素敵な先輩はモテていた。

崔 梨遙(再)

1話完結:1100字

 仲良くしてもらっていた会社の先輩は、胸の大きな女性が好きだった。顔を妥協してでも、胸で女性を選ぶ人だった。基本的に、Dカップ以上じゃないと相手にしないと言っていた。


 過去の歴代の彼女の写真を見せてくれたことがある。確かに、胸の大きい女性ばかりだった。服を着ていても、胸が豊かなことはわかった。しかも、顔も美人ばかり!


 かわいくて胸も大きい、そんな女性の写真ばかりだった。この先輩は、どうしてこんなに恋愛運に恵まれているのだろうか? 今でこそ、Dカップ以上が半分以上の世の中だが、僕等が若い頃は平均がBだったと、何かの本に書いてあった。


 そんな当時、こんな風に顔も綺麗で胸も大きい女性は存在確率が低かったはずだ。なのに、どうして? しかも、双子と付き合ったこともあるという。美人、巨乳、双子、ちなみに、双子の時は、双子両方と付き合っていたらしい。なんとスゴイ経験だろう。僕は、先輩を男として尊敬した。



 そんな先輩が、美人の彼女と別れて、別の女性と電撃結婚した。


「どうして、彼女さんと別れたんですか?」


 僕は訊いた。


「胸が無かったから」


確かに、その別れた彼女さんは、先輩が付き合うにしては微乳だった。


「奥さんと結婚した理由は?」

「胸!」


奥さんはGカップだった。


「もし、別れた彼女さんの胸が大きかったら、どうでした?」

「う~ん、結婚してたやろうな」


 その頃になると、僕は自分とあまりにも価値観が違うので共感は出来なくなっていた。一時は尊敬していたのに。



 先輩の奥さんが妊娠、そして出産した。


「崔、ええぞ。俺の嫁さん」

「何がですか?」

「出産で胸が張って、今、Iカップやねん」

「はあ、そうなんですか」

「Iカップまでいくと、性欲の対象にはならんぞ」

「何の対象になるんですか?」

「もう、宗教とか信仰みたいなもんや。拝んでしまうぞ」


先輩は、とても上機嫌で笑っていた。



 2年後、僕はその会社を辞めた。違う会社で働き始めて数年、ふと先輩のことが気になって、或る日、久しぶりに電話をかけた。


「おう、崔か? 久しぶりやな」

「お久しぶりです」

「今、俺、会社に行ってないねん」

「どういうことですか?」

「精神を病んでしまってなぁ、病気療養中やねん」

「ご家庭の方は、どうしたんですか?」

「嫁さんや子供とは別居してる」

「今、どこで暮らしているんですか?」

「俺、彼女がいるねん。彼女と暮らしてるんやわ」

「そうなんですか」

「俺も、新しい人生を歩むつもりや」

「ところで、今の彼女さんは何カップですか?」

「H!」



 とことん胸が好きな先輩だった。 先輩のこだわりに、僕は脱帽した。







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