第16話 魔王情報と野球帽忍者と農家
次の日、幸い雨が降っていて仮面は不要だったので、昨日買った普段着とカッパがわりのマントを着て図書館に向かった。一応青髪とジミーには剣を持たせた。
全員で入るのはお金の無駄かとも思ったが、油断しないと決めたのと調べものの手伝いもできそうだったので、利用料を払い4人で入ることにした。
まともな格好をしていても美人受付嬢のお姉さんには明確に避けられていた。自業自得だが非常に悲しい。やはりモテない男は異世界でもモテないのか。
図書館に入った俺はさっそく職員に魔王の情報が書いた本はないか聞いてみた。その結果何冊か教えてくれたので、それを読むことにした。配下たちには、俺が本を読んでいる間に死霊術士やネクロマンサーの情報を探させることにした。疑われないよう念のため死霊術士のことは職員には聞かないことにしたのだ。
魔王については、一応歴史的事実とされている過去の魔王の情報が分かった。
その記録によるとこうだ。
魔王は今から500年くらい前に北の山脈の向こうからやってきて、魔物の軍勢を率いて国を一つ滅ぼした。それを受けて危機感を持った各国は、それぞれバラバラに国の英雄率いる討伐軍を出撃させ色々な場所で戦った。その結果、魔物の軍勢とは互角に戦えたが、魔王が出てきた戦場では魔王が強すぎて英雄が殺され軍が崩壊するということが何度も起き、国がもう一つ滅びてしまった。さらに危機感を強めた各国は話し合い、各国の英雄を集結した対魔王英雄部隊と連合軍を結成し、頭脳系の将軍が連合軍を率いて戦い、魔王が出てきたら英雄部隊が魔王と対峙するという作戦をとった。それにより戦いは膠着し、新たな英雄が誕生したり英雄が殺されたりしながら、一進一退の攻防が続くことになった。戦いは永遠に続くかと思われたが、大国出身の優秀な将軍の策により魔王を孤立させることに成功し、英雄部隊と連合軍で魔王を取り囲み総攻撃をすることで、魔王を討伐することに成功した。
ということらしい。
魔王は魔物の軍勢を率いるんだな。まあ軍がないと人類を滅ぼすことなんかできないよな。それと魔王はゲームのように魔王城で待ってたりせずに戦場にも出てくる感じだな。まあ城に引きこもるような奴だったら人類を滅ぼそうなんて考えないだろうしな。あたりまえか。
ともかく分かったことは、魔王を倒すには軍も必要ってことだな。勇者パーティーだけじゃ難しそうだ。銀の球体に将軍って言われていた人もいたしな。死霊術士の俺は軍を用意する担当のうちの一人になるのだろう。
・・・しかし魔物のアンデッドで軍を作って操っていたら魔王の手下と間違えられそうだな。 ・・・いや、人間のアンデッドでも敵認定されるよな。 どうすればいいんだ? 両方から敵認定されそうだぞ。 俺が戦いに参加するのは無理なんじゃないか?
やはり俺は魔王戦は不参加だな。そうしよう。逆に俺が参加すると味方が混乱して負けそうだ。
よし!余計な事はしない!俺は自衛とダラダラ平和に暮らすことに注力しよう!
俺はスッキリした気分で図書館を出た。
ちなみに死霊術士の情報は見つかったが、「アンデッドを作り出す危険な職業」としか書かれていなかった。やはりイメージが悪いのは確かなようだ。ますます連合軍との協力は無理だな。
俺は、理屈をこねて自分を正当化してサボるダメ人間のような考えであることに気づかないフリをしながら、次の行動にうつった。
次は配下の服装を整えることにした。
鉄仮面のパーティーメンバーは、晴れた日でも活動できる装備が整ったが、他の配下はまだ晴れた日用の装備を用意できていない。
町の外では、雑用や周囲警戒等に他の配下を使いたいし、いざという時の総力戦のためにも、全員晴れた日でも行動できるようにする必要がある。
しかし鉄仮面を全員分用意するのはコスト的にも難しいし、在庫も無いと思うので、防具ではなくできれば服などで代用したい。
よく漫画ではバンパイアが日光を遮るためにローブなどを着ているが、正直フード付きマントやローブでは、強風や激しい動きで簡単にめくれてしまう。バレるリスクが高すぎると思う。リスク管理がなっていない。
そこで俺は考えた。日光が避けられかつ強風や激しい運動でも問題ない服装とはどんなものか。
ズバリ!野球帽をかぶった忍者である。
忍者の服と頭巾は激しい戦闘をするためのものなので、簡単に外れることもなく目元しか肌が出ていない。そして目元を日光から遮れるものといえば野球帽である。頭巾の内側に野球帽をかぶれば野球帽が簡単に外れることもない。完璧である。
まあ忍者服なんて売っていないので体の方は捲れにくい長そで長ズボンと手袋でいいとして、頭巾はどうするかな。
そういえば馬車に布が積んであったな。それで試してみよう。
雨も止んできた。これなら外で作業しても問題ないだろう。
さっそく町の外に出て以前野営した河原へ移動し、馬車を出す。商人が運んでいた布のロールを見るとベージュ色だった。ベージュの忍者か・・・・まあいいや。
手ぬぐいより一回り大きめくらいに切って忍者頭巾を再現してみる。
・・・忍者頭巾の構造なんて知らんぞ。適当でいいか。まず1枚をマスクのようにして首の後ろでしばる。そしてもう一枚でほっかむりをしてあごの下で縛って適当に整える。
マスクをした農民のできあがりである。・・・まあ動いても外れないしいいか。
よし!野球帽を買いに行こう!
・・・・・
服屋をまわったが野球帽は売っていなかった・・・
異世界に野球なんて無いしな・・・
まあいい適当な帽子で代用しよう!しっかり日差しを防げるつばがある帽子は麦わら帽子とテンガロンハットみたいなやつだな。キャスケットやシルクハットみたいなのもあるがちょっとつばが短いな。あとお嬢様っぽい帽子は結構実用性は高そうだが恥ずかしいから却下だ。
安いから麦わら帽子でいいか。頭巾の下につけることはできないが、あごひもを縛れば簡単にはとれないだろ。麦わら帽子と軍手風手袋と長そで長ズボンを人数分買おう。
さっそく配下に着用させてみた。
完全に農家だ!
なんか日本でもこんな感じの農家のおばちゃん見たことあるぞ!
気になる人は「農家 おばちゃん」で検索だ!
当初の予定とはだいぶ違うが・・・・目的は果たせたからいいか。
いずれ大金持ちになったら特注で作らせて野球帽忍者も実現しよう!
・・・金をかけるなら鉄仮面でもいいか。
とりあえずこれで人間の配下は全員晴れた日に出しても大丈夫だな。
だいたいの準備はできたので、しばらく冒険者として生活して様子をみよう。
俺は満足して宿への帰路についた。
気がつくと雨上がりの雲の隙間から、美しい夕日が差し込んでいた。
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