第13話 ゾンビと配下の把握


 少し休憩した後、馬車をアジトの外にだし、配下に価値のある荷物を整理して馬車に積み込むよう指示した。

 馬車にはもとから布やウサギの毛皮らしき荷物が積んであったがまだ余裕はあった。


 配下が作業しているのを見ながら、まずは被害者の遺体をどうするか考える。

 町に提出することはできないが、遺族に届ける方法はないだろうか?

 町の近くに置いてくれば誰かが届けるかな? でも目撃されたら完全に俺が犯人にされてしまうな。配下に運ばせてもいいが、万一配下が捕まったら俺の配下なのがバレてやはり犯人にされてしまう。目撃者がいないような場所においても気づかれずに魔物に食われそうだし。

 というか町に遺体を届けたとして遺族に届くのだろうか? 遺族が違う町に住んでいたらどうなるのだろうか。


 青髪に聞いてみた。その町にいれば届くが違う町の場合はその場で埋葬されて、商人なら商業ギルドに連絡がいくらしい。たぶん商業ギルドが遺族に連絡するそうだ。冒険者は冒険者ギルドに連絡は行くが特に何もしないらしい。


 冒険者の扱い適当だな! まあ冒険者が死ぬのは日常茶飯事だしね。しょうがないね。そういえば冒険者ギルドに遺族の連絡先なんて登録してないもんな。 


 遺族はそれで納得するのか青髪に聞くと、旅先で死ぬのはよくあることなので、遺族にとっては生きているかどうかが大事で、遺体はあまり気にしないらしい。


 ・・・魔物がいる世界だし、そういう文化なのだろう。


 じゃあ遺体を届けなくてもいいか、遺体より死んだことを教えてあげる方が大事ということだな。でもそれも難しいな。調べて教えに行くなんて労力はとてもかけられないし、遺族が見つかったとしても疑われるだけだしな。

 しかし死んだかどうか分からないまま待ち続けるのもかわいそうだな。

 配下アンデッドにして適当に理由を言って別れをつげてこいと指示するのはどうだろう。近くならそれでいい気がするな。あまり遠いようならリスクが高いから無理だが。


 色々考えたが、ぶっちゃけ本心を言うと商人の配下は欲しい。商人の知識やスキルは役に立ちそうだからな。

 言い訳も立ったし、これで心置きなく配下にできるぞ!クズっぽい思考な気がするが気のせいだ!親切心だ!善行だ!


 罪もない人の遺体をアンデッドにすることは少し心に引っかかるが、問題ないと自分に言い聞かせ、深く考えるのをやめた。


 さっそく外の適当な場所で配下作成を行う。


 取り出し!配下作成!

 暗く光る魔法陣が死体の下に現れ黒い光が死体を包む。



 商人はゾンビになった。



 ・・・なんでだよ! おかしいだろ!

 俺は頭を抱えた。


 心を落ち着けるため、しばらくつのっちを撫でてから、改めてゾンビらしき商人を見る。


 青白くボロボロの肌で白目をむいており、体に大きな傷もついていて、う~とかあ~と言いながらフラフラしている。どう見てもゾンビだ。


「俺の言葉が分かるか?」 声をかけるとこちらを見て立ち止まったが返事はない。しばらくするとまたフラフラ動き回っている。知能はほとんど無さそうだ。


 俺はステータスを見てみた。

 最大MPが1下がっており、配下のところに「ゾンビ 1」と記載されていた。間違いなくゾンビのようだ。

 

 よし!こうなればヤケだ!試しに全部配下にしてみよう!


 俺は手持ちの人間の死体をすべて配下にした。


 その結果、俺が来る前にすでに切り殺されて死んでいた冒険者3人と盗賊2人はゾンビになった。死体収納で殺した見張り2人は、これまでどおり上級アンデッドになった。


 う~ん。死体収納で殺すと上級アンデッドになるのかな。もしくは死体が損傷しているとゾンビになるのかもしれない。死体収納で殺すとまったく傷がないからな。

 もしかして死体収納を持っていない普通の死霊術士は、上級アンデッドはなかなか作れずゾンビばかりになるのではないだろうか? そうなると本来死霊術士はたいして強い職業じゃないのかもな。ゾンビばかりで収納もできないと超不便だろう。町で暮らすことすら難しそうだ。死霊術士にとって死体収納は大当たりのユニークスキルとういことだな。まあ即死効果は誰にとっても大当たりだが。


 一応ゾンビがどの程度命令をきくか試してみると、移動と攻撃くらいしか言うことを聞かないようだ。しかも少し時間が立つと命令を忘れて適当に動き出すようだ。力はそこそこあるが、動きが遅いのであまり強くなさそうだ。 ・・・足止めか囮くらいにしか使えないな。 ・・臭いし・・いらねえ。


 とりあえず勿体ないのでゾンビの装備などは外した。もちろん配下にやらせた。触りたくないからな。

 フラフラどっか行ってしまいそうなので収納しておく。


 配下にゾンビについて知っていることはないか聞いてみた。

 すると驚くことにゾンビに殺されるとゾンビになるらしい。


 ・・・マジかよ。バイオハザードまっしぐらだな。


 もうちょっと聞いてみると。噛まれただけでゾンビになったりはしないらしい。時間経過で治る程度の弱い毒をもっていて、毒で死んだりゾンビに殺された場合のみゾンビになるそうだ。ゾンビはなかなか死なないのでやっかいだが、動きは遅いので逃げるのは簡単らしい。なのでゾンビ大量発生とかは滅多なことでは起きないそうだ。大量発生が起きた場合は、だいたい他の強力なアンデッドの仕業だそうだ。


 感染力は映画とかよりは低そうだな。それでも被害は出るだろうし、ゾンビを生み出す存在は絶対忌み嫌われているだろ。

 配下作成でゾンビを作って配下解放でゾンビをポイ捨てする死霊術士なんて、絶対ヤバいぞ。増々職業がバレたらマズいな。


 ゾンビは二度と収納から出さないかもしれない。何なら誰かに浄化してほしいまである。



 最大MPが無駄に下がっただけじゃねえか!その辺に解放するわけにもいかんし!

 遺族に伝える計画も台無しだ!もういいや!俺は知らん!



 よし!別のことをやろう!配下全員の職業を把握しよう!

 紙とペン持ってこい! 無い? 商人の荷物にはあるんじゃないか? あったな。よし!

ひとりずつ職業を教えろ!


 その結果俺の配下は強い順に


 斧士+盗賊 1(斧男)

 戦士 1(青髪)

 盗賊 5

 大工 1

 無職 6

 ゾンビ 6

 ハイイロオオカミ 1(グレイ)

 ツノウサギ 1(つのっち)

 馬 1(馬車)

 合計 23


 となった。

 俺の配下も大分増えてきたな。

 

 というか大工とかいたのかよ。なんで盗賊やってんだよ。大工やれよ。


 聞いてみるとアジトの家具は大工が作ったらしい。以外と盗賊でも大工は役に立つようだ。

 なんで盗賊になったのか聞くと、大工はそもそも一人ではろくに働けない職業らしい。仕入先や仲間がいないと家は建てられない。一人では柱一つ用意できないし運べない。そりゃそうだ。

 もともと地道に頑張って大工店を持つまでになったが、酒と女とギャンブルにハマって借金で店が潰れ、評判が悪かったため他の大工店にも雇ってもらえず盗賊になったそうだ。


 ふ~ん。人手はあるし、将来俺の家を作ってもらおうかな。家の材料は買わなければいけないだろうから、すぐには無理だけどな。その辺の木を切ってもすぐには使えないらしいしな。木を乾燥させたりする必要があるらしい。


 馬車を作れるか聞いてみると、設計図と道具と材料と場所と人手があれば作れるそうだ。

 うん、必要な物が多いな。買った方が早そうだ。


 とりあえずやることも終わったので、つのっちを撫でながらダラダラしよう。グレイもそばで待機させて雰囲気を良くする。かっこいいグレイが近くにいるだけで気分が良くなるのだ。


「ぶぅ」撫でるとたまに鳴くつのっちに癒される。


 腹が減ったので何かないか聞くと、簡単な料理なら料理担当が作れるらしい。無職だから大した腕でもないが、料理店で働いたことがあるそうだ。

 

 さっそく作らせて食べることにした。酒もあると言っていたな酒も出させよう。


 そんなに良い材料もないようで、たいして美味くもなかったが、野営の食い物よりは大分マシだった。

 適当に料理をつまみ、つのっちを撫でながら酒をのみ、気分よく夜を過ごした。



 遠くから魔物の遠吠えがきこえる。森の夜が静かに更けていった。




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