幕開狂劇
It requires more courage to suffer than to die.-----Napoleon Bonaparte
「ちょっと実践をしてみようか」
目の前に座っていた男、余真からそう言われる
その瞬間、春倉と余真の前に2体の「妖」がいきなり出現する
なぜこうなっているのか
春倉は少し思い出す
先週の日曜日、魔歩省から渡された携帯にメッセージが届いていた
そこには魔歩省へ来る様にと書かれていた
そして魔歩省に行き余真の場所へと案内してもらった
「よく来たね。まぁ、そこに座って」
余真が言う
「はい」
ソファに座る
「さて、なんで今日呼び出したのか。それは君へ教育をするためだよ」
「教育…「妖」についてのですか?」
「その通り。本来、この様な教育ってのは我々ではやらないんだ。なぜなら、君の様に術が使える子供はそのほとんどが、我々の世界になんらかの形で関与している者達のすぐ側で育っているからね。成長すると同時にその者から教えてもらうことが多いんだ。ただ君は例外で周囲にも教えてくれる様な人物がいない。なので今回は特別に我々、魔歩省が教育を行うことになったんだ」
「なるほど…ありがとうございます。あ、今日の教育って、もしかして余真さんが直々にやるのでしょうか」
「そうそう。本来はこういう仕事は私はやらないんだけどね。担当の職員が体調不良でいなくて。他の職員も忙しいから、私が直々にやる事になったんだ」
「そうなんですね、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします(案外、局長って暇なのかな)」
「うむ。さて、早速始めようか。私についてきてくれ」
「あ、はい(別室でやるのかな)」
そういうと余真は出ていった
春倉はそのあとを追いかける
いくつかの角を曲がり、何回か階段を降り、何部屋かの部屋を通り過ぎた後、広々とした空間に辿り着いた
「ここは…体育館?」
春倉は本能的にそう思った
天井からは薄く、それでも優しい太陽の光が降り注いでいる
床は木材でできており、硬い
壁も木材であろうか
目の前の余真が口を開く
「そう。ここは我々が所持し管理している施設の一つさ」
「そうなんですね…」
「さて、それでは春倉君」
くるりとこちらを振り向くと序盤の言葉を言ったのだった
そして今に戻る
突然の「妖」の登場に驚きが隠せない
その「妖」は空中に浮遊しており、まるで魚の様だ
いや、魚の形をした「妖」であろうか
だが決定的な違いがある
目が7つある
ギョロリとしたその目は獲物を探しているかのようだ
そして目の前にいた春倉と余真を発見する
瞬間、空中を素早く、滑る様に春倉達に接近する
「さて、第一の授業はコレだ。この「妖」から5分、逃げてみなさい」
「む、無理ですよ!自分よりも動きが早いです!」
そういう間にあっという間に距離が詰められた
春倉はやむなく右に飛び出す
距離を詰めてきた「妖」は春倉のいた場所を通過する
だが春倉は見逃さなかった
春倉のいた場所へ来た時大きく口を開けていたのを
そしてその口の中には大量の歯があったことを
右に飛び出し間一髪攻撃を避けた春倉
だが休む暇もなくまた襲い掛かられる
「春倉君、こっちを見て」
余真が声をかける
春倉は声のした方を見る
余真は易々と避けていた
それも必要最小限の動きで
「「妖」と戦う時の行動、その一」
余真が言う
「最初っから戦おうとするのではなく、相手の動きを見極めること」
避けながらそういう
「その「妖」も落ち着いて見れば動きは非常に簡単だ。今言ったことをよく思い出しながらやってみるといい」
そういうと、そのまま「妖」を避け続ける行動をし続けた
「相手の動きを見極める…」
春倉は復唱した
そして立ち上がると「妖」の方を見る
また「妖」は距離を詰めようと突っ込んでくる様だ
(待てよ…突っ込んでくる…?)
ふと思った春倉は徐に「妖」を見つめ、そのまま姿勢を動かさず止まった
距離を詰めてくる「妖」
春倉との距離はおよそ20メートル
速度が増す
距離10メートル
「妖」が春倉を捕食するため口を開けた
その瞬間、春倉は右へ一歩動いた
動いた直後、春倉のいた場所を素早いスピードで「妖」は抜けていった
その様子を見ていた余真は褒める
「そう。それが第一の行動。センスあるね、春倉君!」
余真も同じ様に避け続けていた
春倉も行動を掴んだからか、余裕を持って避け続ける様にまでなっていた
そうしているうちにいつの間にか5分立ったのであろう、余真が口を開く
「行動、その二」
避け続けていた余真が「妖」に向かう
「相手にとって考えない行動をすること!」
そう言うと「妖」の元へ走っていき、「妖」のわずか数メートルのところで
スライディングした
そのまま「妖」の下を通り抜ける
「相手にとって考えなかった行動をすると」
「妖」は目の前にいた獲物が消えたのでアタフタしているようだ
「相手に隙を生むことができる」
地面から立ち上がりパンッと手を叩き自分の存在を「妖」へ知らせる
「妖」は驚いた様子で余真を見る
「「妖」もバカじゃない…個体によっては動きを考え行動を変えてくる奴もいる」
「妖」は再度余真に突っ込む
今度は驚くべき跳躍力で「妖」の上を飛び越えた
飛び越えた次の瞬間「妖」の横腹に拳が突き立てられる
春倉から見て左に吹き飛ぶ
吹き飛んだかと思いきや今度は右に吹っ飛ばされる
ここで春倉は気づいた
恐るべきスピードで余真は拳を叩き込み、吹き飛ばされる方向へ素早く回り込んでそこから拳をまた叩き込む事により今の様な動きを成しているのだと
「行動、その三!」
拳を叩き込みながら言う
「基礎的な体術と身体能力の強化のみでなるべく戦うこと」
そう言いながら拳の他に足も使って攻撃を加え続ける
「祓力は知ってるね?我々術師の全員が持っているエネルギーだ。それを体に満遍なく拡散する様子をイメージしてみて。そうするとこの通り!」
5メートルくらいだろうか、一気に飛び上がった
「ありとあらゆる身体能力が強化される」
そのまま前に倒れ込む様に体を傾けると足で地面を蹴り、一気に5、6メートル飛び出した
そのスピードのまま「妖」へ突進する
魚の形をした「妖」は十分早く移動できる
それすらも上まる速度で接近、拳を叩き込んだ
余真と戦っていた「妖」の動きが止まった、と思った瞬間、地面に降り立ち徐々に消えていった
「さて春倉くん」
余真が言う
「今の様にやってみなさい」
春倉は身構える
春倉の脳内での会話が終わる
結果的に言うと、あの後春倉は「妖」を倒すことができた
そして全身に祓力を纏うと言う行動を取得することができた
それゆえ、春倉はこう思っていた
「行ける…!祓える…!」
目の前にいる「妖」は近づいてきた春倉に気付いたようだ
目と思われる黒い機関をギョロリと回し春倉の方へ向けた後、いきなり生えていた触手が春倉の方へと振り下ろされる
(ヒュウゥゥ!)
空気の切れる音がする
(パァン!)
と言う大きな音と共に触手が地面に叩きつけられる
パラパラと砂ぼこりが舞う
「妖」は仕留めた獲物を見るかの如くゆっくりと触手を上げる
その刹那
(バシッ)
音が鳴る
「妖」は音が鳴った方へ目と思われる機関を向ける
その子にいたのは先ほど叩き潰したはずの春倉が立っていた
祓力を全身に纏り強化された身体能力で「妖」の攻撃を見切って避けたのだ
「妖」はその姿を確認すると同時に2撃目を出そうとした瞬間、強烈な痛みが「妖」を襲った
よく見ると春倉の拳が「妖」の体の中に入り込んでいる
いや、よく見ると「妖」の肉を抉り取りながらできた穴に手を入れていると言ったほうがいいかもしれない
「gyoooooooooooo⁉︎」
声にならない叫びをあげる「妖」
だがそんな叫びもお構いなしとばかりに春倉は攻撃を続ける
肉を抉り取りできた穴に更に手を突っ込み攻撃を加える
通常の拳よりも痛い、祓力を纏った拳
たまらず「妖」は4本全ての触手を振り回し春倉を引き剥がそうとする
すんなりと春倉は離れる
「あともう少しだったのに…」
春倉はつぶやく
その手には光り輝く糸が伸びていた
先ほど、春倉が「妖」の体に穴をあけ内部に手を突っ込んでいたのは「糸涙」を使うためだった
実際、それは成功したように思えたが「妖」の反応が思ったより早く反撃されたため、中途半端に失敗してしまったのだった
「でも…」
春倉は視認していた
「妖」の肉体に空いた穴から糸が伸びている事を
幸い、「妖」は春倉に夢中で気付いていない様子である
「あの糸に今持つ糸を結んでしまえば後は…」
春倉はそう考えていた
触手が振り下ろされる
右に避ける
それを狙ってか右から触手が薙ぎ払うように来る
上に糸を出し、勢いよく手に力を入れて飛ぶ
糸は上にあった木の太い枝に絡まり、綱登りのように木を登り春倉は木の枝の上に乗る
連撃
木を狙って触手が3本、春倉を中心に触手が伸ばされる
春倉は枝から勢いよく飛び上がり、「妖」の真上にまで飛ぶ
「妖」は出した触手を戻して春倉を狙おうとする
間に合わない
春倉は手を組み肘を突き出す…肘鉄砲である
重力に引っ張られ加速した春倉の肘が「妖」を襲う
春倉の肘が目と思われる器官に命中する
「------⁉︎‼︎⁇⁉︎」
声にならない叫び声をあげる
目と思われる器官からは大量の黒い液体が噴水のように噴出している
それを確認した春倉は「妖」の上から飛び降り地面に着地する
思った通り、今春倉が攻撃した箇所は「妖」にとっての目であったようで、もう片方にあった目で春倉のことを見ようとしている
その目には怒りが込められているように春倉は感じた
そして、その目が春倉を捉えようとしたその瞬間
追撃
矢が一本、その目に突き立てられた
矢が飛んできた場所を見ると、星見がいる
昼に会った時とは違い、目が青くなっていた
その目からは薄い、されども強い祓力が発せられていることを春倉は気付いた
星見がこちらを見るとかすかに微笑んだ気がした
星見が射った「妖」の箇所からは同じように黒い液体が溢れ出していた
「---------‼︎‼︎‼︎‼︎」
外見れる唯一の器官が潰された「妖」は激しく言葉にならない叫び声を上げながら身を悶えさせていた
「妖」は外を見れる器官が両方破壊されたためか、何も見えない
何も見えないからこそいつ訪れるかわからない攻撃に対する恐怖
その攻撃によって自分が死ぬことへの恐怖…
春倉は「妖」の気持ちを少し考えた
(楽に…祓ってやろう…)
春倉は「妖」へ向けて歩き出す
「妖」はやられはしまいとばかり、触手をあらぬ方向へと伸ばし、縮み、叩き、薙ぎ払い、触手で掴んだモノをあらぬ方向へ投げつけたりする
だが、春倉はそれらを全て避ける
いや、避けるという言葉は当てはまらないかもしれない
なぜなら、上記の行動は全て出鱈目に行われている
よって春倉に当たりそうなものは確かにあるのだが避けること自体幾分か簡単になっているのだ
春倉は気をつけながら暴れ回っている「妖」へと接近する
無茶苦茶に振り回されている内の一本の触手が春倉を襲う
だが春倉を僅かに外し地面に叩きつけられる
その瞬間を逃さず、春倉はその触手に向かい手を伸ばし
「絲!」
と唱える
瞬間、春倉の手から糸が勢いよく飛び出し、地面を叩きつけた触手に巻き付く
「妖」は驚きすぐさま触手を引っ込めようとする
…が、できない
それもそのはず、春倉の糸により触手は地面にまるで縫い付けられるかのようにして地面から動かせない
「妖」は残った触手3本を、声のした方へ集中的に打ち込む
が、効果はなく、叩きつけ薙ぎ払おうとした触手3本が全て動かなくなった
そう、全て春倉の糸により縫い付けられ動かなくなっていたからだ
ゆっくりと春倉は近づく
そう、目が見えずとも感じる範囲にまで
「妖」はその方向へ叫び声をあげ、威嚇するように大声を出す
春倉はその声にものともせず「妖」に近づいてゆく
狙いは先ほど春倉が攻撃し、糸が飛び出ている箇所…
難なくその場所にたどり着くと、春倉は飛び出ている糸を掴む
掴んだその瞬間、「妖」は叫ぶのをやめた
それと同時に春倉は頭の中で念じ始めた
「糸涙」
そう言うと同時に「妖」は力が抜けたかのようにゆっくりと下を向き始め、体が小さくなり始めた
春倉はゆっくりと手を離す
それと同時に星見が近くに歩いてきたことに気がついた
「祓えたの?」
と星見が尋ねた
「祓った」
と春倉は返した
「正直、驚いたわ…ここまでの力があったなんて」
「魔歩省のある人に色々と教えられてね…」
「ふーん…」
星見はそういうと春倉が倒した「妖」へと近づく
「それにしてもデカかった…まぁ、デカかったからこそ矢を当てることができたんだけどね」
「そっちの矢のおかげで本当に助かったよ。ありがとう」
「ふふん!もっと言ってもいいんだけどね!」
そう言うと春倉の糸を持っている片手に注目する
「それ、いつまで持ってんの?早く離したら?」
「ん、確かに。祓ったからもう大丈夫か…」
そうして春倉は持っていた糸を離した
次の瞬間、春倉は木にぶつかっていた
「…は?」
そして襲い来る激痛
春倉には医術の心得など無いが直感的に察した
(骨が折れている…)
激痛に耐えながら前を見る
10メートルほど先に星見と…「妖」が見える
(バカな…!確かに祓ったはず…!?)
そう思った次の瞬間、春倉の体は宙を舞っていた
(何が…起こっているんだ…!?)
宙へ舞う春倉、だがその次の瞬間、空中で何かにぶつかられたかのように何かに跳ね飛ばされ地面に叩きつけられる
「春く…にげ…」
うっすらと星見の声が聞こえる
前の景色が真っ赤になる
いや、これは血だ
頭から出ている血が目に流れ、それを通して見ているから真っ赤に見えているのだ
春倉は地面に倒れながらそう考えていた
また何かに捕まれ宙に持ち上げられる
気づくと目の前には先ほどの「妖」がいた
宙吊りになりながらぼんやりとその「妖」をみる
(さっき倒した妖と姿が似ている…)
その「妖」は春倉を見て、ニタニタと笑っていた
いや、ニタニタと笑うような表情はしていないかもしれない
だが、春倉は直感的に理解していた
まるで追い詰められた獲物を狡猾に殺しに行くようなハンターのような顔
狡猾な笑みを浮かべながらも油断をしない、殺し屋のような…
春倉はふと気がつき星見を探した
すぐに見つかった
春倉のすぐ右隣にいた
春倉と同じように宙吊りになりながら
「星見!星見!」
呼びかける
だが返事はない
よく見てみると全身の至る所から出血している
(まずい、このままでは…)
春倉は何か方法がないかと考えた
が、何も思い浮かべない
と言うより何もできなかった
空中に宙吊りになっている状況では殴ることや蹴ることもできない
言うまでもないが手が出せないので今の春倉は祓術の発動もできない
完全に詰みの状況であった
(ここまでか…)
春倉は覚悟した
目の前の「妖」が大きく口を開けた
口の中には無数の歯のようなものが見える
(食われてバラバラになって死ぬか…痛くなければいいが…まぁ、痛いだろうな)
春倉は覚悟を決め目を瞑る
(星見…余真局長…氏賀…お母さん…お父さん…)
口の方へ段々と宙吊りになりながら近くによっていくのがわかる
そして…
閃光
一瞬の眩い光が春倉の前を通りすぎる
その眩さは目を瞑っていても感じるほどであった
春倉はうっすらと目を開ける
目の前にいたはずの「妖」がいない
いや、いないのではない
消し飛ばされている
すぐ下を見るとまるで鋭利な刃物で切断されたかのような状態で「妖」の下半身だけが存在していた
数秒後、まるで今上半身が無くなったことに気づいたかのように「妖」の下半身から大量の黒い液体が溢れ出る
それと同時に星見と春倉を宙吊りにしていた何かの力が抜け2人とも地面に落下する
「…え?」
春倉は頭が追いついていなかった
とりあえず、目の前には上半身が吹き飛ばされ消失した下半身だけの「妖」がいる
そして自分の右隣には自分と同じく解放された星見が気絶した状態で転がっている
とりあえず星見の容態の確認をする
「星見?おい、星見!」
軽くゆすってみる
「…ぅ…」
小さいが声を出した
意識が戻ったようだ
「星見、今すぐにここを離れよう!」
「…」
また何も言わなくなってしまった
この状態では立てるわけがないのでおぶっていくことにした
「星見、ごめんよ…よっと」
星見を背中に担ぐ
そして歩き出した次の瞬間
「Ugrrrrrrrrrr…」
「妖」の下半身がそう声を出したと思うと切断面から頭のようなものが生えてきた
「くそっ…このっ…」
春倉は言う
そして手から糸を出す
(今の状態だったら勝てるかもしれない…)
そう思い糸を出し「妖」をみつめる
そして「妖」の下半身がびくりと動いた次の瞬間、春倉の横からまた眩い光が飛び出した
今度は残された下半身の方に当たる
「gy…」
断末魔も許さない速さで「妖」を葬り去る
いや、消し去ると言った方が良いかもしれない
ともかく、「妖」は今度の二度目の謎の攻撃で完全に消失した
残されたのは数本の触手の残骸と黒い液体のみ
だが段々と燃え尽きるように消失していっている
どさっと春倉は尻餅をつく
うまく足に力が入らない
また、激痛のため呼吸が荒くなっている
(ゼー、ハー、ゼー、ハー)
春倉の荒い息の音と共に後ろから近づいてくる足跡がする
春倉はゆっくりと後ろを向く
そこには近づいてくる女性がいた
手には黄色い炎で形作られている弓のような物を持っていた
その女性は春倉に近づくと手に持っていた炎を消して
「大丈夫か?」
と尋ねた
「…あ、は、はい。大丈夫…です」
「そうか、それは良かった」
と言うと消失した「妖」を見てもう一度春倉の方を見た
「最後は私がやったが、途中まではお前達2人がやったのか?」
「あ、はい。途中までは自分たちでやりました。ですが、トドメを指すところで急にアレ…「妖」が消えて、別の「妖」が…」
「ふん。違うな。アレは一定の攻撃を受けると進化、と言うよりも奥の手を出すタイプのヤツだ。お前達、フリーだろ?しかも学生服…学生か」
「あ、はい。そうです…」
「ったく、学生が学校サボって祓いに来るんじゃないよ。ましてやまだ素人の様な奴らが」
「すみません…」
「ふん。だが、中央の奴らも中央の奴らだ。あのバカども「妖」の等級判断すら出来なくなる程に落ちぶれたのか…?」
「え?」
「いや、なんでもない。とりあえずお前達2人は病院に行ってこい。ここの片付けは私がやっとく。入り口にいるヤツに祓ったことを教えておけ」
「あ、はい!ありがとうございます」
「礼などいい、とっとといけ」
そういうとその女性はどこかへ電話をかけ始めた
春倉はもう一度その女性にお辞儀をすると、星見を担いで公園の入り口へ向かった
公園の入り口にて、公園に入るときに声をかけてきた警察官が声をかけてきた
「お疲れ様で…大丈夫ですか!?」
「至急、病院を!攻撃を受けて気絶しています!」
「分かりました。それで、「妖」の方は…?」
「無事祓えました!正確には私たちの後に来た人が祓った、ですが」
「貴方達の後?おかしいな、誰も通した覚えは…まぁいいです。今はその方の搬送を急ぎましょう」
そう言うと手に持っていた無線機で救助を要請する旨を言う
程なくして黒い車が現れ、春倉達の隣に停車する
ドアが開き中から白衣を着た人物が出てくる
そして星見を見るなり
「出血がひどい。至急、搬送しなければ」
と言った
そして春倉の方をみると
「君も、怪我をしているな。一緒に搬送しよう」
と言った
春倉は学校のことを考えたが、今は仲間の命の方が大事だ
付いて行く事にした
そして2人は黒い車に乗せられ病院へ連れて行かれた
春倉達が襲われた公園を一望できる、すぐ横にあるビルの屋上にて
「…」
1人の男が単眼鏡で黒い車に乗せられた春倉達を見ていた
そして公園に残っている春倉達を助けた女性に目線を移した
「輝色…か」
その男はそう呟く
そして何かを手元にあった紙に書き、単眼鏡をバックに入れる
手で印を組み、ブツブツと何かを唱える
瞬間、男の周りの景色にヒビが入り、パラパラと崩れ去る
いつの間にか男は何処かの部屋の中にいた
そして部屋の中をすべて見渡すと一つ頷き、その部屋の玄関に用意してあった赤いポリタンクを持つ
ポリタンクの中身は液体の様だ
キャップを開け、部屋中にそれをぶちまける
全ての部屋に撒き終えると、マッチを一本取り出し火をつける
そして液体を撒いた部屋の中、液体の上にマッチを投げ捨てる
瞬間、爆発したかの様に火が一気に燃え広がる
それと同時に男はドアを開け、外に出た
夕暮れが男の顔を照らす
男の顔半分に広い傷跡があった
また、片目が変色していた
眩しさに手を出し、夕暮れの光を遮断する
男はそのまま歩き始め、姿を消したのだった
公園で調査をしていた女性は、公園の近くにあったビルの屋上を見ていた
(空間転移系の呪文…?一体誰が…「中央」か?)
そう考えたその時、持っていた携帯電話が鳴る
相手の名前を一瞥し、電話に出た
「輝色です」
電話口の相手が何か言う
「はい…終わりました。途中、私より先に来ていた2人の祓師が…いえ、フリーの…はい」
女性…いや、輝色と呼ばれた女性は電話を続ける
「痕跡は発見できず…はい…おそらくは、ですが…空間転移系の呪術を感知しました。なので…はい…了解いたしました。調査をこのまま続行致します。それでは…」
そう言うと電話を切った
そして、足早にその地を去っていったのだった
[幕開狂劇 END]
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