第6話 宿屋とギルド資料室
夕暮れの町を歩き、大通りから少しそれた位置にあった紹介された宿屋についた。
ベッドのマークの看板がぶら下がった味のある(ボロい)外観の建物に入ると、例のごとくおっさんが出迎えてくれた。宿屋の主人だろう。看板娘などはいないようだ。
まあ、現実には荒くれものの冒険者が泊まる宿に美人を以下略QEDだろう。
荒くれものが集う場所に美人を置くには、荒くれものがビビッて手を出せないくらいの後ろだてが必要だからな。ヤクザとかね。まあ安い宿屋にはいないだろう。
・・・冒険者に偏見を持ちすぎだろうか?
宿屋は一泊素泊まり20ルクス朝晩の食事付きで25ルクスだった。多分安いのだろう。
食事付きを頼み、ヤーバンさんの紹介だと言うと、初日だけワインを一杯サービスしてくれた。
食事は肉と野菜の入ったミルクシチューとずっしりしたパンで、そこそこの味といったところだ。ワインの味はよく分からないが、無料なら悪くない気がする。
俺は、たまにうまいものが食えれば、普段の食事にはうるさくないタイプなので問題ない。
部屋に入ると狭いが掃除はちゃんとされていて棚とベッドがあるシンプルで必要十分な部屋といったところだ。
検証や考えることもあったのだが、色々あって想像以上に疲れていたのか、ワインを飲んだこともあり、すぐに眠ってしまった。
翌朝他の宿泊客が動き出した音で目が覚めた。
良く寝たせいかスッキリしており、井戸のそばの洗い場で顔を洗って朝食をとる。
朝食はあっさりしたスープとずっしりしたパンで、やはりそこそこの味だ。
特に宿に不満は無かったので、とりあえず5日分の料金を支払い部屋を確保することにした。
しいて言うなら風呂が無いし、トイレが水洗じゃないのが不満だが、高級宿以外はどこも同じらしい。勝手に洗い場で体を拭けという感じだ。
宿に貴重品以外の荷物を置いて、冒険者ギルドの資料室に向かう。まだ90万円分近い金があり、急いで金を稼ぐ必要もないため、情報収集を優先することにしたのだ。
朝の冒険者ギルドはそこそこ賑わっていた。真面目に朝から出勤する冒険者がこんなにいるとは以外だ。荒くれものの不良は午後からじゃないのか?
・・・・やはり偏見だったのだろうか?
資料室に向かう途中でヤーバンさんを見かけたので、挨拶と武器屋と宿屋のお礼を言うことにした。
「ヤーバンさん!おはようございます!」まずは元気に挨拶だ。
「おう!ユージか!今日は依頼をうけるのか?」
「いえ。まずは資料室で調べものをしようと思います。それと良い武器屋と宿屋を紹介してくださってありがとうございました!」そして元気にお礼を言う。
「おうそうか!若いのに良い心がけだな!分からないことがあったら聞きにこいよ!」
「はい!依頼を受けるときは相談しようと思いますので、よろしくお願いします!」そして次の約束を取り付ける。
「おう!がんばれよ!」そして長話はせずに立ち去る。完璧だ。・・・いや何がだよ。
しかしここは文明度の低い世界だ、最低限の人脈がないと簡単に排除されかねないからな。
いざという時は「俺はギルドのヤーバンさんと知り合いなんだぞ!」と言ってトラブルを切り抜けるのだ。 ・・・すごくザコキャラっぽいな。しかし命がかかっているのだから仕方がない。
しかしこの世界にきて名前を聞いたのも好感度を稼いでいるのもヤーバンさんだけだぞ。 俺のヒロインはヤーバンさんなのだろうか・・・・それは勘弁してほしい。
いずれは女性との出会いもあるはずだ。・・・まだ慌てる時間じゃない。
・・・できればヒロインはアンデッドじゃなければいいな・・・
ギルドの2階へ上がり資料室と書いている部屋に入った。
入ってすぐのところにカウンターがあり、爺さんがデスクワークをしていた。
出入りの際はギルドカードを提示する必要があるらしい。持ち出しは禁止。破損したら弁償とのことだ。
学校の図書室のような感じで、本棚と机と椅子がある。
とりあえず目についた資料を読むことにするか。地理や歴史は後回しだな、ステータスやスキルについてを優先しよう。あとは魔物情報も見ておこう。
こういう図書室的な場所来ると眼鏡が似合うあの子を思い出すな。
もう二度と会うことはできないのだろう・・・・
話したことも無い相手を思い浮かべて感傷に浸った気になった俺は、遠い目をして窓の外を眺めた。
窓の外には朝日に照らされた小鳥が楽しそうに飛び回っていた。
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