甘え下手な幼馴染はもう耐えられない

真夜ルル

第1話

 アカネ──僕の幼馴染だ。

 と言っても小学生の頃から、部活や補習授業でだけ話したような関係で決して仲は良くない。

 話すと言ってもバレーのことや苦手な英語のことだったりで個人的なことは全く話題にした事がない。

 だからアカネの交友関係はおろか家族構成すらもわからない。

 なんならクラスすらも覚えていない。

 その程度の友情とも呼べない腐れ縁だけで繋がっているような関係。

 しかし、僕としては深く関わり合わないアカネの在り方が苦手ではない。

 どちらかというとあまり自分の事を語りたくない僕のような人間にはアカネのような浅い友情の方がありがたいと思ってしまう。

 僕の冗談をサラッと受け流すような塩対応をするアカネは。

 だからその日の補習授業で僕は冗談を言ってみた。

 いつものように塩対応をするんだろうな、と予想していた。

 しかし──

「せっかく誘ってくれたんだし、まぁ、いいけど?」

「はぁ?」

「なんていうか私も観ようと思っていたし」

「……」

「だからさ、はぁ……バレーの大会、一人で見るの寂しかったから一緒に観たい」

「え……」

 アカネは照れくさそうに頬を赤らめて嬉しそうに笑っている。

 ──おかしい!

 あまりの違和感に何かの罰ゲームなのか、と疑ってしまった。

 何せ僕の知るアカネとはこんな可愛い生物なんかじゃないからだ。

 いつもだったらきっと──

「え? 嫌だよ。めんどくさい」

「おいおい特等席だぜ?」

「それよりもここの問題分からないから見せて」

「はぁ相変わらずだ」

「なるほど、believeね」

「そうbelieveです」

 ──って感じにスルーされるはずなんだけど……何かあったのか?

「……?」

「何その顔」

 少し睨むような顔でアカネは僕の額に人差し指をぶつけた。

 これっぽっちも痛くなかったけれど、この場というか僕を支配するアカネの違和感のせいで大袈裟に驚いてしまい椅子から転げ落ちた。

 尻餅をついた僕を先生は眠そうな眼をして「何してんだボケ」とヤンキーのような口調で怒鳴った。

 気がつけばアカネは黙々と机に向かっていた。

 側から見れば僕が謎に椅子から落ちたように見えていたのかもしれなかった。

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