第2話 出会いは突然に

 ◆

 私は、ファミレスに着くと、4人がけのテーブル席に少女を座らせ、向かい側の席に座った。


 店内は、割と綺麗な感じで、どこにでもあるごく普通のありふれたファミレスという感じであった。


 ただ、少し気になったのは私たちの近くのテーブルの上で小さいおじさんたちが、何やら紙屑のようなものを使って、キャッチボールをしていたことだ。

 もちろん、それらはこの世のものではないためあまり、関わらない方が良いだろう。

 まあ、少しユーモラスな感じでなんだか可愛いかったのだが。


 メニューを開くと若い女性の店員さんが水を持ってやって来た。

「ご注文はお決まりでしょうか?」


 げっ、この人肩に何か憑いてるよ。


 私は、その店員さんの肩に、顔面蒼白で、目が空洞な男がオブさっているのが目に入った。


 これは、小さいおじさんと違ってかなりヤバめのやつだね、、、


「ハンバーグランチを一つと、コーヒー一杯をお願いします」

 私は、適当にハンバーグランチと自分が飲むためのコーヒーを注文しておいた。


「ハンバーグランチに、コーヒーですね。

 少々お待ちください」

 店員さんはそう言いながら、紙にメモを書くと、一旦その場を離れていった。


 しばらくすると、私が注文したものが運ばれてきた。


「お待たせいたしました、ハンバーグランチにコーヒー一杯でございます」


 先程の店員さんはそう言いながら、テーブルに私が注文したランチを置いた。


「ご注文は以上でよろしいですか?」


「はい、大丈夫です」


「では、ごゆっくり」

 店員さんは、最後にそう言うと、そそくさと私のテーブルを離れていった。


 相変わらず、男は店員さんの背中にがっしりと張り付いているようであった。

 教えてあげた方が良かったのかなあ?

 でも、余計なことを言うと、店員さんから怪訝に思われるし、何より私自身が危ないかもしれない。

 なので、私はそっとしておくことにした。



 私は、運ばれてきたランチを目の前の金髪少女の前へ移動させる。


 すると、金髪少女はすんすんと匂いをかいだ後、パッと跳ね起きた。


 そして、物凄い勢いで目の前のランチを食べ始めた。

 私は、そのあまりの勢いに、少し圧倒されかけた。


 アレは、よっぽどお腹が空いていたのかな、、、


 目の前の少女はハンバーグランチを食べ終えると、コップの水を一気に飲みほしてから口を開いた。


「助かったぜ、ありがとな。

 あまりの空腹で死ぬところだったぜ」

 すると、彼女はお礼を言ってきた。


「いえいえ。

 ところで、どうしてあんなところで倒れてたの?」

 私は、謙遜した後、先程歩道の真ん中で、倒れていた理由を訊ねてみた。


「昨日の夜公園で変なやつに襲われて、そいつと戦ったら力尽きて倒れたってところだな」


「襲われた?誰に?」

 私は一瞬、彼女の言ってることの意味が分からなかった。

 いったいどうしたのかなあ?


「そうだなあ?確か、巫女服を着てる奴だった気がする」


「どうしてなのか、理由は分かる?」

 きっとこの少女には、余程の事情があるのであろう。理由によっては何か力になれるかもしれない。


「なんか、解体工事中のビルをぶっ壊しちまったからかなあ」

 すると、彼女からはまたもや突拍子もない答えが返って来た。


「ん、ビルを壊したって?

 そんなのありえないよ」

 私は、思わず突っ込んでしまった。

 ん、ビルを壊した?

 私は彼女の言ってることの意味がますます分からなくなってきた。


「てへへ」


「笑って済むようなことじゃないよねえ」


「ま、いいじゃん」


「で、どうするの?」


「やっちまったもんは、しゃあないだろ」

 なんだか訳が分からなくなってきた。実際にそんなことがあり得るのだろうか?

 私も目には見えないものが見えるため、不思議なことには慣れてるつもりではいるが、そんな私からしても彼女の話はかなり突拍子のないものであった。


 でも、なんだか悪い人では無さそうな気がする。


 すると、金髪少女は右の腕時計を覗き込む。

「おっと。これから制服取りに行かないといけないんだった。食事奢ってくれた件サンキューな」

 彼女は少し急いだような口調で、用事と私へのお礼を告げた。


 そして、彼女は席を離れると、嵐のように立ち去っていった。


 名前、聞きそびれちゃったなあ。

 でも近いうちに、どこかでまた会うような気がする。



 ◆

 私は、アパートに着くと、大家さんに挨拶してから鍵を貰った。大家さんは優しそうなおじいさんであった。


 それから、私は大家さんから色々と説明を受けた後、自分の部屋に向かった。


 私の部屋は、階段を上がって、2階の右から2番目が私の部屋だ。


 私は、自分の部屋の前まで来ると、鍵を開けて中へ入る。

 すると、中は思ってたより広く綺麗な感じであった。

 部屋には、キッチンにベッド、バスルームにトイレなどが、完備されていた。


 そして、部屋の中央には、私が家から送った荷物が入っているダンボールが積まれていた。


 あたりには、3つくらい人魂が漂っていたが、どうやら害はなさそうである。

 私は、来る前に変な霊がいたらどうしようかと心配していたが、大丈夫そうでなによりである。


 私は、段ボールを開けて、荷解きをしているうちに、あたりは日が沈みかけ夕方になっていた。


 意外と、荷物の整理をするのって疲れるんだなあ、、、


 その後、私は家から持ってきた食材で簡単な野菜炒めを作ったり、ご飯を炊いたりした。

 初めて一人暮らしをする学生は、料理を作ったりするのに、苦労するのだろうか?

 私は実家でもたまに一人で料理を作っていたりしたため、そこまで苦労はしなかった。


 私は、テーブルに野菜炒めと、ご飯を置置くとそれを食べ始める。


 うん、我ながら上出来だ、、、


 そして、食事を終えて皿を片付け、風呂に入った後、アイスを2本食べた。

 いつもなら母親から何か言われるのだろうが、一人暮らしだからこれぐらいいいよね?


 その後、pチューブでお気に入りのバンドの曲をいくつか聴いてから、明日の入学式に備えて早めに寝ることにした。


 いよいよ、明日は入学式かー。

 なんだか、少し緊張するなー。

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