第7話 叡斗のギフト

「オレってさー、ほら、一度見たり読んだりしたものって絶対忘れないだろ?」


 叡斗えいとは一度見たものを写真を撮って保存するように、一瞬で記憶してしまう完全記憶能力フォトグラフィックメモリー能力者ギフテッドだった。


 但し、この事はあまり口外はしていない。


 叡斗は教科書や参考書を一度見れば隅々まで詳細に記憶してしまう為、テストの点数は軒並み満点ばかりだったが、あまりに正答率が完璧すぎた為、不正行為カンニングを疑われた事があったのた。


 その為、この事は一部の仲の良い友達にしか打ち明けていなかった。


 そしてテストでは満点にならないよう、1~2問はわざと間違ったり、答えを記入しないようにしていた。それでも成績はダントツで学年一位なのだが。


「叡斗のその能力は本当にうらやましい」


 由佳ゆかはつくづくと言った様子でため息をついた。

 確かに叡斗の能力があれば辛い受験勉強などしなくて済むからだ。


「それで叡斗君。もう一つのギフトというのは、どういうものなんだい?」


「ああ。それなんだけど。なんかオレ、相手が自分を好きかどうかわかるらしい」 


 叡斗がそういうと「きゃあっ!」という悲鳴が教室に鳴り響いた。

 見れば岩倉いわくら木野きのが、ふたりとも椅子から転げ落ち、床に尻もちをついていた。

 核心を突かれてよほど驚いたようで、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。その上で、必至に「ち、違うよっ!」と手を振って否定して見せているが、そうではないことは一目瞭然だった。


「───というのは冗談で」


 叡斗の質の悪いユーモアに一同はずっこけた。

 特に狗巻いぬまきは岩倉と木野が気の毒だと憐れんだ。


「もう。ふざけてないでどんなギフトか早く言ってよ」


 かえでがしびれを切らして叡斗に催促した。


「うーん。ごめん。やっぱりこの話はナシ」


 叡斗がそう言うので、一同はまたもや「ええー!?」と声を揃えた。


「なんかこのギフトのことは言わない方がいいような気がした」


「なんだよそれ」


「ここまで期待させておいて~」


「ひ、ひどいぞ叡斗君」


「でもなんか叡斗らしい」


 そういって由佳はクスクスと笑った。


 こうして叡斗の2つめのギフトの話は、岩倉と木野に多大な迷惑をかけただけで終了した。

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