第22話 戦場コテージ①

「ぼぼ僕達って?」

「この七年C組全員でって意味だよ」

いや、学級委員長の牛久うしくさんに言われても…困る。

もっと驚いたことに、茉奈まなの隣の席の川出かわでさんが武居たけすえさんの横にやって来た。

「い今まで黙っていてごめん。今話さなきゃと思って。ここ…れを聞いたらみ……皆が嫌がるかなって…思ってた。ーああたし…吃音症なの」

「川出さん…」

吃音症だと、話す時にはじめの音が出にくかったり、繰り返したり、引き伸ばしたりするんだって。

私のいとこが吃音症だから、一応知ってる。

「川出さん。気にしなくていいよ」

望未のぞみちゃん…」

「川出さんは川出さんなんだから!」

かおりがかっこいいことを言っている。(つもり)

「ありがとう」

川出さんは半分泣いている。茉奈がハンカチを出してあげた。

このクラスでなら…戦えそうかな。いや…それよりも…。七年C組(三十人)+誉+優太君+数人(三好みよしさんとか)の計三十数人がスイートピーに入れるかどうかの方が心配だね。


昼休みに誉と話し合った結果…。スイートピーで戦うのはやめになった。誉が顔をしかめていた。

「住宅街でわちゃわちゃ騒ぐと近所迷惑になる。それに、三十数人も入るゆとりはスイートピーには無い」

だよね。店内のテーブルとかどかすのも大変だし。

「その代わりなんだけどさ…。高妻こうづまさんの親戚が経営していたコテージはどうかな?三階建てで、スイートピーに二倍ぐらい広いって。今は家具を新調中でお客さんがいないらしいし」

「いいな。よし、そこで決まりだ」

「ところで誉さん。私達は誰と戦うの?」

「へファイトスに賛同してる奴らだ」

誉はどっしりとしている。どんな相手も許さなそうな顔だ。

「コテージはどこにある?食料と電気と水は?」

賢悟けんご君、一気に聞かないでよ。…ん?賢悟君、C組の教室で説明聞いてたんじゃなかったの。あ…あの時、賢悟君はトイレに行ってたんだった。なら仕方無い。

「並木山ふもとにあるって。水も電気もある。食料も四十人が一ヶ月は耐えられそうな分あるんだって」

「多っ」

という訳でとんでもない戦いが始まろうとしていた。


「えっ。コテージの名前もスイートピーなの?」

「今は俺の母さんや白砂しらすなさんが買い取って、ここをスイートピー二号店にしたからな」

ここコテージじゃなくてカフェ[スイートピー]じゃん。

土日。私達七年C組の三十人の生徒と、誉らS組勢四人(興津おきつ先生も入っている)と、三好さんの計三十五人は、スイートピー②にいた。(二号店っていうと長いから、省きました)

「生配信担当。準備はいい?」

「もちろん。いつ始まっても問題無し!」

この時、初めて知ったことがある。大庭おおばさんはSNSとかでよく生配信をしているらしい。フォロワーは十万人…とか。大人気じゃん。

「位置情報はオンにしておいた?」

「うん。じゃあ開始まで…三、二、一、0!」

「ヘイ!レオパードです!今日俺らは特別なことをやっているんだ。え?何かって?戦いだよ。俺らはへファイトスを慕う奴らと戦うんだ。

どうして。か…。許せねえんだよ。違うことを受け入れない奴らを。障がい者とか、健常者とか言ってどこまでも区別する必要はもう無くなった。

俺らに自由があるのなら、障がいのある人達にも自由があっていい。そうじゃないか?誰だって一人の人間で、自由なんだよ!

障がいがあっても無くても、国籍や人種が違くたっていい。

違うからわくわくするのさ!」

大人顔負けの配信だ…。凄い。だけど…。

大きい金色の縁のサングラスに、大きいどこかの紳士が被っているような帽子の組み合わせが気になる。

「もう準備はできた?」

「ああ。大庭君とやら。スゲーじゃねえか。これなら、へファイトス賛成派をおびき出せそうだ」

「誉…。こんなことして大丈夫なの?」

「たぶん。位置情報はオンにしておいたから、奴らには俺らがどこにいるのか分かるはず。来た所をしとめるんだ」

位置情報は気をつけて使った方がいいね。









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