【書籍化】勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。
かませ犬S
第一章 過去の因縁
0.プロローグ
───どうやら
その事を俺に告げたのはこの世界に転生するきっかけとなった神ミラベル。
俺は所謂転生者というやつだ。前世において普通の営業マンをしており、トラックに跳ねられて死亡というテンプレみたいな流れで転生した。
「マジで?」
「マジよ」
本当に混じっているのか問返せばキリッとした顔で言われた。
どうやら本当に魔王がパーティーに混ざっているらしい。
「どういう目的かは分からないけど、貴方の仲間の中に魔王がいるわ」
「それが誰か分かったりする?」
「あのね、それが分かったら最初からそいつが魔王だって言ってるわよ」
使えないなこの
「今、使えないって思ったでしょ?」
「いえ、そのような失礼な事考えた事もないです」
ミラベルが深くため息を吐く。明らかにバレてはいるが、追求してこないならそこまで怒ってないだろう。
「本来私たち神は下界に干渉出来ない
こうやって貴方のパーティーに魔王が混じってるみたいな助言をする事自体ご法度なのよ」
「転生する時言ってましたね」
「そうよ!でも、せっかく転生させた人間に危険が迫ってるのを放っておけないからこうやって伝えてあげてるの!」
彼女は神と言っても立場で言うと中間管理職くらいの立ち位置になるらしい。
当然彼女の上がおり、不用意に規則を敗れば罰は与えられるらしい。
ミラベルは優しい
そんな彼女に使えないなって少しでも思った事を恥じないといけない。
「仲間の中に魔王がいるのか」
「そう言ってるでしょ」
「ミラベルが言ってるから正しい事だと思うけど、今まで一緒に旅してきた仲間を疑うのは心苦しくて…。」
「そうね、けど魔王が混じっているのは本当。疑わないのは自由だけど、信じた仲間に裏切られて殺されるなんて目も当てられないわよ。魔族が狡猾で油断出来ない相手って分かってるでしょ?」
「ですね…」
仲間の中に
受け入れ難い現実だ。
国に招集され、魔王討伐の旅に出てはや3年。
各地で暴れる魔物や、暗躍する魔族の問題を解決しながら敵の本拠地たる魔王城を探している最中である。
3年一緒に旅してきたら、
「誰にも相談出来ない、ですよね?」
「少なくとも私以外にはね」
もう一つ辛い事がある。パーティーに魔王が混じっている事を仲間や、他の誰かに相談するのは止めた方がいいとミラベルが言っていた。
魔王は『読心』の魔法が使える。早い話、相手の心が読める。もし、相談した相手が魔王だったならそのまま殺されるだろうし
他の仲間に相談して、その仲間の心を読まれたら魔王に殺されて終わりだと。
「貴方には私があげた
「そうですね」
彼らは決して弱くない。勇者パーティーを名乗ってるから当然他の者達より強い。それでも魔王が使う読心を防げる者はいないというのがミラベルの見解だ。
「貴方に分かり易く説明するけど、貴方たちパーティーみんなのLvが65って所よ」
「なんか微妙だな」
「だいたいそれくらいよ。それでも強い方だから安心しなさい。
で、貴方達の敵の魔王はLv100って所ね」
「離されてるけど、微妙に届きそうなLvが嫌なんだが…」
「実際強くなれば近付くし間違いではないわ。で、分かる通り魔王とLvが違うから1対1で闘っても魔王に勝てない」
「だろうな」
「魔王と闘うにはLv差を補う位に強くなるか、仲間との連携が大事よ」
「けど、その仲間の内に魔王いる」
口に出した言葉がずっしりとのしかかった。魔王と闘うには仲間との共闘が大事なのに、その仲間に魔王がいて誰を信じていいか分からない。
信じた仲間が魔王だったなんてのもある。疑った仲間が魔王じゃなくて、間違って倒してしまったら取り返しがつかない。魔族は狡猾だ。その事がよく分かる。
「貴方がやるべき事は一つよ。仲間の誰が魔王か、しっかりと証拠を見つけた上で魔王以外の仲間に打ち明けて共闘する!
そして魔王を倒す。それしかないわ」
「仲間を疑って魔王を探す…、か。」
「何度も言ってるけど、魔王の読心が効かないのは貴方だけ!確実に魔王だって証拠がない限りは誰にも相談しちゃダメよ!
心が読まれてバレたらそこで終わりなんだから!」
「分かった。心苦しいけど、誰が魔王か探すよ」
証拠を集める。名探偵になんてなれる訳ないが、俺なりやらないといけないだろう。やらないと知らない内に仲間がやられてる可能性もある。
証拠がいる。魔王だと確信出来るだけの。こいつが魔王だと仲間に信じて貰えるだけの。考えたら胃が痛くなってきた。こんな事になるとは転生する前は考えても無かった。
「たまに私もこうして夢の中に出てきて、相談に乗るわ。
進捗があってもなくても言って。1人で抱え込んだらダメ。相談出来る相手はここにいるから!」
「ありがとうミラベル。弱音を吐いていいならもう胃痛で死にそうなんだ」
「弱音を吐くのが早すぎるわよ!」
パシンっと頭を叩かれた。初めて会った時からそうだったが彼女はキレッキレなツッコミをするなーと場違いな感想を浮かべる。
この世界に転生して28年。ミラベルと会うのは何時も夢の中だ。下界に干渉するのはご法度だなんだと言いながらこうして干渉してくる。夢の中で会ったのだってもう100回は超えてるだろう。
心配なのだろう。優しい彼女はこうして俺の事を気にかけてくれてる。俺の心が折れそうな時も支えてくれたのは彼女だ。感謝しかない。
弱音を吐くのはここまでにしよう。胃は確かに痛いが仲間の為に動けるのは俺だ。
「そろそろ夜も明けるわ。またねカイル」
「ああ!また会おうミラベル!」
「頑張ってね!」
ニコリと笑う彼女の笑顔が眩しい。
彼女の姿が薄れていく。もう直ぐ朝だ。俺の意識も時期に覚醒するだろう。
魔王の疑いのある
1人目は勇者パーティーの中核にして聖剣の使い手、勇者エクレア。勇者を疑っていいのかが、根本的な問題だ。無口で今まで旅してきて一度も声を聞いた事がない。ちなみに一度犯罪を起こして捕まっている。
2人目は数多の魔法で皆をサポートするパーティーの火力担当、魔法使いサーシャ。アルコール中毒で何時もお酒を飲んでいる。1人で行動するのが多い気がする。後お酒を飲んで暴走して捕まっている。
3人目は罠の感知から解除さらに地図のマッピングまで行う探索のエキスパート、盗賊ダル。勇者パーティーの皆が少なからず名の知れた実力者である中彼女だけ無名。経歴がやや怪しい。国宝を盗もうとして一度捕まっている。
4人目は俺と同じ前衛担当、素早い身のこなしで相手を翻弄し殴り倒す格闘家トラさん。虎の獣人で顔はやや厳つい。可愛い男の子が好きで持ち帰ろうとして何度か捕まっている。
5人目はパーティーに必要不可欠の回復役、味方の治癒や強化を行うエルフの神官、ノエル。パーティーメンバーには心を開いてくれているが、人間嫌いを公言しており会話どころか一緒の空間に居る事自体が嫌らしい。貴族のお偉いさんを殴って捕まっている。
───うん。全員が可能性あるな!
起きたらまず情報を整理しよう。
焦る必要はない。こいつが魔王だと確信出来る証拠を必ず見つけよう。
「仲間も守る為に、仲間を疑え」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます