2話 ザリスとの再会
エリーナが同級生たちに「測量機」を配り終えると、
トレーニング場にザリスと彼の部下である黒人男子がやってきた。
「よう、エリーナ。みんなで特訓か?」
ザリスは前の季節のエリーナとの戦いで負った傷がまだ完治していないようで、片足を引きずりながらも、彼女に向かって挨拶をする。その声は以前と変わらず挑発的だが、どこか憎めない愛嬌も感じられた。
「ザリス...。腕と足、もう大丈夫なの?」
エリーナはザリスの怪我を気遣いつつ、彼に「測量機」を手渡す。
隣で見ていたカーラも、心配そうな表情を浮かべている。
「ふん、この程度の傷、俺には何てことないさ。それより、この『測量機』ってのを俺たちにも配るのか?」
ザリスは受け取った「測量機」を興味深そうに眺めながら、エリーナに問いかける。
彼の言葉には、以前の敗北を認めたくない男の子特有の意地っ張りさが滲んでいた。
「ええ、これは獣人王の命令なの。みんな嫌がってるけど、逆らえないわ。」
エリーナは溜息をつきながら説明する。ザリスは「測量機」を装着しながら、
不敵な笑みを浮かべた。
「ふっ、俺はこんなもの着けなくても強いけどな。でも、エリーナ...。」
「何よ?」
エリーナが怪訝な表情で見つめ返すと、ザリスは真剣な眼差しで続ける。
「俺の部下がやったことは、領主様に告げ口しなかった。
俺の責任にもなるからな。治ったらもう1回お前に挑むぞ!」
ザリスの言葉に、エリーナは驚きを隠せない。
もし父親に知られていたら、
部屋に1か月監禁という厳しい罰を受けていたのはエリーナの方だ。
そう考えると、ザリスの配慮に感謝の気持ちが湧いてくる。
「そ、そう...。ありがとう、ザリス。」
エリーナの言葉に、ザリスは少し照れくさそうに頬を掻いた。
カーラが2人を見て、にやけた表情を浮かべる。
「次は負けねぇからな!必ず俺がお前より強くなって、リベンジしてやるからな!」
ザリスは真っ赤な顔で叫ぶと、部下の黒人男子を連れてトレーニング場を後にした。その後ろ姿は、以前よりも頼もしく見えた。
「ふふ、ザリスったら素直じゃないのね。」
カーラがクスクスと笑う。
「う、うるさいわね!あいつは私を庇ってくれただけで、別に深い意味はないわ...。」
エリーナは慌てて否定するが、カーラにはお見通しだった。
「はいはい、わかってるわ。」
「...そうかもしれないわね。でも、あいつとは今度こそ決着をつけないと。」
エリーナは「測量機」を見つめながら、静かに呟いた。
ザリスとの再戦を心待ちにしている自分がいることに、
彼女は今まで以上の高揚感を覚えていた。
(ザリス...。あなたとまた戦える日が、楽しみだわ。)
少女の瞳に、新たな決意の炎が宿るのだった。
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