第25話 貫け親指! 轟け嬌声! 足裏ほぐして欠損再生!

~ 魔族捕虜収容所 待合室 ~


 毛布にくるまって横になっているキーラを、キモヲタは黙って見つめています。


 何も話さなくなったキモヲタに、キーラは何故だか自分が悪いことをしているようで、気まずくなっていました。


 スッ……。


 キモヲタが立ち上がる気配がしたので、キーラはそっと薄目を開けました。すると、キモヲタはキーラの足元に膝をついて、深く頭を下げているのが見えました。


「すまなかったでござる」

 

 キーラは、自分に向って謝っているキモヲタに驚いていましたが、それを顔に出さないようにしました。


「あのとき我輩と出会っていなければ、お主もそんな目に会わずに済んだはずでござる」


(そんなわけない!)


 キーラは思わず口から出そうになった言葉を飲み込みました。


 キーラは思いました。あのとき、このドフトゥと出会っていようといなかろうと、いずれにせよ自分はどこかで力尽きて倒れていたはずだと。そして早かれ遅かれ、あの恐ろしい人類軍に捕まって、同じ目に遭っていたはずだと。


 実際にキーラの想像通りでした。キーラを掴まえた人類軍のモリトール隊は、魔族軍の敗残兵を徹底捜索を行っていたので、キーラが見つかるのは時間の問題だったのです。

 

 しかし、そんな事情を知らないキモヲタは自責の念に駆られ、とうとう治癒賢者モードに入ってしまいました。


 解説しましょう。


 治癒賢者モードとは、治癒師としての衝動と、ストレス若しくは何かがスッキリ発散された直後に脳内から妄念が取り払われた状態が合体した精神状態のことなのだ!です。


「お主が負った心の傷は我輩にはどうしようもござらん。しかし、その身の傷は治して見せるでござるよ!」


 ガシッ!


 キモヲタの動く気配にキーラが警戒反応を示すよりも早く、キモヲタはキーラの足先をガッチリと掴んでおりました。


「えっ!?」


 人間よりも俊敏な犬耳族であるキーラは、あまりに素早いキモヲタの動きに呆然とするしかありません。


「貫け親指! 轟け嬌声! コリをほぐして全回復! 行くぞ必殺の後家殺し! 我が全力のスキル【足ツボ治癒】!」


「何!? 何!? ボクに何する気、何するの?」

 

 怖くなったキーラが、掴まれていない方の足でキモヲタを蹴り飛ばそうとしますが、その蹴りを軽くいなして、キモヲタはキーラの足裏に指を当てました。


 そして――


 グリッ! グリグリッ!


「んほぉおおおおおおお❤」


 緑色の光に包まれたキーラは、その身体を思い切り反らせ、完璧なアヘ顔ダブルピースを決めているのでございました。


 グリッ! グリグリンッ!


「あはっぁあああああん❤ らめぇええええぇぇぇえええええ❤」


 キーラの頭部とお尻を覆う緑の光が強烈に輝きます。


 グリッ! グリッ! グリッ! グリリンッ! 


「あんっ❤ やんっ❤ ひぃん❤ んぎぃぃいいいいい❤」


 キーラの腰がガクガクと震え、その振動で手のダブルピースが激しく上下します。


 頭部とお尻の緑の光がさらにいっそう強くなっていきます。その光の中心で、本来そこにあったはずの耳や尻尾は形を取り戻し始めたのでした。


【足ツボ治癒】は足ツボの痛みと同時に、治癒される傷病の重さに比例して、その全身に広がる快感が大きくなっていきます。そして欠損部分の再生は、最大の治癒と言えるものでした。


「ひぎぃぃいいいいいいいん❤ 痛い痛いそこ痛い! けど気持ちひぃいいいいのぉおおお❤」


 この【足ツボ治癒】、足ツボの痛みはいくら大きくなろうと、普通に足ツボマッサージで感じる最大の痛みを越えることはありません。しかし、快感の方は天井知らずなのでした。


 そして、キーラの欠損した耳や尻尾が再生するのを見たキモヲタは、その光景を恐ろしく思いつつも感動し、より一層親指に込める力を強くしていきます。


 グリグリグリンッ!


「あばば❤ あばば❤ あばばばばばば❤」


 いくら快感によるものとは言え、傍から見たら「すぐに医者を呼んだ方がいい」と誰もが思う程にキーラの身体が激しく震えています。


 キーラの目と口と鼻と、あと耳以外の穴からは、大量の汁が溢れ出しているのでございました。


 その後、耳と尻尾が完全に再生したのを確認したキモヲタは、フィニッシュ親指ブローをキーラの足裏に叩き込みます。


「あっはああああああああああああああああああああああああん❤」


 キーラは喉が張り裂けんばかりの絶叫を最後に、意識を失ってしまいました。


「ふぅ……無事に治療できたでござる。よかった、よかった」

 

 そう独り言ちながら、キモヲタは、キーラの顔を拭い、服を脱がせて布で身体を丁寧に拭きました。


 その白くきめ細やかな肌には、もう傷一つありません。ケモ耳も尻尾もフサフサモフモフで、その毛並みは美しく艶やかなものでした。


「綺麗に戻って、よかったでござるな」


 そう言ってキモヲタは、キーラを抱え上げて自分の寝床に運び、そっと毛布を被せてやりました。


 その後、キーラのお粗相でびしょ濡れになってしまった毛布を持って井戸に行き、水で汚れを洗い流すのでした。


 濡れた毛布を待合所の入り口に掛けると、自分はキーラの隣に腰かけてマントにくるまるのでした。


 キモヲタもキーラも、あまりに疲れていたのでそのままぐっすりと眠ってしまいました。


 翌朝――


 目を覚ましたキーラが、昨晩の出来事を思い出し、自分が裸で眠っていることに気付いて、再び絶叫を上げるのと、


 目を覚まして治癒賢者モードから通常モードに切り替わったキモヲタが、昨晩の出来事を思い出し、裸の少女の身体にしたことを思い出し、自分がとうとうイエス・ロリータ・ノータッチの誓約を破ってしまったことに気づいて、今後の人生は世間と警察の目に怯えて生きていくしかないと思って、絶叫を上げるのと、


 二人の様子を見に来た衛士が待合所に顔を出すのが、


 ちょうど同じタイミングで重なって、ちょっとした騒動となってしまったのでした。

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