間話 冒険だ!(フェルナンド視点)

 今日は朝からザワザワしてみんなが忙しくしていた。何があるのだろう?


 今日は大好きなお兄さまと、今まで体調を崩しお部屋で過ごしていたお姉さまが回復し遊んでくれるようになったので2人に遊んでもらおうとお部屋の方に行こうとした。


 中庭にお兄さまとお姉さまと護衛の人、そしてアグリ様がいた。


 アグリ様はすごいのだ。転移魔法で違う場所に連れて行ってくれるのだ。ずっと前に、カイルとレオンがいる邸にあっという間に転移してしまったのだ。


 どうして中庭に、お兄さまとお姉さまとアグリ様がいっしょにいるのだろう?


 トコトコと近づいて行った。


「おにいしゃま、おねえしゃま、これからあそんでくだしゃい。でも、どちらかにいかれるのでしゅか?」


 困った顔をしたお兄さま。何かある?僕を置いてどこかに行くのかな?


「フェル、これから学園行事に行かなければいけないのだよ。学園行事だよ。だから遊べないのだよ。フェルごめんな」


 お兄さまは僕の目線に合わせてしゃがみ込み、遊べないことを謝ってくれた。学園の行事ならしょうがないよね。しょんぼりした。


「フ、フェル、帰ってきたら絶対遊ぼう」

「うん」


 僕の耳は感知できる範囲で遠くの声も聞くことができる能力がある。まだ未熟だから時々遠くの声を勝手に拾ってきてしまう耳。うるさい時もある。だから自分の意思で自由自在にできるように訓練をしているのだ。その耳にこれからモンテスキューという言葉が聞こえてきた。


「モンテスキュー?カイルとレオンのおうち?」

 お兄さまとお姉さまが焦っていた。じーっと2人を見つめるとお兄さまが僕の目線でまたお話ししてくれた。


「ごめん、フェル。これから学園行事だが、モンテスキュー侯爵家に行くのだ。ルルーシェは学園の薬師・錬金コースの野営練習でモンテスキュー侯爵家に行くのだよ」


「どうちて、カイルとレオンのおうちでやがい?れんちゅうするのでしゅか?」


「モンテスキュー家でキャンプ体験をするのだよ。こういう家ではなくて、布でできたテントというものを張って設営練習したり、家で食べるようなご飯ではなくて、自分たちでご飯を作ったりする練習をするのだよ。だから虫とかいっぱい出てくるかもしれないし、家のような快適な場所ではないところで訓練なんだよ。学園行事なんだよ」


 だんだん涙が出てきた。僕も行きたい。虫さんたちがいっぱいいるなんて楽しそう。


「ぼ、ほくもいきたい、グスッ、むしさんたちとあそびたいでしゅ。カイルとレオンにあいたいでしゅ。ぼくもいっしょにあそびたいでしゅ」


「フェル、遊びに行くのではないんだよ。泣かないでおくれ。あー、では、カイルとレオンがいなければアグリと帰ってくるでいいか?2人がいなかったら帰るのだぞ。いいか?フェル」


「あい。ふたりがいないときはかえりましゅ」

 2人がいればいいなぁ。一緒に虫取りしてあそびたいなぁ。お願い2人ともいて下さい。


 アグリ様の転移魔法ですぐモンテスキュー侯爵家に着いた。見回すとカイルとレオンが家族と一緒に出迎えてくれた。手を振ったらニコニコして手を振り返してくれた。

 お兄さまを見上げて、どう?と首をコテンとして投げかけてみた。


「あー、アイリ嬢、これがまた来てしまったのだ。君らの弟達と遊ばせてほしいのだが、いつもすまん、お願いできるだろうか」


「ごめんね、アイちゃん。私とカイがアグリ様の転移魔法で行こうとしているのがバレちゃって、連れてくるしかなかったのよ」


 カイルとレオンのお姉さまに聞いてくれて、一緒にキャンプ?をすることになった。嬉しい。


 それから3人で行動していた。お姉さまの野外設営でテントを張る実習の説明を一緒に聞いたり、一緒に紐を引っ張りテントを作って楽しんだ。僕も学園に入ったら野外活動でテント作りをしたり、外でご飯を食べたりするのだなぁと思ったらワクワクしてきた。


 だんだん難しい話になってしまい、全然わからなかった。


 そうしたら、カイルとレオンのお姉さまが、護衛騎士に頼み、水を張ったり、なんだかわからないものを設営していた。なんだろう?


 カイルとレオンに連れられてテントに入り、水着?というパンツに履き替えさせられた。さっき水を張ったものにカイルとレオンが飛び込んでいった。2人は僕に水をかけてきた。一緒になって水に入り、気持ちよかった。


 今度は2人が大きな物のところに行って、階段みたいなものを登り、キャーーーーと言って滑って水の中にドボンと入って行った。護衛騎士たちが下で待っているので溺れることはない。なんだこれ。ワクワクしてきた。いつもカイルとレオンの家はワクワクが多い。


 僕も2人に連れられて上に行った。


「フェルくん、ここにしゅ、すわって、てをはなして、すべるんだよ」


 フェルくん。僕たちだけの時はそう呼んでもらう。フェルナンド殿下様なんて長すぎる。あー、ワクワクしてきた。手を離すんだよね。

 キャーーーー、ドボン。

 アハハハハハ。笑いが込み上げてくる。気持ちがいい。楽しい。僕の護衛騎士も水着に着替えて下で待っていた。抱き上げてくれて、一緒に笑い合った。


 何度も何度も滑ったり、美味しいジュースを飲んだりした。


 今度は午後のお昼寝。お昼寝をしたら、この前ここでやったバーベキューだということだ。また美味しい肉やピザが食べられるのかな。

 テントのベッドで3人で並んで寝た。はじめは3人でクスクス笑い合ってジャレていたが眠くなって寝てしまった。


 起こされ、テントの中で遊べるゲーム、オーク落としや今流行っているリバーシの小さい子版をした。他にもおもちゃがいっぱいある。オーク落としは1番上にオークの顔が乗っていた。小さいハンマーで胴体部分を落としていく。難しい。

 護衛騎士たちも一緒に遊ぶようお願いした。みんなでする方が楽しい。このテント内は笑いに溢れている。


 僕のお姉さまとカイルとレオンのお姉さまがバーベキューの準備ができたから迎えにきてくれた。僕はお姉さまと手を繋いで、外に用意されたバーベキュー会場にきた。カイルとレオンと3人でお肉を頬張った。美味しい。

 今度はピザ作り。僕はお兄さまといっしょに作った。形が丸くならず、いびつだけど焼いてしまえば同じだ。


「おにいしゃま、おやさいがおおいです。おにくとちーずがいっぱいがいいでしゅ」


「ダメだぞ、野菜も一緒食べるのだぞ。この野菜とチーズの組み合わせはおいしいぞ。それにこの照り焼きチキンをいっぱい乗せよう」


「あい。おにいしゃま、たのしいでしゅね」


「そうだな、水遊び楽しかったか?ヒヤヒヤしたぞ、あの滑り台で滑って水の中に入っていったのは。でも,楽しそうだったな。今度、モンテスキュー領土に行くから、そこには海という大きな水たまりがある。楽しみだなぁ」


「おにいしゃま?ぼくもつれていっていただけるのでしゅか?」


「あっ!あっいや、そうだなぁ。それもキャンプだからどうかなぁ。父上に聞いてみないとだな」

 またお兄さまは僕に内緒で楽しいことをする計画があるのだ!プンプンなのだ。いつもお兄さまばかりズルい。そしてお父さまも今回は関与しているのか?


 みんなでバーベキューをして、お兄さまやお姉さまのお友だちとあそび楽しかった。


 お兄さまが僕のところに来て、帰る時間だといった。??お泊まりだよね?悲しくなってきた。


「おにいしゃ、ま、グスッ。お、おにいしゃまやおねえしゃまがおとまりするのに、グスッ、なぜぼくだけがかえらないと、グスッ、いけないのですしゅか。うわーん」


「ほら、フェル、母上が待っているぞ。フェル早く帰ってこないかなぁと思っているぞ。な、アグリと母上のところに帰ろう。なっ、フェル」

  「ヤダヤダ、みんなといっしょにいるぅ。カイルとレオンといっしょにいるのぉ」


 そしてカイルとレオンのお姉さまが僕が泊まっていいと言ってくれた。ルルーシェお姉さまといっしょにお泊まりができることになった。


 朝早く起きて虫取りに行くので、僕たちは早く寝た。また、3人で一緒のベットに寝て、明日の虫取りのことを聞いた。カイルとレオンは何度か行ったことがあり、その話を聞くとワクワクしてきた。早く朝にならないかなぁと思っていたら、ぐっすり寝てしまった。僕、泣かなかったよ。ふふん。僕だって成長しているんだよ。


さぁ、冒険だ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る