ほむらの灰 ー魔術師 シン・グレイライン
鳥塚 勇斗
第一章 燻
第0話 出生
目を覚ますと、見知らぬ空間にいた。
記憶にないような小さな部屋。古びた、という古めかしい部屋。
時代劇とか、フィクションでしか見たことのないような部屋だ。壁は土でできているのか表面が少し剥がれている。
一体どこにいるのか、わからぬまま茫然自失としていると声をかけられた。
「ほらみて、シンが目を覚ましましたよ」
「おお、本当だ。ほら、こっちをご覧」
優しい声だ。
まるで母を子供をあやすような、そんな声。
そちらを振り向こうと力を入れるが、体が言うことを聞かない。
足の感覚と、手の感覚、肌が布に擦れる感覚。
何かがおかしい。
「あら、お腹が空いているの?」
女性が慌てたように自分のことを抱き上げた。
ふと、意識がなくなってしまう。
一体自分に何が起こっているのか、わからぬままに眠ってしまっていた。
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