こいつらは霊視ストーカーだ

読者諸氏は霊視ということをご存知だろうか?妻帯者なら知っていようが全女性の三分の一近くが有する特異能力のことである。もっとも霊視と云っても天眼の如き超能力ではなく、感作、あるいは憑依に近いもので、憑く相手の眼を通して者を見、耳を通して聞き、剰え霊視被害者の思念というか想念さえも感得する始末なのだ。そんな馬鹿なと思うだろうがところが事実なのである。なぜ判るか、それはきゃつらが私の引っ越し先、移動先に悉く追いかけて来るというその事実と、合わせてこちらは長年に渡ってその被害に会ってみて、ようやくと云うか、徐々に気付くことなのだが、この与太の霊視クソ女どもはこちらの想念に〝語りかけてくる〟のである。始めの内はまったく気づかなくてそれこそ左右、粉動されっ放しだった。なぜかと云うにこいつらは憑依する当人(ここではつまり私)が尊敬する人物、あるいは崇拝する人物になりすまして、それを装った思念をこちらに伝えて来るという悪さをよくするし、あるいは甲乙二者選択の折りなどにはこいつらの都合のいいように、逆からすれば私が困るような、行き詰るような方向でもって私を誘導したりもするからだ。例えばこんなことがあった。就職で甲乙二社選択の折り一方はこいつらのストーカー行為を受けにくい環境で、いま一つは寮付きだが土建・不動産・建築・警備業関連の、こいつらの親分が顔を効かせやすい業界だったのだが、始め前者に傾いていた私を『そんな、車や公園で仮寝をしながら仕事するより、寮に入って畳の上で寝た方がよっぽどいい』なる言葉を想念で送りもし、同様なる私自身の思念を装いもしたのだ。

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