第159話 ニチャリと笑うシスターの顔
シスター・エヴァとキモヲタたちが、セレブ層たちを相手にしてガッポガッポ儲け始めてから二週間。
復興局として使われている元教会の隣には、東京ドーム一個分はあろうかという広大な更地が誕生し、そこに続々と建設資材が運び込まれていました。教会自体にも足場がかけられ、各所の修復作業が行われています。
これらの作業は昼夜を問わず行われており、夜中であっても、どこかしらかに灯りがともっていて、誰かしらかが何かの仕事に従事していました。
また「真実の口」の奇跡を求めて多くの人々がやってくるようになった教会前の広場で、連日のように炊き出しが行われるようになりました。ここでは深夜の時間帯に働いている人たちにも食事を提供するために、いつでも食事を取ることができるようになっていました。
さらに「真実の口」の奇跡を授かろうと行列待機中のセレブたちが、自分たちの見栄を張るために南橋通りの商店で散財するようになり、にわかに南橋通りの景気が活気づくようになりました。
貴族の中には空き店舗を買い上げてレストランを始めたり、あげくは空き地に豪華な天幕を張って貴族向けの高級服飾店まで開くような者まで出始めています。
こうしたセレブ達に対して「何かするなら北西区住民を雇用するように」というシスター・エヴァの通達があったおかげで、仕事にあぶれていた人たちが新しい職を得るということも増えてきたのでした。
もともと南橋の商売で儲ける気がないセレブたちは、
これによって特に荒廃が酷い東橋側の住民たちも、南橋で働くものが出始めるようになり、目に見えて東橋の状況も良くなってきていたのでした。
そうした北西区の状況についての報告を受けたシスター・エヴァ。
その日の夜、キモヲタとキーラを誘って地下の最奥部にある一室にやってきました。夜も遅かったこともあり、ベッドで夢の国に旅行中のソフィアはそのままにされてたのでした。
シスターに案内よって案内された部屋は秘儀の間と呼ばれる一種の隠し部屋で、教会関係者でもその場所を知っているものは限られていました。
それほど広くはない部屋の四隅には魔法灯がうっすらと輝いているだけ。部屋の奥には女神ラーナリアの像と祭壇があり、その手前に木製の宝箱が置かれています。
「さぁ、キモヲタ様。こちらが我々の勝ち得た成果です」
ギィィィィ。
シスターは宝箱を開くとそのなかを覗き込みながら、手にしていたランタンをそのなかへと差し入れました。
シスターにつられて宝箱を覗き込むキモヲタとキーラ。
「「!?」」
宝箱の中身は、箱のギリギリまで一杯になった金貨の山。ランタンの光に照らされて輝く金貨の妖しく幻想的な美しさに二人は思わず息を呑むのでした。
「こちらがキモヲタ様の報酬、金貨2万枚になります」
「えぇっ!? ボクたちたった二週間で金貨2万222枚も稼いじゃったの!?」
エレナからお金の重要さを気づかされて以降、計算についてエレナやエルミアナから教わり、さらに復興局で仲良くなった経理のジムさんや南橋で両替商をしているイクスさんからもお金の計算方法について教わっていたキーラ。パッと金貨の総額を暗算してしまいます。
「ふふふ♪ その通りですキーラさん」
ニチャリと笑うシスターの顔を見て、ちょっと怖くなったキーラ。
「ボ、ボクたち、こんなに貰っていいの!? 大丈夫? ボクたちシスターに消されたりしない?」
本気で心配しているのか、その声には若干の怯えが走っていました。その怯えがキモヲタにも伝わったのか、キモヲタも震え声になりながら、
「だだだだ、大丈夫でござろう。なにせシスターは女神の忠実なしもべでもあるわけで、そんな非道なことはせんでござろう……ね?」
「……」※シスター・エヴァ
「ちょっ、どうしてそこで黙るのでござるか!?」
「ふふふ♪ ご安心ください。資材や物資に関しては、教会の方で使わせていただくことになっていますが、これがかなりの量になっているのです。これを金額に換算すれば、私たち側の取り分もそう悪くはないのです」
「そ、そうなんだ……よ、よかった」
「ホッとしたでござるよ」
安堵のため息を吐く二人でした。
が、シスターの瞳に揺らめくランタンの光と金貨の輝きが、とてつもなく邪悪なものに見えて、再び二人は震えあがるのでした。
とくにキモヲタは元世界における映画のなかで、悪者たちが報酬を独り占めしようとして仲間を裏切る展開を見慣れていたため、本気で震えあがっていたのでした。
(今後は、いつでも【お尻痒くな~る】を発動できるように、24時間警戒を怠らないようにせねば……)
金貨二万枚という、個人で持つにはあまりにも巨額のお金を得てしまったキモヲタは、この異世界に来て初めて胃がキリキリするのを感じたのでした。
(この胃の痛み……。常々お金が欲しいとは思っていたではござるが、ここまでの金額となると、なんだか寿命が縮む気さえしてくるでござる)
キリキリ……。
胃を押さえるキモヲタなのでした。
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