バーチャルリアリティがリアリティ味を増しすぎて現実世界とマジで混ざった件について

こより

第1話 葛藤と現実と

まず6時に一度目の奇声。...スヌーズ。

そして5分後。

スマホからはてんで起きない俺を罵倒するかのような奇声が。

...一度目よりも遥かに大きく聞こえるのは俺だけだろうか。

仕方なく布団から出てやると、そこには...


何もない。


大時計にテレビ、照明だって。全て最新式。

まだ普及すらしていない次世代型スマホも、布団だって、最新式。なのに。


(何にもない、な)


虚無、とでも言えばいいのだろうか。それとも、空虚?

こんな豪華な屋敷も俺にとってみれば真っ白くてだだっr広いだけの空間。


(...誰かいてさえくれれば。)


いかつい檻の向こうを見る。そこにはメガネをかけた男が3人ほど。

こちらを見、レポートと思われしものにカタカタ、と文章を足している。

何時何分何秒に起きた、とか、こちらを見つめてきた、とかだろうか。

(見張り番もだいぶ少なくなってきたな...)

じっと目を凝らす。

...大学生だろうか?

あの見慣れていた教授と見られるオジサンも最近では月に一度来るか来ないか、である。

あのオジサンに限った話ではない。3ヶ月前から日に日に平均年齢が低くなってきている。


...舐められたものだ。

消毒液の匂い。無印も驚くほどに無機質な色合いの家具たち。



そろそろか。



...今思えば、飽き飽きしていたのかもしれない。

部屋の中にただ一つ取り付けられた、この俺じゃ到底通れるはずもない小窓。

気が付けば、





...引きちぎっていた。

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