ある場所

「お願いはやくこっちにきて!」



「誰かいるんだね、任せなさい!」



「アーロンさんっ!」



アーロンは勢いよく飛び出して、すぐ隣にある家にモリを持ちながら突っ込んで行った。


フィアナは驚いた。アーロンには恐怖という感情が無いのかとありえないことを疑ってしまうほど、それほどに逞しく勇敢だった。



「1人で行っちゃだめです!」



フィアナは後に続くようにして破られた家の扉から侵入をした。



「っ、なんだ?誰もいない?」



「どういうことでしょう?」



遅れて恐怖に怯えながらゆっくりと家に入ってきたのは先ほどの少年だった。少年が困惑する私たちに向けて説明を始めた。



「お父さんとお母さんはほんとについさっきまで一緒に居たんだ!信じて!」



「それは信じるけど、」



「僕はちょうど家の後ろ側にいたんだ、薪をちょっと。でもそうしてたら急に家の中で叫び声が聞こえて、なんだろうって思ってたら中にいたお父さんから隠れなさいって言われて………」

「それで隣の家にこっそり来たんだよ、そしたらなんとなく察したんだ、何があったか。」



「じゃあ相手は殺人目的ではなくあくまでも誘拐が目的でしょうか?」



「恐らくそうでしょう、この短時間での誘拐はかなり手慣れている、テロリストか何かでしょうか。」



抵抗したら殺される、とかそんなところかな。でも誘拐が目的だとして誘拐してどうするんだ?どこに連れて行くつもりなんだろうか。この土地を占領することだけが敵国の目的ではないのか?



「おい醜い民族ども。」



「わっ!!」



「誰だ」



「やめろ!」



少年の首を絞めるようにして乱暴に持ち上げているのは背の高い大人。破られた扉の付近に立って、少年に黒い何かを頭にくっつけて喋っている。



「アーロンさん、あれは………」



バンッッ



ああああっ!耳が………やぶれる、なんだこの音、何かが爆発しているような、火かなにかか。



「拳銃だ、やめろ!!」



先ほどの大きな音で抱えられた少年は目を閉じて気絶をしてしまった。


床を見れば薄茶色の物体がころころと転がっている。あれが頭の中に撃ち込まれれば、即死であることくらいは容易に想像できた。



「頼む、やめてくれ。その子はなんの罪もない子供だぞ!」



「この国の存在、お前ら民族の存在が我が国には邪魔でしかないのだよ。最近増えてきているんだ、国を出て我らの国に支配されていると勝手な噂を立てるやつがな。」

「だから隠蔽するんだよ、お前らをある場所に連れていかなきゃならないんだ。」



「さあ、全員おとなしく捕まれ。」

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