第30話 決戦☆夏休み開始!

 苗蘇高校びょうそこうこうは夏休み期間に入った。


 由佳ゆかは、いつもなら夏休み初日は開放感に溢れ、心が浮き立つような歓喜に満ちていたが、今回はいつもと違い、気が重くなっていた。

 苗蘇神社びょうそじんじゃ一条神社いちじょうじんじゃの神様がおられなくなったままで、お賽銭箱に1万円を入れて、願い事をした人も誰か判らず、さらに今日から開催される夏祭りの準備で朝早くから学校に行かなくてはならなかったからだ。


 学校に行く前に一条神社に立ち寄ると、すでに狗巻いぬまきが境内に佇んでいた。


「由佳、おはよう」


 狗巻が先に由佳に声を掛けてきた。


「おはよう、狗巻。今朝も早いね」


 由佳は、ここ数日、狗巻が自分より早く一条神社にきていることに狗巻の心痛を感じていた。

 一条神社の神様は安倍晴明だが、狗巻はその安倍晴明の子孫で、しかも安倍晴明その人の生まれ変わりだと言われている。

 自分にとって、そんな縁の深い神様がいなくなったことが、少なからず狗巻の気がかりとなり、つい一条神社に早く来てしまうのだろう。

 由佳は、狗巻のためにも早く神様が元に戻って欲しいと強く思った。


 そうした思いから由佳は狗巻の手を握った。


 その手から、狗巻の不安が少しでも自分に流れ移れば、その分、狗巻の負担が軽くなるのではないかと思ったのだ。

 考えるより先に、体が動いた行為だった。


 狗巻は急に由佳が手を握ってきたので、最初は驚いたが、由佳の善意をすぐに感じ取り、優しく手を握り返した。


 その時、狗巻は由佳の手がとても小さいことに気付いた。

 もちろんそれは由佳の手が小さくなったのではなく、自分の手が大きくなってしまったからだが、由佳の手が柔らかく、繊細で優美な細指であることを認識した。


 狗巻は、自分が一条神社の神様がいなくなったことに、少なからずショックを受けていることはわかっていた。

 その為、自分の周囲に霧が立ち込めるように、不安に包まれていると感じていた。

 残念なことに、由佳が手を握ってくれても、その不安は晴れなかったが、周囲を曇らせる霧の先に、一点の明かりが灯ったような感覚を覚えた。

 それは由佳が灯してくれた明かりだった。

 その明かりに、狗巻は大いに勇気づけられた。


「由佳、ありがとう」


 狗巻は心からの感謝の気持ちを言葉で伝えた。

 その言葉に答えるように由佳はしっかりと狗巻の手を握った。

 こうしてふたりはお互いに手を握り合った。


「狗巻、必ず神様を見つけようね」


 由佳は自分に言い聞かせるように決意を述べた。

 その決意に、狗巻もしっかりと頷いて答えた。





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お手て繋ぐとかそんな甘ずっぺぇことしたいでやんすねぇ~

_(┐「ε:)_


また、そんなことが読み手に伝わる甘ずっぺぇ文章が書きてぇでやんすぅ~

…φ(:3」∠)_


それはさておき──


今回のお話はどうでしょうか?

ちょっとは甘酸っぱさがありましたでしょうか?(汗


もし宜しければ、ご意見ご感想、または評価などいただけますと嬉しいです。

宜しくお願い致します。

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