第3話 薬の別の使い方
オーズ氏はすぐに博士に電話した。
「博士! 大成功だ!あなたの薬は凄い!ありがとう!」
「そうですか! それは良かった。その薬は植物が枯れるその瞬間まで綺麗な花を保ち続けるでしょう」
「そうか! ありがとう、ありがとう、本当にありがとう!」
「いえいえ、私も良い研究が出来ました。また何かありましたら、ご連絡を」
オーズ氏はその後身の回りの花に薬を使った。花々は美しい姿を彼に見せた。
「素晴らしい発明だ」
オーズ氏は満足げに花々を愛でる。そしてある時、気がついた。
(これをもし…人間に使ったらどうなる…? 花と同じように若返るのではあるまいか)
オーズ氏はそれを確かめるために、薬を一滴飲んだ。
(これでわしも若返るはずじゃ)
一晩を寝て過ごし、彼は翌日鏡で自分の姿を見た。
「これは…凄い…わしも若返っておる! やったぞ!」
確かに彼の姿は二十代の頃のものに戻っていた。
肌の張り、筋力、全てが二十代の頃に戻っているのだ。
「無理だと諦めていたものが、見た目だけでも取り戻せたぞ!」
その日以来、彼は自信を取り戻した。
彼は会社の社員達に最初こそ驚かれたものの、若者とも気負いせず話せるようになった。
それから何ヶ月か経ち、彼は一人の女性と出会った。
二人は次第に惹かれ合い、恋人同士となった。
「これもあの薬、博士のおかげだ」
オーズ氏はハンム博士に感謝した、願いを聞いてくれたこと、こんな出逢いの機会を与えてくれたこと全てに。
やがて二人は夫婦になった。しばらくは二人だけの時間を過ごしたが、妻となった女性が、
「あなた、そろそろ子供を作らない? 私は欲しいわ」
と言った。
(そうだった、わしは幸せな家庭を築くのが夢だったんだ)
「そうだな、そうしようか」
それからしばらくの時が流れた。
「うーん、どうしたものだろう」
夫婦二人はあらゆる治療を試したが、一向に子供が出来る気配が無かった。
「すまぬな、家族みんなで庭の花々を眺めてみたい言っておったのに」
オーズ氏は妻にそう言う。
最初こそ、不安定になっていた妻も、
「いいの、あなたといれば幸せだもの」
と元気を取り戻していった。
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