第25話

「達也、いつまで泣いてんだ? もう入学式は終わったぜ」

「大分落ち着いてきた」


 沙雪がいなくなり落ち着くと今度は椅子が移動されて記者会見の会場に変わっていく。


「続きましては赤目達也さんの記者会見を行います」


 司会のお姉さんが前に出た。


 俺とごう、そしてウエイブウォークの計5人が前に座る。


「まずは5人の紹介を行います。若者から絶大な支持を得る冒険者パーティーウエイブウォークにしてレベル5の魔戦士、川野新さんです」

「よろしくお願いします」


「そして同じくレベル5の聖騎士、山岸樹さんです」

「よろしくお願いします」

「そしてウエイブウォークの紅一点、レベル5の賢者、海辺凛さんです」

「よろしくお願いします」


 黒魔法使いと戦士タイプのダブルは魔戦士、剣を持っていれば魔剣士と呼ばれたりする。

 白魔法使いと戦士のダブルは聖騎士、そして白と黒魔法のダブルは賢者で定着した。

 ネットの呼び名がそのままテレビでも使われている。


「続きましてドラゴンを一振りで倒す男、冒険者レベル6の剣士、白金豪己さんです」

「おう、よろしく頼むぜ」


 ごうはいつも自然体だ。

 そして器が大きい。


「そして最後にご紹介しますのが今世間を騒がせている元レベル5冒険者にしてマウンテンカノンと数千のゴーレムを単独で討伐し、ウエイブウォークの先生でもあり元伝説のパーティー、ウエイブライドのメンバー。3系統の魔力を操る赤目達也さんです」


 拍手が鳴り響く。


「よろしく願いします」

「赤目さん、警察から無事帰ってきて、先ほどは、ねえ、沙雪さんの入学式で涙を流す場面がありました。思わずもらい泣きしそうになりましたが、今体調はいかがですか?」

「絶好調です!」


 笑いが起こる。


「沙雪さんが無事入学された感想をどうぞ」

「はい、みんなの力を借りてよく分からない中、それでも沙雪は立派に育ってくれました」


「はい、では、記者の皆さんから質問をお聞きしていきます。はい、どうぞ」

「えー、達也さんは冒険者資格無しではありますがそれでもゴーレムと戦い多くの人命を救いました。しかし、ルールを守っていれば警察に捕まる事は無かったかと思います。命を救ってそれで警察に捕まる今の現状をどう思われますか?」


「まず最初に警察の方々はかなり気を使った対応をしていただきました。冒険者を縛るルールは必要と考えます。ルールがあるおかげで冒険者の資格を持たない人間がダンジョンに入り、モンスターと戦い命を落とすような危険を避けることが出来ると思います。日本には1億人以上のいろんな方がいます。私の行いが良しとなれば冒険者資格を持たない子供がダンジョンに向かい命を落とす事になりかねません。繰り返しになりますが、警察の方はかなり気を使っていただきました。以上です」


「ありがとうございます。ですがですよ、冒険者資格のあり方についての法改正は必要だと思います。遅れた法改正についてはどう思われますか?」


 国の批判を言ってもらいたいように見える。

 確かに日本は色々な問題を抱えてはいる。

 でもそれはどの国も同じだ。

 問題はあったとしても日本は今はそこまで悪い国ではない。


「具体的にどこを変えるのがいいと思いますか? と言うのも冒険者制度の在り方よりも日々の訓練と沙雪を育てる事に意識が向いていまして日々自分が出来る事を行う生活でニュースに詳しくありません」

「例えばです、重い税金で冒険者が外国に移民している問題、そしてIT化の遅れなどになります」


「はい、税が重い問題については冒険者の問題だけではなく高齢化や過疎化問題など多くの事で国の支出が多すぎる問題につながると思います。バブルの時のような都市運営は難しいと思うので例えば少しずつ人の住むエリアを狭めるなどの大きな改革がいくつも必要な気はしていますがすいません、知識不足で詳しい事はよく分かってはいません。それともう1点IT化の遅れについてはデジタル庁が出来てまだ日が浅い状態です。数年後に気づけばよくなっている事を期待しているのと、1つ前の問題に絡む支出の削減にも貢献できることを期待しています」


「それは過疎地に人は住むな、そういう意見でしょうか?」

「いえ、お金があるなら自由に過疎地に住み、生活に余裕が無ければある程度インフラの整った場所に住むイメージです。もちろん私は専門家ではありませんのでもし記者の方でより良い意見があればどうぞ」

「いえ、ありがとうございます」


 あれ?

 何も無いのか?

 思う所がありそうに見えたけど?


 いまいち話が噛み合わない。

 いや、俺は独特だと言われる事がある。

 気にしてはキリが無い。


「次の方、質問をどうぞ」

「達也さんが冒険者に復帰する話が出回っています。ズバリ復帰しますか?」

「はい、復帰します」


「スクープだ!」

「新聞の一面は決まった!」


 ざわざわざわざわ!

 記者が騒がしくなり電話をする記者も出て来てみんなが何を言っているのか分からない状態になった。


 カシャカシャカシャカシャ!

 まぶしいフラッシュをしつこく浴びると他の記者から質問が飛んでくる。


「いつ復帰しますか!」

「冒険者になる目的を教えてください!」

「ダンジョンの取材をさせてください!」

「マウンテンカノンの次に狙うモンスターを教えてください!」


「指名した記者だけが質問をしてください!」


 多くの記者が手を挙げた。


「はい、質問をどうぞ」

「次に狙うモンスターを教えてください」

「次に倒すモンスターは分かりませんが倒す目標にしているモンスターならいます」

「ぜひそのモンスターを教えてください」


「デュラハンです」


 会場がざわつく。


 デュラハン。

 かつて日本最高のレベル7、黒矢と白帆を殺したモンスター。


 そして今だに討伐実績の無いモンスターだ。


 記者会見ではデュラハン討伐の質問でもちきりになって終わった。





 あとがき

 ここからしばらくバズリ散らかしムーブです。

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