第5話 盲腸と免疫力
高校生の頃盲腸になり、虫垂を切除した、私の妹。手術は当然成功したのだが、退院後から、毎月のように風邪をひくようになり。今も体調不良で寝込むくらいには、芳しくない状態が続いている。
どこかの記事に書いてあったが、「実は長年不要とされていた虫垂は、免疫力を維持するために必要不可欠な器官だった」説が浮上しているらしい。
まだ周囲に一人しか盲腸経験者がいないので何とも言えないが、少なくとも私は、その説は本当だと思う。
20歳の妹が、80歳の祖父母より病院に通っているのだから。
◇◇◇
「自分は長生きできないと思う」
「どうしてそう思うの?」
「こんだけ風邪ひいたりしてるから。まあ、長生きしたいとも思わないけど」
つい最近、妹と交わした会話を思い出す。社会人になり、毟られる税金に絶望するのはもはや通過儀礼。生命維持が関の山で、趣味や夢、家庭は遥か遠くにある。その現実に、とうとう妹も立たされてしまったのだ。
「自分は何のために生きているのか」。病は気からならぬ、気は病から。変えられない現実、削られる命。私は今日も妹を憂い、惰性で生きている。
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