第7話 決着!ザリス
くっ、どうにかしないと・・
エリーナは打撃を全力で振れていないことに葛藤していた。
なぜなら、同級生レベルの子供に当てたら死んでしまうかもしれないからだ。
だから、たとえ相手が男子最強のザリスと言えども8割ぐらいの速度で攻撃していた。
エリーナは知らないが、ザリスの家系の遺伝子は文明があった祖父と祖母の代に
エリーナの祖父や祖母と同等近い価格で取引されていた。
それも世界1の記録の100m金メダリストの祖母と世界的な
格闘技団体のUFOで無敗のヘビー級王者だった祖父の血を引くのだ。
だから、見かけの割に女子の中で早い方のエリーナですら全力を出さないとまず打撃を当てられる相手ではなかった。
だが、エリーナの決断は全力で打撃することではなかった。
沸騰したように躍動する弾丸のごとき肉体でエリーナが地面を蹴り、突撃!
胸ポケに挿した黄色い花がぼとりと落ちる。
さながら、イノシシの突進のようだ。
体格で勝るエリーナは、そのまま突進で吹っ飛ばし、押し倒すつもりだった。
が、なんとザリスが両足を踏ん張り、両手で突進を止める体制だ。
エリーナの伸ばした両腕を正面から正対して掴みながら、腰を落とす。
10キロ近くの体重差のある、しかも100mを12秒で走る爆速の突進。
軽く吹っ飛ばされるのが当たり前だが、腰を少し浮かされながらも、
地面から足を離されずに、砂地を摩擦してブレーキを掛け続け、なんと2mしないうちに突進を止めてしまった。
信じられないという表情のエリーナ。その表情のまま、うっかり無防備になる。
「スキだらけだぜ!」
にやりを笑いながら、ザリスはスキを突いて、右ひざを突き上げた!
パァンと音が聞こえるぐらいの右の膝蹴りが。あばら骨の位置に打ち込まれた。
「がっ!」
骨がきしむ強烈な衝撃にエリーナの体が持ち上げられて揺らぐ・・
が、足を抱えて倒れたのはザリスの方った。
「おー、おれの膝がぁああああ!!」
膝蹴りを打ち込んだザリスの膝が逆にどす黒く青くなった。エリーナのあばらは皮膚が赤くなって、わずかに血が出た程度。ダメージが無さそうにスクッと立ち上がる。
そして、とどめとばかりに倒れているザリスの腹向けて、無表情で強烈な踏みつけ!この体制で回避出来ないザリスは両腕でガードする。
ぺキッと音がしながら、ザリスは体ごとゴロゴロと転がった。
「おー、俺の腕がぁああああ!!」
今度は折れた腕を抱えこんで、空を見上げてあおむけになる。
あおむけのザリスを見下ろしながら、エリーナは言う。
「私1回も子供を殴ったこと無かったんだけど、骨の密度が人の数倍あるんだよね。練習中の打撃で大岩にひびを入れたら、それで絶対に人を殴るなって親父に言われた。でも、親友のカーラのためだから、もういいわ。眠ってて。」
そう言うと、顔をかばって無防備の腹に筋肉の塊の太い脚を支える
岩のような硬さと重さのかかとを何度も何度も振り下ろした!
「ぐぼっ!」「あうっ!」「うぁっ!」「あぶ・・」「ごぽっ・・・」
肉に岩を落としたような鈍い音を何度も何度も立てながら盛り上がる腹筋の踏ん張りを何度も何度も貫通し、ザリスは胃液をまき散らして失神して、動かなくなった。
「腹と足がちょー痛い。あばら、少しだけ効いたかな。ザリス、いちおう男の子だったね。」
エリーナは体中の赤い痣と傷。腹と太腿の青い痣を気にしながらも
早歩きでカーラと男子達の元に向かった。
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