第5話 『地獄に仏』

「やっと山のふもとまで来たぁ」


 私は拾った木の枝に体を預けながら、万感ばんかんの思いで呟いた。ここまで長かったねぇ(×_×) しかも、山裾に村らしい集合住宅まであるじゃない。


「助かったぁ……事情を話せば、一晩くらい泊めてくれるかな? 今は手持ちがないから、お礼は後でしよう」


 けど、私の淡い期待はあっさりくつがえされた(><)どこを見ても、人っ子一人いない。

 まさか『廃村』ってことはないよね(-ω- )?


「誰だ? そこで何をしている?」


 わわっ、びっくりしたぁ!? 振り向くと、高身長の男性が私を見据えていた。ワイルドな顔立ちで、迷彩服にスカーフを巻いていた。


「えっと、私は怪しい者じゃ……」


「ほぅ? どー怪しくないか説明してみろ」


 そー来ましたか( ̄▽ ̄;) 確かに今の私は裸足に髪はボサボサ、着ているドレスもボロボロだ。

 だって、しょうがないじゃん。着のみ着のまま、追い出されたんだからさ……(T^T)


 あれ……? 目の前がボヤけて……もう一週間くらい、まともな食事をしてないからね。うぅ……もうダメ(≧ヘ≦)


 私の意識は、そこで途絶えた……


 ◇ ◇ ◇


「うぅ……アップルとパイナップルを組み合わせたら、ペンパイナッ○ーアッ○ーペン?!(・◇・;) ?」


「おい…………『大丈夫』か?」


 あれ…………? 目を開けると、見知らぬ天井が見えた。さっきの男性が、私を『心配』そうに覗き込んでいた。


「ここは……? もしかして、あなたが助けてくれたの?」


「まーな。最初は『密猟者』の類いかと思ったが、どうやら違うみてぇだ。で、大丈夫・・・なんだな?」


 やたら『大丈夫』を強調するね……頭を打ったと思われてるのかなσ(^_^;)?


「とりあえず、助けてくれてありがとね。あなたの名前を訊いてもいいかしら?」


 男性は『ゲイル』と名乗った。この村出身で、密猟者をパトロールする『レンジャー』を生業なりわいにしてる。


 私も彼に、簡単な自己紹介をした。


「ヒメナか。そんな格好で彷徨さまよってたとなると、深い事情があるみてぇだな?」


「……まぁ色々とあってね」


 その時、私のお腹がキュルルルとなった。私は顔を赤くして、毛布を頭から被った(*/□\*)


「なんだ? 腹が減ってるなら、そー言えよ。大したもんはねーけどな」


 ゲイルは「ちょいと待ってな」としばらく席を外し、やがて戻ってきた。最初はぶっきらぼうかと思ったけど、紳士じゃん(*^^*)


 ゲイルが運んできた料理は、パンにチーズをまぶしたもので、温かいスープ付きだった。


 私は「いただきます」と人目もはばからず、夢中で食べた。いやぁこんなに『美味しく』感じるなんて、人生初かも♪


「ごちそうさまぁ! 生き返ったよぉ」

「……よっぽど、腹が減ってたみてぇだな」


 地獄に仏とは、まさにこの事だね(^_^)


「そういえば、この村の人ってゲイルしかいないの?」

「んなわけねーだろ。こっちもちょいと、込み入った事情があってな……」

 

 ゲイルによると、この村は『疫病』が流行り、村のほとんどの人は一日中寝込んでる。


「……そうだったんだ」


「ああ。こんな小さな村じゃ、ちょっとした風邪でもスグ蔓延はびこっちまう。ポーション程度じゃ効き目も薄いし、かと言ってエリクサーを買う余裕もねぇ。どーしたもんだかねぇ」


 眉間にシワを寄せるゲイル。ここで私は、あることが閃いた。


「ゲイル。もしかしてその流行り病、私がなんとか出来るかもしれないわ」

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