俺の美学!暗躍街道

みっちゃん87

プロローグ

粟井潤は静かに微笑んだ。倉庫の隅で、彼は丁寧にシールを箱に貼り付けていた。この瞬間、彼の集中力は最高潮に達している。彼の世界は、箱とシール、そして彼自身だけで完結していた。表舞台に出ることはなく、誰も彼の仕事を称賛することはない。だが、潤にとってはそれで十分だった。彼の美学は、目に見えない所で完結している。


都会の喧騒から離れたこの小さな倉庫は、彼にとっては聖域のようなものだ。誰もが知ることのない小さな努力が、大きな歯車を回していることを、潤は知っている。そして、それを誰かが認識する必要はない。彼の日々の暗躍は、目立たずとも、世界を少しずつ変えている。


ウェブサイトに綴る日記は、彼の唯一の吐露の場所。読者がいるかどうかは分からない。しかし、潤は書き続ける。なぜなら、それが彼の美学であり、彼自身の真実だから。彼にとって大切なのは、自分のペースで、自分の道を歩むこと。静かなる暗躍者としての、彼の小さな誇り。


今日も、粟井潤は、誰にも気づかれず、世界を少しだけ良くするために、その手を動かす。

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