5-2 渚の正体
十五分ほど前。
「
大きな青色の瞳。可愛らしい顔。小さなお団子を作ってハーフアップにした、肩にかかるくらいの長さの薄茶色の髪の毛。
「あ、もしかして、愛しの
こいつ····。
確かに扉を開ける前の表情と、現在の表情はわかりやすく違っていたことだろう。そもそも、なんでこいつが
「今日のこと、弁解しに来たんだ。兄上のことだから、もうわかってるかもだけど」
「必要ない。もちろん驚かなかったといえば嘘になるが、おかげで上手くいったのも事実。そもそも、お前は自分の役割をわかっていなかったろう?」
あんなことを言って場を乱した、
「まあそうなんだけどね。でも俺、ちょっと感動したんだよ? あの子、大人しそうな顔してあんな大胆なことするんだもん。
「そんなことを言いにわざわざ来たのか?」
「まあ、それもあるけど····本題はこっち」
「はい、これ。
お前、意味わかって言ってんのか? いや、その様子だと絶対
「なんて、ね。ホント、
前言撤回····このマセガキ、俺以上にそっちの知識があるっぽい。
「どうきんってなに?」
「そんなことも知らないの? 親しい間からのふたりが一緒に寝ることだよ。気分次第では最後までしちゃうのもあり····って、なんだ君か」
さあぁあと一瞬にして血の気が引く。
俺の視界には入口の扉に隠れて姿が見えなかったが、その声はもしかしなくても。
「今日はごめんね。悪気はなかったんだ。そういう風に言うように
「許すもなにも、本当のことで····
「だよね! じゃあこの件はこれ以上お互いに干渉しないってことで!俺はさっさと退散しまーす。ふたりの邪魔をするつもりはないから、ごゆっくり~」
言い終えると
「あ、なにか落ちたよ? 俺がとってあげるね。一国の皇子が床に落ちた物を拾ってあげるんだから、感謝しなよ?」
「すみません、ありがとうございます」
賑やかしい奴が嵐のように去り、俺と
「
「うん。そっちも聞いたんだな」
あの時、微妙なタイミングで
「中で話そう? 話したいこと、たくさんあるんだ」
うんと頷き、
「
「うん、」
「
「そうだよ、」
何年も騙していたこと。秘密にしていたこと。あの日、ゲームのことも含めて告白しようと思っていたのにできなかった。本当は、自分の口から明かしかった。
振り返った
それどころか、みるみる
「でも····俺が乙女ゲーム好きなの、なんでわかったの? あのサイトで出会ったのは偶然? 俺のために作ってくれた、の?」
「
「
「でも、どうしてそれで乙女ゲーム作ろうって思考になるのか····いや、本当にすごいと思うし尊敬するけど、普通、そんな発想にはならないよ?」
まあ、確かに。あの時の俺は勢いで始めたようなものだったからなぁ。
「ぜんぶ
「告白?」
「そう。俺たちが好きなもの、好きだっていってもいいんだって。隠さなくてもいいんだって、そう伝えるための」
告白の意味、伝わったかな?
「教えて欲しかった。
「
直球で訊いてきた
「····そうだよ。 姉貴がいうにはそういうの腐男子っていうらしい。BL好きな女子が腐女子っていうのは知ってるだろ? その男子版。でも俺が好きなBLは
BL=エロい本というイメージが、BLを読んだことのない一般人には多いはず。けど、BLってあらゆるジャンルがあるんだぜ?
まあ、もちろん自分の性癖を補ってくれるエロを求めて読むひともいるけどさ。
「····俺も、
「無理しなくていいって····言っても、このセカイ自体がBL仕様だからな····
それに、このゲームの中にBL本はない。
「
ゲームを作るにあたって関わってくれたひとたちは、俺が誰のために乙女ゲームを作ろうとしているのかを知った上で、参加してくれたのだ。
「このゲームは、俺が
はじめて会った時から、ずっと。
嫌いなところなんてひとつもない。
それくらい、
頬に触れていた俺の手に、
「俺も、好きだよ」
言って、胸に飛び込むように抱きついてきた
そんな余韻に浸っていた俺の視界に、とんでもないものが飛び込んでくる。
床に落ちた書物が弾んでひっくり返っていて、あるページが捲れていた。
(マズい。あれって、もしかしなくても····)
俺の脳裏に、キラさんが片目を閉じて親指を立てている姿が浮かんだ。
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