第51話 こんな品揃えでどうしろと(怒)……こっそりポチッとな

 異世界転生や転移と言えば、もはや定番の「ネットスーパー」。


 ショゴタンを倒したことにより、そのスキルが解放されたことにキモヲタがよろこんだの束の間のことでした。


 何故なら、キモヲタが使えるようになったのは「ネットスーパー」ではなく「ネットショップ」。しかも、アダルトグッズを専門に取り扱っている「ナイトタイムラバー」というショップしか利用できないことが判明したからです。


「アホでござるかぁあああ! 異世界でアダルトグッズとかどうしろと!」


 天井を剥きながら絶叫するキモヲタ。30秒ほど考え込んだ後、おもむろに立ち上がって部屋の扉と鍵を閉め、それからネットショップの画面を開きました。


「ま、まぁ……どういうものがあるか。い、一応は確認しておく必要はあるでござるな。もしかしたら何か役に立つものがあるやもござらんし?」


 そうして「ナイトタイムラバー」の商品の閲覧に集中するキモヲタでした。


「何か食べるものは……ないでござるよなぁ」

 

 エロさに定評のあるキモヲタですが、最初に探したのは食料品でした。てっきりネットスーパーが使えるものと思っていたキモヲタの胃袋は、日本の食べ物を激しく欲していたのです。


「うむぅ……さすがになさそうでござろうな……」


 商品一覧には、何だか固い凸型のものや、何だか柔らかそうな凹型のものがズラリと並んでおり、とても食べ物があるようには見えません。


「サプリ……ここならもしや……」


 サプリ欄に並んでいるのは「ギンギンになるドリンク!」や「彼女が発情するサプリ!」とか、そういったものばかり。辛うじて「亜鉛配合!あなたの股間がマグマグミ」というグミがあったのですが、絶対にマズイことが確信できる見た目と成分なのでした。


「はぁ……菓子パンでもいい。なんなら今まで見向きもしなかった、たこやき入り総菜パンでもいい。何か、日本の食べ物が食べたいでござる……」


 すっかり心が折れたキモヲタが、諦めて画面を閉じようとしたとき、カテゴリ欄に「その他」というのがあることに気が付きました。


「まぁ……どうせ残念な結果になるとは思うでござるが、まぁ……最後にこれを見て閉じるでござるか」


 ピコッ!


「んっ! これは……」


 画面にはひと枠だけ商品写真が表示されていました。それを見たキモヲタのテンションは一気に高まります。


「カレーではござらんか!?」


 その商品には次のような説明が表示されていました。


「店長が間違って仕入れたマカ成分配合カレー! 助けると思って買ってください! お願い!」


 キモヲタは親指を伸ばした右手を高く掲げて、それから視界にうつる画面に振り下ろしました。


「もちろん我輩が助けてしんぜよう! 全部買いでござるぅぅ!」


 もちろん手でボタンを押せるわけではないのですが、こうしてキモヲタはカレーを入手することができたのでした。


『マカ成分配合カレー「黒光り(ゴロゴロビーフ入り)10パック」 数量:60』


 キモヲタは全てを買い上げたのでした。


「あとは……ポチッ」


 注文してから一時間後。


 ドサッ!


 キモヲタのベッドの上に、大きなダンボール箱が出現しました。


 ダンボールの箱には何も文字が書かれていないのを見たキモヲタは「この業者は信頼できるな」と頷きつつ、箱の開封に取り掛かりました。


 キモヲタが箱を開いたとき、ドアを叩く音が鳴りました。


「ちょっとキモヲタ、大丈夫!? 何かあったの? ここ開けてよ!」


 村の周囲の警戒に行っていたキーラが帰ってきたようでした。


 鍵を開けて部屋に入ってきたキーラは、キモヲタのベッドの上にある大きな箱を見て、驚きます。


「どうしたのそれ! というか何それ!?」


 キーラはベッドに飛び乗ると、キモヲタの隣に座って箱の中身を覗き込みました。


「なにこれ! 真っ黒い……袋? 一杯あるね! これって紙でもないし、布でもないし、変な袋! ねぇ、これ何? ねぇ、何なのキモヲタ!」


「デュフフ。これはカレーと言ってですな、我輩の故郷にある物凄く美味しい食べ物でござるよ」


「本当! ねぇ食べさせて! ねぇ、ボクにも食べさせてぇぇ❤」


 美味しい食べ物と聞いて、キーラの目にハートマークが浮かび上がりました。食べたいという一心が、無意識のうちに小悪魔な甘え声になって、キモヲタにおねだりするキーラ。


「ふぉおおお! キーラたんの甘え声いただきましたでござるよぉ! だが少々待ってくだされ、このカレーというものは我輩にとっては飲み物なのでござるが、パンピーにはご飯かナンが必要になるのでござる。もちろん、それがなくとも美味しいものではあるのですが、うーん、どうしたものか。この世界にお米はないようでござるし……」


 キモヲタがカレーの食べ方を思案している間も、キーラは箱の中を漁っていました。


「ねぇねぇ、キモヲタこれは何? 箱に女の絵が描いてあるね! ちょっと開けてみてもいい?」


「ちょおぉおおいっ! それに触れてはならんでござる!」


「あっ、ごめん……なさい」


 シュンと耳が垂れるキーラを見て、キモヲタは優しい声で言いました。


「この中には、18歳未満の者が見てはいけない、触れると色々と危険な禁忌魔道具が混ざってござる。キーラ殿、大丈夫でござったか? 何事もなかったでござるか?」

 

 そう言って、大袈裟に心配する素振りを見せたキモヲタに、キーラはコクコクと頷き返します。


「う、うん……大丈夫だよ。ごめんねキモヲタ!」

 

「ふふふ。ちゃんとごめんなさいできるキーラ殿は立派なレディでござるな! そんなキーラたんのプレゼントもちゃんと買ってあるでござるよ」


「えっ!? 本当!」


 キーラの耳がピンッと立ち、プレゼントに向ける期待で尻尾がフリフリと揺れ出しました。


「これでござる!」


 そしてキモヲタは、キーラの目の前で「縞々パンティ」を広げ、ニマァっとした笑顔になるのでした。


 ちなみに縞々パンティは、全5色を揃えて購入しておりました。


 もちろん純白と黒と紫とピンクと、さらに穴の空いたパンティも……とにかく一通り買っていました。

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