第45話 スンスンッ! なんだかキモヲタから発情の臭いが……
セリアの魔法弓から放たれた巨大な光の矢は、岩トロルの胸を貫いて、そのまま背後の大木にまで大きな穴を開けていました。
ギィィィィィィィィッ!
ドシンッ! ドシンッ!
岩トロルと大木が、ほぼ同時に地面に倒れ込み、大きな音が周囲に響きました。
ユリアスたちの目が、倒れた岩トロルに釘付けになっているとき、光が消えた魔法陣の中に立っていたセリアが――
パタンッ!
糸が切れた人形のように崩れ落ちて行きました。
「セリア!」
ユリアスがセリアに駆け寄って、その上体を抱き起しました。エルミアナがセリアの額に手を当てて目を閉じ、何ごとかを確認します。
「大丈夫……眠っているだけです」
エルミアナの言葉を風の精霊ウィンディアルが補足しました。
「一度に大量の魔力を扱ったから疲れちゃったのよ。大丈夫、数日もすれば目を覚ますわよ」
「それならよかった……って数日も!?」
ホッとしかけたユリアスが、吃驚して声を上げました。
「凄く大変な魔法でしたし、本人の魔力もほぼ枯渇しかかっています。仕方ありません」
エルミアナの言葉を聞いたユリアスが、ガックリと首をうな垂れます。
ユリアスの後ろからヌッと顔を出すものがありました。
「では我輩がセリア殿を治癒いたしましょうぞ。デュフコポー」
「おぉ、キモヲタ殿! セリアを回復させてくれますか!」
「お任せくだされ!」
キモヲタの優しさに感動で目を潤ませるユリアス。
その周りでは、手をワキワキさせてセリアに近づくキモヲタにジト目を向けるキーラとエルミアナの姿がありました。
そのエルミアナの頭上に浮いている精霊ウィンディアルが鼻をヒクヒクさせました。
「スンスンッ! なんだかキモヲタから発情の臭いがするわね。スンスンッ!」
(この白イルカ余計なことを! お前を殺す方法を今すぐ検索してやるでござるぞ!)
「キモヲタ! まさかセリアに触りたいだけなんじゃないの!?」
「ななな、何をおっしゃるキーラ殿! これは治癒! 我輩はあくまで回復に徹するのであって、よよよ邪な心は一切ないでござるよ!」
キーラのツッコミに、まったく動揺を隠せませんでした。
重度の傷病者を目の前にすると、治癒賢者モードにスイッチするキモヲタですが、疲労を取り除いたり、体力などを回復するような場合にはスイッチが入らないのでした。
「キモヲタ殿、セリアをよろしくお願いします」
真剣な表情で手を握ってくるユリアスに向って、良心の
「では始めるでござるよ」
セリアの右足をそっと持ち上げて、黒いニーハイブーツを脱がし始めるキモヲタ。黒いブーツをズラすすほどに、月に照らされた真っ白なセリアの足が露わになっていきます。
(ふほぉおおお! これはエロス! 聖剣エクスカリバーにエネルギー充填が始まってしまいそうですぞぉおお!)
そんなことを考えてニタァっと笑みを浮かべるキモヲタの手を、キーラがパシッと叩きました。
「キモヲタの手つきと目つきがイヤらしい! あとキモイ! セリアのブーツはボクが脱がせるからキモヲタは耳栓してて!」
そう言ってキーラはセリアのブーツを脱がせると、タオルでセリアの足を丁寧に拭ってから、キモヲタに握らせました。さらにキモヲタの背後に回って、両手でキモヲタの視界を防ぎます。
「これでいいよ! じゃぁキモヲタ、治癒を始めて!」
「お、おう……でござる」
正直な本心を言えば、期待していたセリアエロ要素が全て遮断されてしまったキモヲタは、仕方なく治療に専念することにしました。
「では始めるでござるよ。【足ツボ治癒】!」
キモヲタは指先の感覚から、治癒のオーラがセリアの足を通して拡がっていくのを感じました。
「えっ!?」
その時、ずっとキモヲタの治癒のサポートをしていたキーラが驚きの声を上げていたのですが、しっかりと耳栓をしていたキモヲタはそれに気づくことがありませんでした。
一方、キモヲタの治癒を受けていたセリアは、意識を失ったまま、妖艶な声を上げさせられていました。
グリグリッ。グリグリッ。
「あんっ❤ うっ……ん❤ はっ……あんっ❤」
怪我をしているわけでもないので、セリアの足ツボを押さえる力をキモヲタはかなり控えめにしていました。それにもかかわらず……
グリグリッ。グリグリッ。
「んっ❤ んっ❤ あんっ❤ やんっ❤」
セリアは意識を失ったまま身悶えし、18禁エロボイスを周囲に響き渡らせるのでした。
「セ、セリア……」※ユリアス
「セリア殿……」※エルミアナ
目の前で喘ぎながら身をよじらせるセリアの、その妖艶な姿を見守るユリアスとエルミアナの鼻からは、ツーッと鼻血が流れ出てていました。ただ本人たちはそのことに気が付いていませんでした。
そしてキーラだけは、キモヲタの目を押さえながら、目の前の光景に困惑していたのです。
(いつもキモヲタが治療するときに出る光の色が違うけど、これって大丈夫なのかな)
通常、キモヲタの治療を受けている人は、その身体を緑色の光が包み込むのですが、今、キーラの目の前でセリアの全身を包んでいる光は紫色の光だったのです。
「んっ……こ、ここは……」
セリアが意識を取り戻したので、キーラは考えるのをやめ、キモヲタの肩を叩いて治癒の終了を伝えるのでした。
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