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「いや、何このシリアス展開みたいな会話!?」


「なんだよぉいいじゃんかよぉ〜せっかくの現実じゃありえない神展開やぞ? もっと喜びを分かち合うとかさぁ〜まさか貴様が俺の家族になるとはな……みたいな乗り合ってもいいじゃんかよぉ〜!」


「いやならんし、まず近い内に家族になるのはお互いにわかってたろ」


「それでもよぉ、滅多にない展開にはシリアスがつきもんだろう?」


「まぁ漫画の中ならお決まりだな」


あいにくこれは現実であって漫画とか恋愛小説の世界線ではないため、そんなお決まりの展開があるわけなくて、それ以前に真が義理の妹になることは割と前から決まっていたと言ってもいい。


というのも、真と知り合ったのはこの義妹案件だったりもする。


もともとクラスメイトという関係で、特に接点もなかった俺と真だが、ある日父さんが再婚するかも言い出したのだ。


再婚することに関しては特に否定する気もなく、義理の母親ができることにも抵抗感は抱くことはなかったけど、それ以前にその義理の母親になる人の娘というのが真だったことに驚きなのだ。


「でも、まさか本当に義妹になるなんてな」


「私も驚きだよ。翔が義兄になるなんて想像もしてなかったし、一生独り身かな~って思ってたから」


「独り身言うな一人っ子って言え」


「対して変わらなくない? 独り身と一人っ子って翔も一人っ子だけど、独り身みたいなもんでしょ」


「独り身っていうのは前の父さんみたいな事言うんだよ」


「それ雅人さんが聞いたら泣き崩れるよ? せっかく私の可愛くて綺麗なお母さんと結婚できるだから」


「それはそれ、これはこれ」


「うわっ、おふくろみたいなこと言ってるしこの幼馴染……」


おふくろって俺男なんだけど……


「てか早くご飯にしようよぉ……腹減ったぁ」


「人の部屋に勝手に上がり込んで飯を要求すんなや」


「ここ一応は私の部屋でもありますけど? もしかして妹に反応するとk……あでっ! なにすんじゃわれ!」


「てめぇの脳内はお花畑か! この馬鹿が!」


「あぁん!? 可愛い幼馴染に手を出さないヘタレには言われたくないね!」


「出せる訳ねぇだろ! 幼馴染がいくら可愛いからってすぐに手を出すと思うなよ!?」


「ヘタレめ! 私なら5秒で手を出してる!」


「クズはてめえじゃねえか!」


「うるしぇぇ!! 貴様が何を言おうと手を出さない時点でヘタレなんだよ! こんなかわいい幼馴染カッコ義妹カッコ閉じるがいるってぇのに、押し倒して『お前は俺のもんだ……』って言わねえ奴が文句言ってんじゃねえよ!?」


「んな幼馴染カッコ義兄カッコ閉じるがいてたまるか!? そんなクズ野郎は漫画と小説だけで十分じゃ!」


「てめえはその一歩を踏んでんだよぉ!」


「「ぜぇぜぇ……」」


「俺らこんな時間に何してんだ……」


「せやね、何してんだろ」


「飯食うか」


「さんせーい」


時刻は午後6時半。

夕飯を食べるにはちょうどいい時間帯だ。


大体の家ではこの時間帯には家族で食卓を囲んでいる事だろう。

が、今日はそうもいかないらしく……


――ピンポーン


はて、何かネットで注文でもしただろうか。


「はーいどちらさ、ま……神咲さん……!?」


「ベランダの窓全開にして大騒ぎとはいい度胸ね」


「えっとぉ……」


最近は見ていなかった絶対零度の氷零の女王襲来。


「他に誰か家にいるの?」


「え、あ、まぁはい……」


「ふぅん……」


(怖いんですけどその視線……)


「あれ、神咲さん?」


「え、篠崎さん!?」


あなたもそれなりにでかい声出しますやん……


「な、何であなたがここに……」


「えっと、話せば長くなると言いますか……」


ちらっと俺の方を見てくる真に苦笑しながら神咲さんの方を見るとこれまた冷め切った眼で睨まれ肩を竦めるのであった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「なるほど、あなたたちの親が再婚して義理の兄妹になったと」


「うん。本当は2年くらい前から結婚するような感じだったんだけど、手続きと、翔のお父さんが結婚指輪を買いたいからって仕事を頑張っててなかなかね」


「なるほどね、それでやっと帰るようになったから今になって結婚が成立したと」


「そゆこと~だから今日は記念にお母さんたちは家でイチャイチャしてもらって私は翔の家でいちゃつこうかなと」


「いちゃ……っ! 白雲くん……?」


「いや、手は出さねぇよ!?」


30分くらい前に言ったが妹に手を出すバカな兄にはなりたくない。つまり真には手を出さないのが筋である。


「まぁいいわ。それでも、騒ぐなら窓を閉めなさい。このマンション壁は厚いけど窓を全開にしていたら声はかなり響くわよ」


「あはは~私が暑いから開けたままにして忘れてました~」


「笑い事じゃねえよ」


「すみません……」


「じゃあ私は戻るわ。あ、それと篠崎さん」


「はい、なんでしょう!」


「私が白雲くんの隣に住んでいることは内密に頼むわね」


「あ、それはもちろん。神咲さんと翔が同じマンションの同じ階で、さらにはお隣さん同士なんて知られたら翔はともかく神咲さんの周りが大変なことになっちゃうから」


「俺も困るんだが?」


「そこまで予測してくれているのなら心配はいらないわね。じゃあお邪魔しました」


神咲さんとお隣さんといのを知っているのはこれで3人目、父さんと従姉さん、そして真だ。


神咲さんが俺の隣人というのは何があってもバレてはいけないことだ。

神咲さんは嫌がるようだけど、神咲さんの学園内での人気は留まることを知らないほどに伸び続けている。

人気が出れば出るほど、神咲さんの近くにいる男子には視線が集まる。何がとは言わないが、最終的には変な圧力により神咲さんに近付けなくなるだろう。


そんな神咲さんに今最も近付けているのは間違いなく俺である。

夏休みのデート、隣人、演劇部の舞台での演技力による注目度、俺には神咲さんと並び立っていると思われてもおかしくない経歴が出来てしまっている。


花の男子高校生なんてそれだけでも美人をわがものにしようと力を行使してくるはずだ。俺はそれを防ぐための行動を見出さなければ何をされてもおかしくない。


「かけr……、かける!」


「え、あ、なに?」


「何じゃないよ。神咲さんもう帰っちゃったよ」


「あ、そうなんだ」


「うん。大丈夫? 固まってたけど」


「大丈夫だよ。ちょっと考え事してた」


「そか、早く飯作れやヘタレ兄貴」


「作んのやめようかこのブラコン妹め」


「ああんうそですぅ……! 作ってください~!」


まだ真には言わなくてもいいだろう。

真には何も気にしないで生活して欲しいからさ……


神咲さんはどう思っているのだろう……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】

お疲れ様です。作者です。


というわけで20話お読みいただきありがとうございます。

真と翔が義兄妹になって神咲さんにお話しした回でしたが、たびたび従姉って呼ばれる佐倉薫先生ですが、佐倉先生の親っていうのが翔のお父さんの姉の娘なんです。

本編ではそのうち登場させますが、先にネタバレしておきます。

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