくれたのだ、義父が倒れ不安であるにも関わらず、学園で僅かに話した事のあるだけの私のために。

私は感動して泣いてしまった、これほど清らかな心根の持ち主に、最近よく会っていたのが人の心を無くした特別教師だったから特に、その清らかさが美しく眩しかった。

泣きながら無理を言って聖女の義父の近くで聖教国との会談を行わせて貰った、会談が終わった後、聖女から義父の容態を聞いた、曰く聖女の癒やしが効かない奇病である、腹部の激しい痛みや奇妙な色の便、八年程前から徐々に弱っていく義父を看るのが辛い、王国の知識を頼りに留学した、人から人に移る病ではないが聖教国で時折流行る病であると、もう義父は長くなさそうだ等、話している内に聖女という立場から誰にも吐露出来なかった不安が押し寄せたのか、泣いてしまった彼女を抱きしめながら思っていたのは、寄生虫じゃないのか?症状や発症例など聞いているとそうとしか思えず、聖女が話せば話すほどそれは寄生虫だと前世の記憶が訴えてくる、指摘したくなるのを堪えて泣きながら話す聖女をなだめていた。

次第に泣き疲れて眠ってしまった聖女を置いて、おそらく胃や腸に取りつき人の食事や細胞を食べる奴なのだろう、虫下しを作るため付近の山に薬草探しに入っていった。

特別教師から教えて貰っていた地理や野営の経験から必要な薬草は大体集まって、残る材料も町で買い、人体に害がでない程度の毒と下剤の効果を持たせた薬湯を作り聖女の元に戻ると、いよいよ義父が良くないとなっており聖女が真っ青な顔で立ち尽くしていた、冷静に考えると弱った人に毒は、体力が保たない可能性が高く渡すべきか迷っていたら、聖女が私の持っている薬湯を見つけ「それは何か」と聴いてきた、答えに困って「義父を治せるかもしれない薬湯」と苦渋に満ちた顔で返すと、一瞬で顔が明るくなり私の顔を見て怪訝な顔をして、「何か悪い事が?」と聴いてくる。

「体力が持たなければ亡くなる可能性が高い危険な薬湯」そう返す、すると1度深呼吸したかと思ったら「飲んで頂きましょう」、今までとは違い決意に満ちた聖女然とした声でそう宣言した。


結論を言えば、義父は助かった、薬湯を呷った後聖女が付き添い、常に癒しの魔法をかけ続けたからだろう、泣き腫らした顔の聖女に寄生虫の概念と虫下しの薬湯の作り方を教え、虫下しの薬湯が毒に近いと知って顔を青ざめさせていた、義父も「奇病にかからなければ2度と飲みたくない、効果も味も」と顔を引きつらせていたが、体力が戻ったら何度か飲んで完全に出し切らないと再発するかもと言うと絶望していた。

それでも聖女とは「また学園で」と笑って別れた。


6年目また往復生活が始まった、直轄地や治水事業、外遊は問題無く進んでいたが、仕事が更に追加された、国内の主要数カ所の治水事業案の作成をする事になっていた。

訳が分からず困惑していると後輩が教えてくれた、直轄地の治水事業があまりにも上手く進み、築造途中でも効果が高い為、今後を見据え主要な場所は、今までの領主主導ではなく、王家主導で治水を行って国内の安定を図るという、そして治水事業の中心に居た私に白羽の矢がたち、事業推進の為に子爵位と大仰な名の役職が下賜された。

すごいです先輩と目を輝かして話す後輩に対して、私はどの様な顔をしていたのだろうか。

ともあれ、横槍が入る前に大本を決めて、無粋な邪魔を極力抑える為、治水事業予定地にすぐに向かい、周辺領主の意見を聞いて、水精霊と現地視察をして、複数の治水予定地域のプランを幾つか作成すると同時に国内横断超巨大運河開削計画を策定した。


うん、そうだよ、途中からなんか楽しくなって実現出来るかどうかはさておき、とりあえず運河開削計画を立ててみたんだ、一般的に暴走とも言えるよ、だって楽しかったんだよ、一緒に視察していた後輩も「この運河の先、聖教国まで渡した方が効率良いですね」とか言って他国の海路整備まで話して、二人して暴走していたし、なんなら水精霊も運河計画話しているときはやたらテンション高かったからねノリノリだったからね、作ってしまった計画を棄てるのはもったいないと思い、メリット・デメリット・経済効果・費用・使用料金に対した回収期間など色々付け加えたら想像以上にしっかりした計画書になっていた。

私も流石に悪ふざけの産物を国家事業として出す訳にはいかないという良心はあったのでこの計画書は机の奥底に封印して、治水事業の方だけ提出した。


その後、宰相息子に卒業までの2ヶ月間程、投獄されるから仕事道具や生活道具をまとめておくようにと、急に私の逮捕予定を告げられた。

何故と問い質すと、王子の判子使用の件で逮捕だった。

王子が廃嫡前の最後の足掻きとして、宰相息子や私が王子の名で事業を進めていた事を告発、直轄地の経営や治水事業などへの関与を否定した、名を連ねて功績として扱われていたが、足を引っ張る為に全て否定したのだ。

私も物事が素早く進む便利な判子として頻繁に使用していた為、半ば公然の秘密となっていたが王子の名を乱用したとして、宰相息子と私が逮捕という訳だ。

「普通、死刑とかではないのか?」とビビりながら聞いたら「根回しも護身もしていたが、あれをされたら名目上の罰は必要だった、自分がただで謝罪行脚や火消しをしていたと思っていたのか?」と宰相息子に言われ「初めて頼りになるところを見た」と答えたら軽く頭を叩かれた。


とりあえず牢に入ったが、とても快適に過ごす事が出来ている、牢は私室より広く備え付けの家具は豪華、お付きのメイドが常に控えていて頼めば何でも揃うようになっていて、監視と制限は付くが外出も出来る。

待遇が良すぎる、とても王子の判子を不正使用した罪とは思えず、面会に来た後輩に「私は何で貴族牢に入っているのか?普通、鉱山労働所と併設されたような牢ではないのか?」と聞いたら「子爵様だからでしょう、それに逮捕も形だけなので、普通の貴族牢より豪華みたいですよ」と事も無げに言われて思い出したが爵位していたのだ、仕事で必要な名目上の肩書きとしか価値を見いだして無かったが私は意外に偉くなっていたのだ。

「牢の中でもしっかりと仕事をお願いしますよ」と言われ書類に目を通し始めると、見覚えはあるが、在るはずのない文字列の書類があった、そう国内横断超巨大運河開削計画である。

この書類と後輩に確認したら、「いくら投獄されるからって重要企画書を出し忘れないで下さい」と軽く怒りながら注意をしてきた、

「実現は難しい、資金と工事期間がいくらかかると思っている、デメリットも見過ごせない」と自分で作った資料に文句を付けていると「資金は直轄地の施策を展開すると収入が増え大半は賄える、足りない部分は大商人が運輸時間短縮の効果を見込んで投資をしてくれる、大商人の娘に話を通したの先輩じゃないですが」と言うが、食堂で大商人の娘と雑談の中で運河の話と必要資金の概算を軽く話しただけで、確認すると投資予算額と優遇案をまとめた書類と「美味しい話をする時は二人っきりでじっくりしっぽり話そうね❤」とメモが着いていた。

「工事期間も元からある河川や池を改修する形で作り開削距離は大幅削減出来るため、開通だけなら数年、大型の輸送船を通すなら十数年開削を続ければ良いと、治水事業の人員を転用すれば更に短くなると試算しましたよね」

この辺りから声が呆れてきていたが後輩の口は止まる事なく続けられていく。

「デメリットも生態系の変化や地滑りの危険性としてはありますが、極力抑える為に調査と水精霊様に伺い立てていたじゃないですか、起きうるデメリットを呑み込んでも周辺地域や王国の将来的なメリットが大きいと試算したのは先輩じゃないですか」

もう私は何も言えなくなって来ていたが後輩の口は止まることはなく

「それに、周辺領主に宰相息子さんが話を通してありますし、王の承認も貰って来てあります、聖教国から海路整備も色好い返事を貰っていますから、というか宰相息子さんにも聖女様にも話を通したのは先輩ですよね、運河を含めた治水事業の総責任者になっているんですから、責任をしっかり取ってください」言葉に圧がかかってきた、段々と怒ってきている、聖女とは雑談で運河の話をした事もあったが、宰相息子と話をしていないなど、ここで更にごねたら本格的に怒らせるだけなので渋々「はい」と答え、悪ふざけの計画を現実の物にする為、動くことになった。


総責任者となってしまっている私が獄中では、本格的に計画を進ませる事は難しいので、詳細図面の作成や必要人員の策定、工期や一般開放の時期など必要な前準備を行っていると、外から音楽隊の演奏や、先生や後輩からの激励の言葉、卒業生代表として将軍息子の答辞など拡声魔法を通じて私の牢まで卒業パーティーの音が聞こえてきた。

学園生活最後の思い出が獄中とは物悲しくあるなと学園生活を振り返ってみても、仕事詰めの生活しか思い出せず、せめて今生は過労で死んでしまう事がないよう、運河が開通し終わったら子爵位を返上して実家で隠居をしようと心に決めた。


後日、隠居の旨を関係者に話したら全員が「でも隠居しても仕事はするのでしょう」と返してきた、全員私をなんだと思っているのだろうか、しかし私も自身が隠居している姿をこれっぽっちも想像できなく、きっと今世も社会の歯車として働いて死んで行くのだろう。

もし、仮に、また来世があるのならば、社会性のない生物に生まれ変わりたいと願って、今日も仕事をこなして生きていく。

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