第100話 冒険に役立つアダルトグッズ

 久々の宿での宿泊。キーラの髪をブラシで丁寧にとかした後、ようやくキモヲタは部屋で一人になることができました。


 一人だけの、安心して過ごすことができる時間を確保することができたキモヲタは、早速、ネットショップ「ナイトタイムラバー」の画面を開いて、いろいろな商品を見て回るのでした。


「ふーむ。何か旅に役立つようなアイテムはないでござろうか。もしくはこの世界で高く売ることができるような……」


 すでに湯浴みのときにを使用済みのキモヲタ。いつもなら、ランジェリーやコスプレ衣装のサンプル画像を見て、つい時間を潰してしまうことが多いのですが、賢者モードの今は、普通にお役立ちアイテムを探すことに専念できていました。


「今日の誤発注は、またカレーでござるか。これは街を出発するときでいいでござるな。とりあえ目潰し用に『女子学生の匂いがするパウダー』とコンドーさんをいくつかと、あと巾着袋と……えーっと、そろそろ生理用品が……」


 自分のネットショッピングスキルがアダルトショップだったときには、心底失望したキモヲタでした。しかし、いまではそれなりに評価できるようになってきました。


『店長の誤発注メニュー』は、店側の事情次第で内容が変わってしまうのが難点ではあるものの、それでも元世界の食べ物が入手できるというのは、とてもありがたいことです。


 アダルトグッズは使いどころが難しいものが多いものの、コンドー○などはゴムとしてはなかなかに優秀で、様々な場面で活用できますし、SMグッズの縄やろうそくなども、普通に旅で役立つアイテムになったりするのでした。


「修理用グッズや衛生用品は地味に助かるでござるよな……って、こ、これは!?」


 キモヲタが驚いて目を止めたのは「その他」カテゴリにあるアイテムでした。


「業務用エアマット! これは使えそうでござる!」


 それは銀色に輝くエアマットでした。


「業務用というのは、もちろん泡でいっぱいになるお仕事用ということでござるよな。むむっ。防水シーツ!? ふむふむ。色々な液でびしょびしょになってもベッドが濡れないようにするための……なるほどなるほど」


 キモヲタはエアマットと防水シートをカートに入れました。


「このエアマットがあれば野営のときもゆっくりと眠ることができそうでござるな。防水シーツは【足ツボ治癒】のときに使えそうでござる」


 商品を注文し終えると、キモヲタは「秘密のカバン(開けると危険)」と書かれたカバンからあるものを取り出しました。


 それはピンクの大きなハリボテ。その名も「電動ヘラクレス」。女性が夜にたしなむための凶悪なアイテムでした。


「さて、今日こそは何か思いつきますかな……ほれカチッとな」


 ヴォオオオン! ヴォオオオン! ヴォオオオン! ヴォオオオン! 


 キモヲタさえ引くほどの大きなヘラクレスがグリングリンと先端を振り回しながら回転します。


「こ、これが世の女性が求める標準値だとしたら、もう我輩の聖剣つまようじが抜き放たれることはなさそうでござるな。ま、まぁ、それはそれとして、これをどう活用したものか……」


 そう言ってキモヲタはヘラクレスを剣のように構えると、そのまま突きを放ってみたり、振り回してみたりし始めました。


 コン○ームでスリングショットを作ってみたり、コンドー○と『女子学生の匂いがするパウダー』を組み合わせて目つぶし玉を作ったりといった具合に、キモヲタはヘラクレスでも何か活用方法があるのではないかと、考えていたのでした。


「いったい何をしてるの?」


 ヘラクレスを振り回して、色々と思案しているキモヲタの背後から突然声がかかりました。


「ぬぉわっ!? って、エレナ殿でござったか。部屋に入る時はノックをして欲しいでござる。独身男の部屋では特に強くお願いしたい」


 キモヲタはあわててヘラクレスの電源を切って、そのまま後ろ手に隠しました。


「何度もノックしたわよ。でも、返事がなかったから開けてみたら、こんなことになったわけ」


 エレナはキモヲタが隠したものを覗き込むように顔を傾げながら、来訪の目的を告げました。


「そうそう。キーラたちが穿いてる『パンティ』っていうの? あの素敵なシャンティを私にも譲ってもらえないかって」


「あっ、あーっ、そういうことでござったか。ちょっと待つでござる。シャンティなら全サイズ・全柄を仕入れ済みでござるからな」


 キモヲタは後ろ手のままヘラクレスを枕の下に隠し、それからパンティを詰め込んだカバンを引っ張りだしました。


「ほら、この黒の穴あきパンティなんかどうでござるか……って、えぇえ!?」


 黒い布を広げて振り返ったキモヲタ、その目に飛び込んできたのは、エレナがヘラクレスをてにしている姿でした。


「これって……女が使うものよね? あっ、男でもそういう人はいるか。キモヲタもそうなのね?」


「違うでござる!」


「うふ。隠さなくてもいいのよ。なんだったらアタシが手伝ってあげるわよ」


「絶対にやめてくだされ! 我輩は物理的にも人間的にもケツの穴の小さい男なのでござる! そんなの持って近づいてこられた日には、エターナルにお尻が痒くなる呪いを掛けてしまうでござるよ!」


「ふふふ。安心して、痛くなんてしないから。ちゃんと気持ちよくしてあげる」

  

 そう言ってエレナはヘラクレスの先端に口づけすると、キモヲタの方に向って一歩進みました。


「最終警告でござる! それを持ったまま我輩に近づいたら、とんでもないことになるでござるからな!」


「ふふふ。かわいい……」


 キモヲタの制止を聞かず、妖艶な笑みを浮かべてエレナは一歩踏み込みました。


「ハァアアツ!」


 結果、それから約2時間のあいだ、エレナはキモヲタの部屋でベッドの角にお尻をすりつけることとなったのでした。


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