第80話 心と心の純粋な結びつきこそ至高でござる!

 キモヲタの【足ツボ治癒】によって、若返った女主人サリサ。


 翌朝、食堂を訪れたキモヲタたちのテーブルには、もうこれでもかと言うくらい豪勢なハーピー卵料理が並べられていました。


「さぁ、たんと食べとくれ! キモヲタとお連れの方たち! これは私からのお礼だよ!」


 サリサは料理を並べ終わると、キモヲタのとなりに腰かけます。


「いやぁ、キモヲタの治癒のおかげで、見た目だけじゃなく、体力まで若返ったみたいなんだよ。身体が軽いし、膝も腰も痛くならないんだ! 本当にありがとうよ」


「う、うむ。そ、それは良かったでござるな」


 見た目が若返った女主人に、キモヲタは昨日までのそっけない態度を取ることができなくなっていました。それどころか、美しい女性に弱いキモヲタの弱気が出てきて、思わずキョドってしまったのでした。


 そんなキモヲタの内心を察した女将は、キモヲタの腕を取ると、ハリのある大きな胸を押し付けます。


「ねぇ……なんだったら、もう一晩泊まっていきな。今日は、私の深夜の特別サービスを断ったりはしないだろ?」

 

 そしてキモヲタの耳元に口元を近づけて囁くのでした。


「アンタには一杯御礼がしたいんだ。あんなことやこんなこと全部してあげるよ」


 ツツーッ。


 女将のしなやかな白い指が、キモヲタの太ももの付け根を這っていきます。


「おや……もう固くなってるじゃな……」


「ふぉおおおおお! このハーピーの卵が上手いでござるなぁああ!」


 キモヲタの声が、食堂に響き渡りました。


「ふふふ。なんだったら、この後、早朝の特別サービスしてあげてもいいからね」


 そう言って女将は、料理場へと戻っていくのでした。


「ジィィィィ」※キーラ

「ジィィィィ」※エルミアナ

「キモヲタ様……ウルウル」※ユリアス

「マジ殺す」※セリア


 その後、キモヲタは皆から向けられる冷たい視線に耐えながら、食事をするのでした。


「さぁ、出発するわよ! 急ぐ旅なんでしょ、ユリアス!」


 食事を終えた後、エルミアナが立ち上がって、ユリアスに声を掛けます。


「た、確かにそうですが……」


 エルミアナの出発宣言に狼狽えるユリアスに向って、セリアが声を掛けました。


「出発しましょう! 今すぐに! だって急ぐから!」


「そうだね! ボクも今すぐ出発した方がいいと思う!」


 キーラもエルミアナの提案に賛同しました。


「えっ!? まだ数日はゆっくりしていっても良いのではござらんか? さすがに昨日の今日では皆も疲れが取れてはおらんでござろう?」


「疲れたら、キモヲタが【足ツボ治癒】すればいいじゃん!」


「どうしてそんなに怒ってござるか、キーラたん!? アノ日はまだしばらくは先のことでござろう!?」


「おまえサイテーだな!」※セリア


「どうしてでござる!? セリア殿も綺麗なシーツのベッドで眠れることを、昨日はあんなに喜んでいたではござらんか? エルミアナ殿もユリアス殿も、キーラタンもそうでござろう」


 キーラがムムッと唸って、しばらく考えた後に言いました。


「ならボク、今日はキモヲタの部屋で一緒に寝るけど、それでいい?」

「それは駄目でござる」


 いつもなら二つ返事で受け入れるはずのキモヲタが、今回は一瞬の迷いもなく拒否するのでした。もちろん、キーラに一緒の部屋に居られては、女将の深夜の特別サービスフルコースを受けることができなくなるからです。


 エルミアナが柳眉を寄せて言いました。


「なるほど、これではやはり今日中に出発するのが良いということですね。下手に長居してしまうと、明日辺り、キモヲタが旅を止めて女将と一緒に暮らすと言い出しかねません」


 その言葉を聞いて、ユリアスがキモヲタに向って言いました。その美少女顔には、涙が浮かんでいます。


「キモヲタ様! どうしても情欲を吐き出したいというのでしたら、私では! 私ではだめなのですか!」


 そう言って、そっとキモヲタの腕に手を添えるユリアス。その手は震えていました。そんな上司の健気な姿を見て、いつものようにセリアがすかさずフォローを入れます。


「聞いてキモヲタ、姫隊長は受け専よ」


 今日に限ってはエルミアナまでフォローを入れました。


「噂で聞いたところでは、オークの雄など穴さえあれば何でもいいと聞きます。ですよねキモヲタ殿! ならばユリアス殿の愛を受け入れるべきです!」


「黙れぇええい! 我輩はオークではござらん!」

 

 キモヲタの拒絶を聞いて、ユリアスの目からは大粒の涙が流れ落ちました。


 キモヲタは、そんなユリアスの手をそっと握って言います。


「ユリアス殿、我輩はその美しい顔が超好みです。そのゴスロリメイド衣装姿は、いつもオカズにさせていただいているでござるよ」


「キモヲタ様……」


 ユリアスがキモヲタを静かに見上げました。そんなユリアスの表情にエロを見出してゾクゾクしながら、キモヲタは続けます。


「今世において互いの身体が同じ性に生まれてしまったのは、悲しいディスティニーでした。だが聞いてくだされ、我輩が毎晩のように使っているピンクのふにふに。あのひとつには『ユリアスたん』と名前を付けて使っているのでござるよ」


 エルミアナ、セリアの顔がドン引きしていました。しかし、ユリアスの顔には何か希望を見出したかのように、明るさが戻ってきていました。


「我輩はピンクのふにふにで、いつもユリアス殿と結ばれているのです。この心と心の純粋な結びつきを我輩は大事にしていきたいのでござる」


「純粋な心と心の結びつき……そうだったのですね、キモヲタ様……」


 キモヲタの言葉に感動したユリアスが、涙を流しながらキモヲタの手を握り返しました。


 適当なことを言ってなんとかユリアスを煙に巻いたキモヲタ。


 涙を流して喜ぶユリアスを見て、そんなに喜んでくれるのなら、女主人にプレゼントしたハリボテをユリアスにも贈ろうかと考えているのでした。


 そして結局のところキモヲタの意見は無視され、キモヲタたちはその日のうちに宿を出発することになったのでした。

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