未完の物語は、未知の展開を描き出す。

〈マンション・瞑の部屋・朝〉


――なんとか俺は、眠らずに起き続ける事に成功していた。


……前回と同じ様な展開を辿るならば、眠る俺に瞑は色々してきて、初の体験が始まってしまう。


そうなれば、前回と同じ様なルートを辿り、結局はバッドエンドに繋がってしまう。


しかし、今回はソレを阻止した。


【瞑】

「……ふぅ〜ん? まさか――ずっと、燈馬が起きているとは思わなかったよ」


瞑は狙いすました表情をして、ずっとタイミングを計(はか)っていた。


【燈馬】

「悪い……今日はやる事があって、ちょっと今から外に出ようと思う」


【瞑】

「はぁ……残念。ねぇ……燈馬、今日の夜――“月宮さんの所へ行く”のよね……?」


【燈馬】

「あぁ……ちょっと話してくるよ」


【瞑】

「そう……分かったわ」


俺達はベッドに座りながら話をした。


変な展開にはならなくて、俺は心底ホッとしていた。


――俺は早速、学園の制服に袖を通し、格好良い黒いコートを身に纏った。


【燈馬】

「そんじゃ――“また明日”な?」


【瞑】

「えぇ……“また明日”――」


瞑は寂しそうな表情を浮かべたまま、俺を見送った。


――ここから先は、全く分からない……。


“未知の展開”が待ち受けている。


俺は瞑のマンションを出るまで、拳を握り締めていた。


この先は、本当に未知の展開が待ち受けている。


前回辿った、バッドエンドルートではなく、新たなルートへ――。


絶対に生き延びて、“ハッピーエンドまで辿り着く”為に、俺は気合と覚悟を固めていた。


〈街中・コンビニ・店内〉


――俺は朝早くから、コンビニへ訪れていた。


この時間から姫乃恋と出くわしたら、一巻の終わりだが……。


“ソレとは別の問題が発生”していた――。


それは俺が朝から、コンドーさんコーナーを見ながら、ボケっとしている時だった……。


【葵】

「――うげっ?! 森……燈馬――?」


奇しくも――姫乃恋と同じ様な展開で……。


穂村葵に遭遇してしまった。


【葵】

「アンタ……“ここでナニしてんの”――?」


【燈馬】

「は……? “誰お前”……? 俺になんか用――?」


本当は知っていた。穂村葵は姫乃恋と同じ様に、胸がバカでかくて、濃いベージュ色の制服のブレザーがはち切れそうな――。


ボン・キュッ・ボン……な、主人公サイドのヒロインだと言う事を……。


――しかし、ここは初対面なのだ。


だから、俺は知らないフリをした。


【葵】

「いや……用もなにも……休日の朝に、“なんでこんなコーナー”にいるの――?」


【燈馬】

「――悪いかよ? “大事だろ”、“こう言うの”……」


――ガシッ……パッ――。


俺は適当にコンドーさんの箱を取り、葵に見せる。


すると……。


【葵】

「ちょ――やめろって!? は――恥ずかしいだろ……マジでふざけんなオマエ……!!」


葵は首元まで掛かる青い髪を、右手でカシャカシャ掻いて、メチャクチャ恥ずかしそうにしていた。


両耳にビッシリ着けたピアスがギラギラと輝き、なんだか俺は目眩がしていた。


俺はそんな様子を見せる、葵をジックリと観察していた。


額の上には白いカチューシャを着けて、とても中性的な……若干、イケメン? 寄りの、凛々しい顔立ちをしていた。


そんな凛々しい顔は、とても赤面して崩れ去る。


はち切れそうな胸を押し上げる様に、自分の体を抱き締めて、時折、鋭い眼光を飛ばしてくる。


なんだか俺は、ギャップ萌えみたいなモノを感じていた。


【葵】

「うぅ……いつまで、箱見せてんだよオマエ!!」


――葵は遂に痺れを切らし、俺にブチギレてきた。


……スッ――カタッ……。


【燈馬】

「お前……もしかして――いや、止めとくわ……うん」


俺は箱を戻し、意味深な言葉だけ残した。


【葵】

「チッ……そうだよ――“シテないよ”まだ!!」


【燈馬】

「だろうな――うん……」


俺は超冷めた言い方をした。


実際……。


現実世界の俺は未経験で、“魔法使い”だった。


しかし……この意味の分からない、イカれた未完成のWEB小説の中では、トンデモナイ体験をした。


あまりにもイカれたセカイを見て、もう恥じらいや恥ずかしさなんてモノは……。


いつの間にかぶっ飛んで、消えていた。


【葵】

「ふ……ふぅ〜ん? 随分、余裕じゃんアンタ……」


【燈馬】

「あぁ……色々と俺は、“知らないセカイまで経験してしまった”んだ――」


【燈馬】

「こんなもん見たって、なんとも思わなくなってるよ」


俺は本当に変わってしまった。


アレだけ、コンドーさんにビビり散らかしていたのに――。


今じゃ、ただの色んな柄がある、箱達にしか見えないのだから……。


【葵】

「そう……なら、今から“アンタの時間貸して”よ」


葵は、変な事を喋り出した。


俺はとても嫌な気配を感じて、思わず身構える。


――ザザッ……。


【燈馬】

「いや……俺――こう見えて、“超忙しい”んだが?」


【葵】

「“ドコが超忙しい”のよ……? こんな場所で、アンタ――ボーっと箱……眺めてたでしょ?」


【燈馬】

「ま……まぁ――そうだけどさ……」


ごもっともな話だった。俺はぐうの音も出なかった。


【葵】

「なんだか知らないけど、買い物に来たんでしょ? なら、さっさと買い物済ましてよ」


【燈馬】

「は……はぁ……分かったよ――ちょっと外で待ってろ」


【葵】

「いや、私も買い物してから出るよ」


【燈馬】

「そうですかい……」


そんなこんなで俺達は、コンビニで買い物を済ました。


〈街外れ・寂れた公園〉


――また、俺は寂れた公園に辿り着いていた。


なんとなく……この寒空の下でタバコを吸いたかった。


たったソレだけの理由で、葵を連れて公園に。


……カチッ……ジジッ――チリチリッ……。


【燈馬】

「――すぅ……ふぅ……それで? “なんの用”だ?」


前回あった様な展開が、またココで起きている。


俺はベンチに座り、葵は隣に座って……。


【葵】

「アンタ……初対面の女の子の前で、堂々とタバコなんて吸ってんじゃないわよ……」


【燈馬】

「ふぅ……なら、離れろよ? 煙いしクサイんだから」


【葵】

「まぁ……イイわよ――コッチが時間使わせてるんだから……」


【燈馬】

「なら遠慮なく――すぅ……ふぅ……あぁ――美味い……やっぱりタバコは美味い……さいっ――高だぜ……」


寒空の下、タバコをふかすのは最高だった。


そして、前回感じたヤニクラは襲って来なかった。


なんだかもう……燈馬の体にタバコは、完全に馴染んでしまった様だった。


【葵】

「なんか変だねアンタ……本当に。まるで、“オッサンみたいだ”――」


葵は怪訝そうな表情で俺を眺める。


【燈馬】

「いつも言われ……は、しないか――うん?」


【葵】

「いやいやいや……なんなのよそれ? ほんっと、意味分からない――」


【燈馬】

「そんなコトはどうでもいい、要件を言えよ?」


俺はいつまでも、葵とお喋りしている暇は無かった。


せっかく、ループしたのだ――。


色々と……この作品の中で、ナニが起きているのかを調べたかったのだ。


ハッピーエンドに繋がる手掛かりをもっと、欲しかった。


【葵】

「アンタ……“姫乃恋って知ってる”――?」


【燈馬】

「……いや――“知らない”……“誰ソレ”?」


知らないハズはない……。


前回、俺は姫乃恋と――ハチャメチャでメチャクチャになり……殺されたのだから。


だが、ココで知っているとは、口が裂けても言えなかった。


【葵】

「そう……それで、“その子がアンタのコトを気にしてる”のよ――」


葵はシュン――っとして、静かに俯いた。


【燈馬】

「あぁ……そうかい。悪いけど、興味ないわ本当に……」


興味を1ミリでも持てば、俺は死ぬ運命だ。


だから……地雷は一切踏めない――。


【葵】

「いや……あの子はとてつもなく綺麗で、とてつもなく可愛いくて、スタイルも凄いイイ子なのよ?」


【燈馬】

「だからなんだよ……? お前がどんな俺の噂を聴いているか知らねえけど、俺はそこまで節操なしじゃないぞ……?」


【葵】

「――わかってる、分かってるけど……あの子がアンタに“すり寄ったら”、どうなるか――」


とても耳が痛くなる話だった――。


恋にすり寄られて、バッドエンドを一度踏んできたのだ。


俺はしばらく考えて……。


【燈馬】

「なぁ……お前は知らないと思うが、俺は本当に何でもかんでも、取って食ったりはしないヤツだ」


【燈馬】

「それに、姫乃恋とやらと、そう言う仲にはなりたくない……」


【葵】

「アンタの意志は伝わったわ。なんとなく分かるのよ、私には……」


【葵】

「ただ……あの子は――多分、“アンタのコトを本当に狙ってる”……私には分かるんだよ、恋はアンタに本気だって――」


【燈馬】

「じゃあ……どうすんのよ? お前は恋を止めたい、俺に近づけたくない……だろ?」


【葵】

「うん……そう。アンタには近付けさせたくない」


【燈馬】

「だろ……? 俺もよく分からん女に、近づきたくもないし、近寄られたくないんだよ」


お互い利害は一致していた。


葵は恋を俺に近づけさせたくない――。


俺は自らが近寄ることも、近寄られたくない――。


だから……。


姫乃恋には勝手に一人で、よろしくやっていて欲しかった。


絡めば必ず、バッドエンドルートを辿るのだ。


【葵】

「だからさ……“私がアンタの彼女になって”、恋を近付けさせない様にしたいの――」


【燈馬】

「“無駄だぞ”? きっとソイツは例え、“俺に彼女がいても”――お構い無しで、“俺を狙いに来る”」



俺は光よりも速い返答をしていた。


そう――姫乃恋は一度でも絡めば終わり。


コレからのミッションは、いかに姫乃恋と接触しないかだった。


【葵】

「はぁ……だよね――あの子、多分……自分に自信あるから、ガンガン攻めるだろうし……」


【燈馬】

「俺は姫乃恋とは、直接の接触はないから分からんが、相当……可愛くてキレイなんだろ?」


これも俺は全部知っていた。恋のほぼ全てを味わったのだから……。


【葵】

「えぇ……恐らく――“学園で一番の女の子”よ……」


【燈馬】

「……そりゃ怖いな――。ふふっ……“色んな意味で怖い”ぜ……ハハッ――ほんっとによ……」


なぜ、恋は燈馬に御執心なのか分からない――。


俺がくたばる間際――恋は言った。


“私の初恋の人”と……。


だが、悪役である燈馬の描写は、あまりにも少なすぎた。


作中には穴がある――いや、穴だらけなのだ……。


恐らく、作者が思いっ切り風呂敷を広げた結果、あまりにも大きく広げすぎたせいで、畳めなくなった。


そして――。


燈馬と恋に関する描写など、ほぼ皆無のまま……。


未完のWEB小説が、見事に出来上がってしまった。


大体、相場は決まっているのだ――。


【葵】

「なんだか……情緒不安定に見えるけど大丈夫?」


【燈馬】

「あぁ……最近、色々あり過ぎてな――少し、精神が不安定なんだよ……」


【葵】

「は……はぁ……そ、そうなんだ――大変だね?」


【燈馬】

「いいさ……。それよりも、お前……名前は?」


ふと……俺は気がつく。


そう言えば――ループしてから、まだ穂村葵の口から、名前を聞いていなかったと。


【葵】

「あぁ……ごめん、言うの忘れてた」


【葵】

「私は穂村葵。姫乃恋の友達だよ」


【燈馬】

「あいよ……穂村葵ね? そんで、お前は“コレからどうしたい”?」


【葵】

「分からない……恋を止めたいけど、私には止められそうにないし……ほんと――どうすればいい?」


【燈馬】

「いや……俺に聞かれてもだな――俺も分かんねえよ? そもそも、“お前と俺は初対面”だぞ……?」


本当にリアルな感想だった。お互い本当にどうしたらいいのか……。


本当に分からないのだから――。


少なくとも今、分かる事は姫乃恋は……。


生半可な策じゃ止められない事だった。


【葵】

「そうだけど……どうしよう――きっと、アンタは恋にずっと、ずっと……“狙われる”よ?」


【燈馬】

「勘弁してよ……怖いって!! ホラー展開はマジでやめてくれよ……いや、リアルガチで――ほほ……」


【葵】

「はぁ……ココにずっと居ても寒いし、“ウチ来ない”……?」


【燈馬】

「……はっ? なっ――なんでお前の家に……?」


俺は意味が分からなかった。突然、葵がそんなコトを言うものだから……。


【葵】

「色々と話し合いしようよ? ねぇ……イイでしょ? 駄目なの……?」


【燈馬】

「いや、良いも悪いもお前――俺の噂を聞いてんだろ? なんで、ワザワザ悪いヤツに絡むんだ……」


【葵】

「いや……アンタとちゃんと話して分かったよ。アンタはきっと、“そんなに悪いヤツじゃないって”」


葵のそれは女の勘なのか、それとも今の俺の雰囲気から察したのか――。


それは分からないが、葵は真剣な表情で俺を見据えた。


【燈馬】

「ハァ……正直、面倒なコトに巻き込まれそうでダルいけど、しゃあない――分かったよ……行くよ」


【葵】

「本当……? ありがとう、森燈馬」


【燈馬】

「いや、フルネームやめてくんね? なんかゾワゾワしてきて嫌だわ……」


【葵】

「じゃあ、なんて呼べばいいのよ? アンタのコト。 森? 燈馬? どっちよ……?」


【燈馬】

「燈馬でいい――それに、コッチもお前のコト、葵って呼ぶわ」


【葵】

「んなっ――?! なんで、下の名前で呼ぶのよ?! 意味わかんない……マジで」


【燈馬】

「意味わかんねぇのはお前だろ? 俺の彼女になって、うんたらかんたらとか言ってたんだから……」


【葵】

「あグッ――うぅ゙……た――確かに……それは意味分かんないわ、自分でもさ?」


【燈馬】

「だろ……? そんなわけだ、“認めろ葵”――」


【葵】

「うぅ……分かったわよ――と……燈馬――?」


【燈馬】

「……うむ、よろしい」


俺達はなんともギクシャクした会話を交わした。


そして、コレから葵の家に向かうらしい……。


【葵】

「あぁ……それと――“ウチに一匹ウルサイヤツ”いるけど、気にしないで?」


【燈馬】

「いやいやいやいやいや……気にするよ? なにその意味深な発言?! 一匹……? ナニソレ?」


一体、ナニがいるのか俺は凄く気になった。


猛獣でもいるのだろうか……と。


【葵】

「あぁ……“腹違いの妹”だよ――」


【燈馬】

「いや……もっとスゲーの出てきたわ――なんだそのもっと、意味深なワードは……?」


超展開が起きそうな予感がした。


このガバッガバな未完成なWEB小説のセカイ――。


完全に本邦初公開な、新情報が唐突に現れた。


未完のWEB小説にそんな情報あったかと、俺は頭を捻って思い出していくも、全くそんな情報は出て来なかった。


【葵】

「ふぅ……ちょっと活発で、“かなりヤンチャな子”なのよ……」


【燈馬】

「うげっッ――?! ナニソレ……まさか、オラオラ系の女の子じゃないよね……?」


……俺は危惧していた。


オラオラぁ〜〜!! 燈馬ぁっッ!! おい、こっち来いよ? あ? ゲームすっからこいよ!!


なんて……超絡まれたらどうしようと――。


【葵】

「いや……? そう言う類ではないかな? どっちかと言うと――“小悪魔系”……?」


【燈馬】

「っだ――そりゃ? こ――小悪魔系……?! 全く想像がつかない――知らない単語過ぎる……」


現実世界で、その昔……。


キャムキャムだか、アーハだかなんだかの雑誌に記載されていた、伝説の単語だった。


その雑誌の特集を昔、テレビでやっていて、小悪魔系だかナンタラ系を紹介していた。


巷では伝説級の単語になっていたのだ……。


しかし……そんな煌めき輝くモノと俺は、全く無縁の生活をしていた。


なんとなく、どんなモノかは察するが、実際どんなモノかは想像出来なくて……。


俺はただただ――畏怖していた。


自分が知らないモノは、なんだか警戒感や、恐怖心が芽生えるのだ。


【葵】

「ど……どうした? そんなに呆然として……?」


【燈馬】

「いや……自分と全く接点無さそうな、単語が出てきてさ?」


【葵】

「いや……アンタの側にいつも居るでしょ……」


【燈馬】

「えっ……? なんのコトスカ……?」


【葵】

「いやいや……背が小さくて、華奢だけど、とっても可愛くて“美しい女の子”が――」


【燈馬】

「あぁ……瞑のことか。ふむ……確かにそう言えば――どうなんだろう……小悪魔系なのか……? いや、分からない――俺にはナニモ……うん――」


【葵】

「おーい? アンタ、さっきからバグりすぎ……」


【燈馬】

「悪い……小悪魔系ってなんだろうと、頭の中でグルグル考えていたんだ」


しかし俺は、その答えに辿り着く事は出来なかった――。


昔、確かに見たのだ……小悪魔系の特集を。


しかし、未だにそれがなんなのか――。


謎は解明されていない……。


【葵】

「まぁ……来れば分かるよ。マジでアイツうっさいから……。ほんっとうに、鬱陶しいのなんのって」


【燈馬】

「なんか……行く気が失せてきたわ。だって、スゴイんだもん。お姉ちゃんが、妹を超ディスってるんだもん……」


【葵】

「ドコの姉妹もそんなもんでしょ……キット――」


【燈馬】

「そ……そうなの? 俺には分からんわそんなの」


現実世界の俺にも兄や姉はいたが、物心がつく頃には家にはいなかった。


だから俺には兄弟の絆とか、そう言う類のモノは一切なかった。


時折、兄弟らしいエピソードを聞くと、少し羨ましく感じたのだ。


あぁ……いいなそんなに兄弟が兄弟してと。


兄弟と疎遠過ぎて、兄弟とかどうでもいい――。


そう考えていた俺には、とても刺さるモノがあったのだ。


【葵】

「……あ〜〜でも……燈馬――アンタ気をつけなよ? “ウチのアレ”――“恋タイプかもしれないから”……」


【燈馬】

「ドヒェ〜〜〜〜っッ?! ちょっと、ちょっと、ちょっと……やめてよ、そう言う展開――?」


俺は葵の言葉にビグゥっッ――!!


――っと体を強くビクつかせた。


恋タイプに絡まれたら終わりなのだ。


もし、前回の様にバッドエンドになり、死んだりして、もう一度ループ出来る保証はドコにもない。


ナニかの気まぐれで、本当に最後のループかも知れないのだ……。


命は大事にしなくてはならない――。


【葵】

「まっ……大丈夫じゃない? 多分、“アンタはアイツのタイプじゃない”と思うし……?」


【燈馬】

「つまり、“妹さんは面食いってコト”……?」


【葵】

「まぁ……悪く言えばそうかな? うん……そうだね、“アイツはイケメンが大好き”なのよ……」


【燈馬】

「ならよかった……じゃあ大丈夫だな」


俺はホッと胸をなでおろす。


燈馬はイケメンだが、美形のイケメンと言うわけじゃない。


どっちかと言えば、渋くて格好良い系?


そんな顔をしているのだ。


【葵】

「多分、大丈夫だと思う……たぶんね? アイツ、結構イケメンアイドルの動画とか見てるのよ、テレビで」


【燈馬】

「はぁ……なるほど。それじゃあ大丈夫だな」


俺は多分、カテゴリーから外れているだろう。


……本当にホッとした。


【葵】

「それじゃ、行きましょう? 寒いし……」


【燈馬】

「あぁ……行こうか――」


――こうして、俺達は公園から撤退した。


ここから先は、未知の領域だ。


予測は全くつかない――。


それでも、俺は前に進むしか出来ない。


ハッピーエンドまでの道のりは、まだまだ……。


遠そうだった――。


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