第49話 黒竜のステータス


 周囲を見ていると配下が数人寄ってきた。

 どうやら無事だったのは、ノワリン、カゲイチ、黒猫獣人ちゃん、獅子獣人剣士と斥候数名だけのようだ。他はやられたらしい。


 ・・・大損害だ。


 スピードタイプ以外はブレスを避けれなかったようだ。獅子獣人剣士が避けれたのは、魔法の靴を装備していたからだろう。魔法の靴を装備していたのは獅子獣人剣士だけだ。聖騎士と女騎士は俺達が魔法の靴を取り上げてしまったからな。


 ブレスをくらった配下は魔石ごと消滅したようだ。

 やられた配下は、聖騎士、女騎士、女火魔法使い、Aランク冒険者6人、騎士団長、副団長、斥候3名の計14名だ。

 それ以外は収納していたのでやられていないが、人間の上位戦闘員がほとんどやられてしまった。大ショックだ。戦闘力だけなら黒竜が配下になればプラスだが、色々できる人間の上位陣がいなくなるのは痛すぎる。


「皆やられちゃったのね・・・」

「残念です・・・」

 二人も悲しそうだ。


 とりあえず戦力的に危険なので黒竜を配下にしよう。


 取り出し!


 ズン!


 巨大な黒い竜の死体が現れた。頭の先から尻尾まで30メートルはありそうだ。

 死んでいても凄い迫力だ。凄まじい威圧感がある。


 配下作成!


 巨大な暗く光る魔法陣が黒竜の死体の下に現れ、黒い光が死体を包む。


 黒竜がゆっくりと起き上がった。

 でかい!そして凶悪な顔だ。体は黒い鱗が艶やかに輝いていて美しい。

「うおおお!ドラゴンだー!」

 俺はドラゴンを配下にするという夢が叶ったことに感動して思わず声を上げた。


「凄い迫力ね!」 ヨゾラさんも思わず言った。

「うわぁ。」 ユリアさんも黒竜を見上げて驚いている。


 さすがドラゴンだ。痺れるほどにかっこいいぜ。

 さっそくステータスを見てみよう。


ーーーーー

名前 なし

種族 上級アンデッドLv1(ブラックドラゴンLv6)

年齢 322

職業 戦士Lv3

HP 59671/59671

MP 23756/23756

身体能力 15

物理攻撃 10131

物理防御 6381

魔法攻撃 8625

魔法防御 5250

スキル

 暗視

 飛行

 ドラゴンブレス

 状態異常無効

 闇魔法

 無魔法

 ダークオーラ

 身体強化

 再生

 死体喰い

状態

 ユージの配下

ーーーーー


 ・・・え?

 ちょっと強すぎないか?

 文字通り桁が違うぞ?


「どう?強い?」 ヨゾラさんも興味あるのか聞いてきた。

「物理攻撃が1万ありますね。」

「ええ!そんなに?!」 ヨゾラさんも驚いている。

「HPも6万あります。」

「凄いですね・・・」 ユリアさんは何か遠い目をしている。


 それ以外のステータスも二人に説明した。

 ちなみに身体能力は15しかないが、魔物の身体能力は参考にならない。身体能力15はレベル1の時の1.5倍というだけだ。魔物はレベル1から筋力などが人間より遥かに高い。ましてやドラゴンなら身体能力10で人間の身体能力1000くらいのパワーがあるかもしれない。いや適当だ。正直さっぱり分からないので魔物の身体能力の数値は無視でいい。


「凄いわね。頼りになるわ!」 ヨゾラさんは嬉しそうだ。

「亜竜ではない本物のドラゴンのステータスなんて聞いたことありませんよ。ドラゴンといえば伝説の存在ですからね!」 ユリアさんも珍しく興奮ぎみだ。

「ドラゴンはただの強い魔物じゃないんですか?」 俺は気になったので聞いてみた。

「全然違いますよ。物語や伝説に出てくるだけで、見たことある人もほとんどいませんし、遠くで飛んでいるのを見たという人がごく稀にいるくらいです。伝説では真の竜は、人間並みの知能があって、様々な魔法を使いこなし、竜どうしは竜語で会話するそうですよ。ブラックドラゴンなら亜竜ではない真の竜だと思います。」

 どうやらこの世界ではドラゴンはただの強い魔物ではなく特別な存在のようだ。人間並みの知能があるということは言葉は通じるのだろうか?


「俺の言葉が解るか?」 ドラゴンに聞いてみた。

 ドラゴンが頷いた。

「おお!」 言葉が解るようだ。

「人間の言葉は喋れるのか?」 

 ドラゴンは首を振った。喋るのは無理らしい。発音ができないのかな?

「人間の字は読み書きできるか?」

 ドラゴンは首を振った。そうか。じゃあこっちから一方的に伝えるだけだな。仕方ない。

 何で襲ってきたか聞こうと思ったんだが、まあ気に入らなかったとかだろうからいいか。

 イエスノーなら返事できるし特に困らないだろう。


「言葉は喋れないんですね。伝説では念話で人間と会話できたドラゴンもいたそうですよ。」 ユリアさんが教えてくれた。

「そうなんですね。残念ながらコイツは無理みたいです。」

 300年以上生きているようだが、もしかしてドラゴンにとっては300歳はまだ若僧だからできないとかだろうか? ありえそうだ。


 しかし、この前聖女たちの強さに驚いていたのに、こいつは遥かに強い。ここに来て強さのインフレが凄いな。こいつらレベルの戦いでは俺なんか掠っただけで死にそうだぞ。というか配下達はブレスに掠っただけで死んだのだろう。

 まあこいつがいれば、もう遠距離戦でも負けることは無いな。もう俺達が不意打ち以外でやられることはないだろう。

 魔王も倒せそうだ。 ・・・魔王はこいつより強いのだろうか。・・・強い気がしてきた。それに魔王は魔物の軍勢を率いるわけだから、ドラゴンも魔王の配下になるんじゃないのか? こんなヤツが敵に何体もいたらどうしようもないぞ。ヨゾラさんが将来最強になっても勝てるか怪しくなってきたな。やはり俺もがんばって死体収納で即死を狙うしかないかもしれない。デコピンで俺を殺せそうな相手と戦うのはいやなんだが・・・


 まあ先のことはいい。今のことだ。とりあえずこいつにも名前をつけておくか。

 こいつは今まで一番だったノワリンを遥かに超える強さだし、この先もずっと最強配下だろう。最強にふさわしい名前が良いな。

 うーん。よし!ここはシンプルにいこう。

「お前の名前はカイザーだ!」

 最強といえばカイザーだ!皇帝だ!絶対的存在だ!

「ぐわう!」 カイザーが変な声で返事をした。あんまりカイザーっぽくないな。まあいい。

「カイザーね。良いじゃない。変な名前じゃなくて良かったわ。」 ヨゾラさんが言った。

 いや俺は変な名前をつけたりしないぞ。

「カイザーちゃんですね。」 ユリアさんも言った。

 いやこんな大迫力の凶悪なドラゴンにちゃんづけはちょっとどうかと思いますよ。

 まあいいか。


 俺は満足気にカイザーを見上げた。



 俺は伝説のドラゴンを従える最強の死霊術士となったのだ。




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