第14話 試験の結果発表
「おお、昨日の兄ちゃんか」
「早いな。試験の結果発表なら、もう掲示板に張り出されているぞ」
朝一番で王立製菓学院の門に到着すると、二人の兵士から声をかけられた。
昨日の今日で流石に門の兵士に警戒はされなかった。
「はい、ありがとうございます」
俺は会釈をして学院の中へ入っていく。
学院に来る学生はまばらで、特に貴族の生徒は見当たらなかった。中に使用人服を着た人がいたから、貴族の生徒は合格発表の確認は使用人に任せているのだろう。
門を潜って数分歩くと校舎が見えてくる。真正面に昇降口、その左手に掲示板がある。そこに今回の入学試験の合格発表が貼り出されていた。
自分の受験票を片手に俺は自分の名前を探す。
しかし、名前が見つからない。受験番号を探しても俺の受験番号がない。
……え、不合格?
その瞬間、ゾワっとしたものが身体中を駆け巡り、体温が急激に下がってくるような感じがした。
「な、なんで?」
「あら、貴方はたしか?」
そんな俺に赤髪ツインテールの美少女が俺に話しかけてきた。
「えーと、どちら様でしょうか?」
俺は余裕のない表情で尋ねる。
「失礼、わたくし、カリーナ・ビスコートと申します。お会いできて光栄ですわ」
カリーナは俺ともすでにお友達だと言いたげな表情をしている。
……え、本当に誰? 知らないんだけど……。
「えーと、誰かと間違えていませんか?」
「いいえ、アルフレッドさんですわよね?」
「はい、そうですけど、なんで俺の名前を知ってるんですか?」
見覚えがない、俺はカリーナとどこで会ったのだろうか。記憶を探っても全く出てこない。
「昨日の実技試験のとき、同じ組みでしたのよ。あれだけ目立っていたもの、すぐに貴方の名前を覚えましたわ」
……ああ、試験のとき、同じ組だったのか。でも、ケーキを作ることに夢中で周りの人の顔なんて覚えるどころか目にも入っていなかったよ。
「ごめんなさい。昨日はケーキを作るのに夢中で……」
「ええ、気にしておりませんわ。わたくし程度の実力では顔を覚えてもらえなくて当然ですもの」
カリーナはかなりのお嬢様のように見える。それなのに、この腰の低さはなんだろう?
「貴方が作った『ショートケーキ』は衝撃的でしたわ。わたくしもそれなりに自信があったのですけれど、教師の皆さんから貴方ほどの評価をいただけませんでしたわ」
カリーナは俺の次にショートケーキを提出したそうだ。受験生たちは俺に負けたくないと渾身の作品を提出したが誰も俺の評価を超えることができなかったらしい。
……そんなことが起きていたなんて、もう少し残っていればよかったかな?
「それでは、わたくしはこれで失礼いたします。これからクラスメートとして、よろしくお願いいたしますね」
……うん? クラスメート?
「あら、まだ合格確認されてませんの? あちらに上位の発表がありましたわよ」
カリーナはもう一つの掲示板に指を刺す。その掲示板は今見ている掲示板よりもかなり小さく、豪華な縁で飾られていた。
「ああ~」
思わず声がもれてしまった。
「うふふ」
俺が勘違いをして焦っていたことが伝わってしまって、カリーナに笑われてしまった。
「こういったことは初めてですものね」
カリーナは会釈をすると、右手を口に当て笑いたいのを我慢して帰っていった。
……恥ずかしい。もっと周りを見ておけばよかったよ。
俺は顔を赤くして両手を顔面に当てる。少しでも体温が下がればと思ったが、熱がなかなか下がらなかった。
なんとか気を取り直して上位の結果が載っている掲示板を見る。
先ほどのカリーナの順位は3位だ。
昨日出会ったシャーロット王女が2位。
そして、1位は……俺だ!!
「ふう~」
俺は大きなため息を吐くと、ぷしゅ~と身体中の力が抜けていった。
……あはは、合格だ。主席合格取れて良かったぁ〜。
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