N交通[M漁港行き]
@tsutanai_kouta
第1話
20年ほど前、ヤバい仕事を経験した。
守秘義務を課せられたけど、もう昔の話だしね。今も同じ“儀式”してるか分かんないし、何より、こんな話、誰も信じないでしょう。
20年ほど前、ある地方都市でバスの運転手をしてたんだけど、人づてに隣のN市でバスの深夜運行を依頼されたんだ。
深夜に1便だけ。それも他言しないって誓約書まで書かされた。
でも驚くほどの高額を貰えたし、若かったから好奇心もあって仕事を受けたんだよ。
当日、まだ日の高いうちにN市内のホテルに来るよう指示されたんだけど、行ってみたら数名のスーツ姿のスタッフが待ち受けていて「質問するな」「こちらの指示通りしろ」と強く言い渡された。誰もが真顔でさ、正直ヤバいことに首突っ込んじゃったな・・・て思ったよ。
最初にホテル内の施設で散髪、髭剃りをされて、取ってあった部屋で風呂に入って丹念に体を洗うよう言われた。そして風呂を出たら、ルームサービスで豪華な食事が運ばれてきたんで有り難くいただいたけど、さすがに酒はなかったね。
それから用意されてた高そうな黒のスーツに着替えて声がかかるのを待った。
あたりが暗くなった頃、部屋にお迎えが来たんだけど、まずアイマスクをされたよ。そして手を引かれて車に乗り、何処かに連れて行かれたんだ。そう、バラエティとかで芸人がされるやつ。全然笑えなかったけどね。
車が止まり、アイマスクを外すよう言われたんで従うと、そこは山のふもとにある小さな神社の前でバスも用意されてた。
というかバスに神主さんが
バスに乗り込む前にルートの説明を受けた。山の中の舗装道路を進み、中腹のバス停で乗降口を開けて一分間停車。それから漁港にあるバス停まで行き、同じように一分間停車する。それだけで特に難しい仕事じゃないんだけど、説明してくれた人が続けて「運行中、後ろを振り向くな」「窓を絶対開けるな」「それと会話するな」て噛んで含めるように言われたよ。
何だよ!その怖いルールは!と思ったけど、その時は血の気の引いた顔で何度も頷く以外なかった。
渡された白い手袋をはめ、バスの運転席に座って右側にある窓を見たら、ゾッとしたよ。「窓を絶対開けるな」て言われたけど、開けるなもクソも窓が開かないよう溶接されてたんだ。
バスを発車させ、バックミラーを見たら、神主さんと数名のスタッフがお辞儀してた。
ぶっちゃけ生きた心地しなかった─。
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