第28話 次の休日の予定
ゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロ!
俺は今、石臼をひいている。
シャーロットの研究所兼食糧庫で。
「アル、お米をそのようにひいてどうするのですか?」
カリーナがひょいと俺の視界に入り、興味深そうに尋ねてきた。
「ええと、これから上新粉やもち粉をつくります」
「ジョウシンコ? モチコ?」
カリーナの頭からはてなマークがたくさん出ているようだ。
「アル、わたくしも詳しく知りたいですわ。それらはおそらくお菓子の材料になるのですよね」
「ええ、よくわかりましたね」
シャーロットも俺が作ろうとしているものに興味津々のようだ。
もともと、これらはシャーロットが食材にしようと開発されたもの。
自分が開発した食材をどのように活用されるのか、気になるのは当然だろう。
上新粉やもち粉ができれば、練り物や饅頭、お団子などを作ることができる。
和菓子の種類が増えると思うと、胸が躍り出してたまらない。
「アルの顔を見ていればわかりますわ。とても素敵な笑顔ですもの」
「え?」
俺は慌てて自分の顔を手のひらでぺたぺたと触る。
「うふふ。アルは本当に面白いですわね」
シャーロットはそう言いながら、微笑みを見せる。
それを見て、俺は首から頭のてっぺんにかけて熱が駆け上るような感じになった。
からかわれて照れたのか、それとも……。
いやいやいや、シャーロットは王女様。
俺は平民でシャーロットは高嶺の花。
俺にとっては分不相応だよ。
婚約者候補もいるし……。
モルブランの顔を思い出したら、ぶるぶると背中に悪寒を感じた。
その後は、黙々と作業を行い上新粉やもち粉を量産していった。
途中からはシャーロットたちも作業をしてくれたので、かなり捗った。
「アル、次の休日で構いませんから、わたくしに餡子とやらの作り方を教えていただけますか?」
作業がひと段落すると、カリーナが声をかけてきた。
「カリーナ、抜け駆けは許しませんわよ。わたくしも教えていただきたいですわ」
「シャーロット様が参加されるなら、わたくしも参加しなければなりませんね」
シャーロットとマドレーゼもやる気に満ちた顔で俺を見つめる。
餡子の作り方を知りたいと言うのなら喜んで教えたいが……。
「教えるのは構いませんが、どこでしましょうか?」
「アルの部屋でよろしいのではないですか?」
「それはいいですね」
カリーナの発言にシャーロットも同調して、何かを企んでいるかのような笑顔を見せる。
「俺の部屋ですか?」
「何か不都合がございますか?」
いや、不都合極まりない。
俺の部屋にシャーロットが来たとモルブランに知られれば何をされるかわからない。
俺の学院生活が地獄と化すことは明らかだ。
だが、カリーナとシャーロットの圧力がすごい。
「いえ、ないです」
結局、俺は圧に負けて了承してしまった。
別に研究所でも調理ができるはずだが、仕方がない。
「決まりですわね。十分な量の小豆をアルの部屋へ届けさせますから、来週もよろしくお願いしますわ」
「はい、わかりました」
そう言うと、シャーロットは職員に食材の移動指示を出し始めた。
本当に行動力がある王女様だ。
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