EP 08 拠点完成…とこれからの事
「よし…これで建物と内装もバッチリだな…」
一体あれからどれだけ時間が掛かったのだろうか、切り出した材木を並べながら木製の建物をプラモデルのように組み上げ…木材をガイド通りに加工しベッドや内装までをも作り―――そして傍ら。
「よいしょ~!!」
ドコン!っと気持ちのいい音を響かせる女が一人。
彼女は永遠に木々をなぎ倒し丸太のストックをナビの指示通り集めている所だ。
というか、よくあれだけ長時間木をなぎ倒しているのに疲れないな!? 超人なのか!?
本当に魔法職なのかも怪しくなって来た。 そのうち筋肉魔法とか使うんじゃないだろうか?
――――――――それから数時間後。
すっかり日も落ちて来たので俺達は自分達の家で過ごす事にした。
「うわぁ~! すごぉ…ふかふかのベッドだぁ~!!」
と喜ぶ由紀さん。 テンションが上がっている所悪いんだが…まだ身体も洗っていないのにベッドの上で飛び跳ねるとは何事か!
「それにしてもすごい感じじゃん! 丁度二部屋あって…おまけに、リビングまで! ひろーーい!」
それに関しては俺も驚きだったな…まるで初めから2人で住むことが解っていたかのように、部屋は丁度2部屋作られる仕様になっていた。
内装は残念ながら豪華なものではないが、簡易的なトイレとシャワーが設置されているくらいであとはテーブルに椅子、部屋にはベッドがぽつんと一つあるくらい。
「さて…飯を食らったら次は水汲みに…」
「あ、そうだった。 水はタンクの方に入れておいたよ!」
「そうかそうか…ん?」
聞き間違いだろうか、水はタンクの方に入れておいた?
そう、なにを隠そう簡易的なトイレとシャワーは外の給水タンクに水を入れないと使えない設備なのだが…あのタンクは軽く1000リットル近く入る筈。
それを俺が作業をしている間に補充していた?
しかし、どう考えても近くの湖までの距離はかなりある…もしや!?
『魔法とは便利なものですね。 ものの数十分で”真水”を1000リットルも充填できるとは――――』
ずるい…魔法はずる過ぎる!!
由紀の表情をみるにそれほど疲れる作業でもないんだろうが…1000リットルの真水を召喚できるだけでもこの世界の人間共はいい意味でイカレている。
それからシャワーを浴びた俺達は一息ついたあと、リビングの椅子に座り1日を振り返っていた。
ちなみに俺達は祐樹の教えで変えの着替えを拝借していたので、今は綺麗な服に着替え済み。
とはいえ、流石に水だけのシャワーだとすっきりした気がしないな…昔のおれならこれでよかったんだろうが、日本での生活が長すぎたせいか満足できない自分が居た。
「それにしても異世界か~…信じられないよね~。 まさか自分たちが異世界転移に巻き込まれちゃうなんて」
「異世界転移か…」
確か由紀はそういったジャンルの小説が好きだって言ってたな。
ロボット物の漫画や小説を読む事はあったが…そういった類のものは全然読んでこなかったせいで実感がない。
おまけに俺は既に”転生”という類稀な現象を経験しているわけだし。
なんというか、スーパーロボットが出てくる作品はよく見ていたが…ミリタリー系のリアル志向のロボット物を見るトラウマを思い出してしまうせいで見れなかったしな…ガ〇ダムとかそれだし。
「けどさ、なんか楽しい感じだね!」
なんというか、どこにいってもブレないあんたは最強だよ…と言ってやりたり気分になった。
これからどうするべきか――――俺達は話し合う事にしよう。
――――――――――――――――
「なるほど…言うと思った。 それが由紀のしたい事なんだな?」
俺は半分諦め気味な表情で真剣な表情をする由紀にそう告げる。
幼少のころからその頑固さは育ての親であるシスターお墨付きと言われる程だ。
「親友を救う為か…だがこの”世界”に居るとはまだ解らないんだぞ? それでもか?」
「うん…それでも生きたい。 彼女は私を救ってくれたもう一人の”恩人”だから。 それに”あの時”隣のクラスからも悲鳴が確かに聞こえた。 だから…」
確かに、俺達が転移に巻き込まれるタイミングで隣のクラスからも悲鳴が聞こえて来た。 が、同じ学年の連中が同じ世界に転移したとも考えにくいものではある。
しかし確証もないので、あとは自分の目で確認しに行く他ないのだろう。
「もう一人の恩人か―――――」
”あの時”の事を言っているんだろう。 だからこそ、俺には止める理由がなかった。
それに、由紀のあの表情をみて到底止められるとは思えない。
「解った。 出来る限り、支援はする…だが―――」
「うん。 解ってるよ! ここを離れられないって事は理解してる…だから、ここで待ってて。 帰る場所がないとさ!」
「…帰る場所ねぇ。 ―――したいようにしてくればいいさ」
外の世界は危険なんだぞ! とはいえ、俺も外の世界の状況を知りたい…しかし、彼女と一緒に行くにはまだまだ時間が掛かりすぎる。
だからこそ俺はここに残って拠点の強化を急いだほうがいいのだろう。
心配は心配だけどな!
それから数日の事である。
荷物をまとめた由紀が拠点を後にしたのは―――しかし。
「やっべぇ…食料は1週間分もあれば十分とか、格好つけていったが…大丈夫だよな?」
『………なんとかするしかないでしょう』
そりゃそうだ。
異世界転移に巻き込まれた俺は元・宇宙戦艦の艦長! と、ついでに巻き込まれた元・勇者の男は国王をぶん殴って異世界を自由に生きることにした。 @kisisama4
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