第277話 犬耳ピコピコ、尻尾パタパタ、キーラの内緒話!?

~ 地下三階層 広間~


 カール・モリトールと貴族仲間に食糧を奪われ、ほとんどミイラになりかけていた四人の女冒険者たち。


 キモヲタの【足ツボ治癒】によって、昔の古傷まで回復し、なんならお肌のハリとツヤまでピッチピチになっていることに大感激していました。


 もちろん彼女たちも【足ツボ治癒】の際には、人に見せられないようなアヘ顔ダブルピースを決めてしまっていました。


 声こそ周囲に漏れてしまいましたが、キモヲタたちが事前に用意していた天幕セットのおかげで、それほど気にしてはいませんでした。


 なにしろ、その直前まで生死の際にいたのです。嬌声を皆に聞かれたくらいのことは、問題ないと思える範囲のことでした。


「キモヲタさんだっけ? あなた凄い治癒師ヒーラーなのね! どこの所属なの?」

「キモヲタ……あなた、もしかして聖女クラスの力があるんじゃないの?」

「肌年齢まで若返らせるなんて、そんな治癒師ヒーラーみたことないよ」

「どうだい! アタシたちのパーティーにこないか! 優秀な治癒師ヒーラーが欲しいって、うちのリーダーも……」


 キモヲタに下乳を披露しかけた女冒険者が、そこで言葉を途切れさせると、他の三人が顔を曇らせ俯きました。


「そういやアイツは……死んじまったんだな……」


 四人の女冒険者の視線が、床に寝かせられている大きな袋に向けられました。彼女たちの目にはうっすらと涙が浮かんでいます。


「我輩の力が及ばず。本当に申し訳ないでござる」

 

 キモヲタが頭を下げると、女性冒険者たちが一斉に声をあげました。


「キモヲタさんのせいじゃねーよ! アンタはよくやってくれた! アタシたちの命を救ってくれたんだ」

「そうだよ。リーダーが亡くなったのは、もう何日も前のことなの」

「あのクソ貴族ども! リーダーや他の男たちに救援を呼びに行かせたり、他の出口を捜させたりしたんだ。自分たちはずっと泉の間に閉じこもってさ!」

「無理やり行かせたんだよ! アタシたちを人質みたいに使って! 家族にまで手を出すとリーダーは脅されてた。絶対に許さねぇ!」


 憤る女性冒険者たちから、閉じ込められていた間にあったことを聞かされていたキモヲタのところへ、若い騎士がやってきました。


「キモヲタ名誉男爵! クラウディア様がお呼びだ! 早く来い!」


 若い騎士は、実質的には貴族でもなんでもない名誉男爵に、貴族として大上段からの物言いをすることは普通の対応でした。


 しかし、女冒険者たちから怒気をはらんだ目線を向けられると、思わず腰が引けてヘタレてしまいました。


「その……至急、カール様の治療に当たられるようにとのことです……」


 若い騎士の伝言を聞いて、怒髪天を衝いて怒り始める女冒険者たち。


「キモヲタさん、あんな奴ほっとけばいいよ!」

「治療なんてする必要ないです!」

「私が止めを刺したいくらいよ!」

「マジやってやろうかね!?」


 彼女たちの気持ちは十分にわかっていたキモヲタでしたが、ユリアスに目を向けるとその目がウルウルと涙で揺らめいていました。


 優秀な治癒師ヒーラーとしてキモヲタを捜索隊に誘ったユリアスの立場を考えれば、さすがに治療の要請を無視するというわけにはいきません。


「さてさて、どうしたものですかな……」


 考え込むキモヲタの袖をクィックイッとキーラが引っ張ります。


「ん? なんでござるかキーラたん?」


「あのねキモヲタ。治癒してあげればいいんじゃないかな」

「「ええっ!?」」


 キーラの意外な言葉に、キモヲタだけではなくエルミアナまでもが驚きました。


 モリトール隊に拷問されたことがあるキーラから、そんな言葉で出てくることが意外だったからです。


「それでね……ごにょごにょ」

 

 キーラはキモヲタの耳に何やらこそこそと話しかけました。その犬耳はピョコピョコと動き、その尻尾は軽くパタパタと振られています。


 つまりキーラは楽しそうなのでした。


「なるほど……そういうことでござれば……」


 そしてキモヲタは若い騎士に向き直ると、


「分かったでござる! カール殿の治療に向うでござるよ!」


 と宣言するのでした。



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