百合に目覚める季節
夢七夜 孤島(ムナヤ コトウ)
第1話 瞳と唇が重なるとき
こういう事って、想定して起きるものじゃない。
私はノーマルだと思っていた。
でも違った。
偶発的な事故とは言え、唇と唇を重ねたことで、
私は同性に恋をした。
夏休み私は友達と近くの市民プールへ出掛けた。
「あっ、由梨……まだ準備運動……」
「大丈夫、平気だって。だって私達まだ十代じゃん」
「もぉ、怪我しても知らないよ」
私はサッとシャワーを浴びたあと、友人の忠告など無視して水の中へと飛び込んだ。
「冷たっ!?」
温水プールだと聞いていたのに、全然違う。
一瞬にして冷水が私の身体を包み込む。
これは不味いと思った私はすぐさま、プールサイドへと上がろうとした。
それが行けなかった。
体温の下がった足は、素直にいうことを聞いてはくれなかった。
「痛ぅ……」
脹脛に痛みが走り、筋肉が硬直してくるのを感じる。
これはまずい、部活の後の筋肉痛とは比べ物にならない。
足がピンっと固まったままゆう事聞いてはくれない。
これはきっといわゆるコブラ帰りと言う奴に違いない!?
「あぶぅぶぶぶぶ」
(どうしよう、足がつって動けないよ~~)
水上に浮かんで居た筈の私の視界は、いつのまにかユラユラと揺れる水面下へと沈んでいった。
「ごぶっ……だっ………れ…………か」
(私、プールで溺れて死んじゃうんだ)
…………。
気が付くと、私の目の前に顔が有った。
そして、瞳が合った。
(近っ、なんで?)
一瞬誰かと思ったが、それは私が良く知っている人物だ。
「ぷぎっ」
「良かったぁ~~由梨死んじゃったかとおもったじゃん」
「ねねっち!?」
親友のねねっちこと、芹沢寧音。
彼女は私が息を吹き返すと、私を救ったヒロインを払い除けると、ギュっと私を抱きしめる。
「うっ……ぐっ……しむ、しむ、しむ」
「あっ、ごめん。あははは、力入り過ぎた」
心配してくれるのは嬉しいが、強く抱き締められたため、もうすぐで私はもう一度お迎えされるところだった。
(なんか一瞬おばあちゃんが見えたような気がする)
「大丈夫か、早川くん?」
「成瀬先輩……」
寡黙で、クールで、優秀で、運動神経抜群の私達の学園の生徒会長、成瀬乙葉。普段は取り巻きに巻に巻かれていて、とても近付くことの出来ない存在。
でも、この事件が起こるまでは……凄い人としか思っていなかったけれども(汗)
もし彼女が居なかったら、私はおばあちゃんと一緒に今頃天国で、こたつ布団に座ってお煎餅を食べていたかもしれない。
「ん……どうした? やはりどこか怪我でもしているのか?」
「いえ、だっだだだ、大丈夫です」
「そうか、それは良かった。人工呼吸をした甲斐があったよ」
「じっ、じんっ、じじ、人工呼吸!?」
「はわわわわ」
だっ、だから唇が重なってたのね(汗)
「えっ、由梨」
「どっ、どうした早川っ!?」
私はキュン死して、もう一度おばあちゃんの顔を見た。
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