狂った世界の真ん中で〜霊感のある私は、異世界な町で能力バトルに巻き込まれました。

龍星群

序章

 ある春の夜の公園。

 そこは、ほんのりと暖かく、まばらに灯る電灯が滑り台やブランコなどの遊具を照らしていた。

 そんな中、一人の少女がポツンとベンチに腰掛けていた。長めの金髪に、黒いパーカーを羽織った少女である。

 こんな、時間にどうしたのだろうか?これくらいの歳の少女ならもうとっくに家に帰っている時間帯である。


 少女はパーカーのポケットからスマートフォンを取り出し、画面を覗き込んだ。


「もうすぐ夜の12時だけど本当に出るのか?」


 少女はそう呟くと、再びポケットに携帯を仕舞い込んだ。


 それから、少女は5分くらい何もせずにぼーっと座り続けた。そして、少女は家に帰ろうと思ったのか、ベンチから立ち上がろうとした時だ。


「グェーーーッ」

 その時、何かがうめくような声が少女の耳に入ってきた。

 少女がふと視線を上げた瞬間、何か黒い物体が飛んできた。


 次の瞬間。少女の足が一瞬だけ光り輝き、大きく跳躍ちょうやく。そして、間一髪で回避した。


 少女が降り立つと、円筒型えんとうけいの胴体に目が一つ。大きく裂けた口に、頭には2本のツノが生え、大きな手が細長い腕に付いている化け物がいた。


 そして、少女は驚きの声を漏らす。

「おいおいマジで出んのかよ。驚いたぜ」


 金髪の少女は数秒の間、化け物と向かい合った。

 そして、少女は不敵な笑みを浮かべ、拳を握り締めると化け物目掛けて駆け出した。

 それと同時に少女を捕らえようと放たれる化け物の腕。


 最初の右の一撃を右前方に飛び回避。次に襲ってきた左の一撃を左前方に飛ぶことで回避した。


「遅えッ!」


 続け様に放ってきた3本目の手に対し、光をまとった拳でカウンターを放つ。そして、化け物の腕が1本消滅。


「キェーーッッ!!」

 そして、化け物は奇声を発すると、口から霧のようなものを噴射。


「オラァ!!」


 それに対し、少女は光を纏った蹴りを叩きつける。霧は跡形もなく霧散。化け物は目を見開き、驚いたような目で少女を見つめた。


 そして、生まれる一瞬の隙。

 すると、今度は少女の両足が光を放つと同時に大きく跳躍し、化け物との距離を一気に詰めた。


 化け物は目を大きく見開く。

 

 放たれる光の右拳。

 ドゴッ!


 次の瞬間、化け物は大きく吹っ飛んだ。


 ガラガラガッシャーン!!


 あたりに響くけたたましい音。そして、無惨に崩壊していく解体工事中のビル。


「あちゃーっ。やっちまったなあ。

 ま、知らんぷりしとけばいっか」


 少女はしばらくビルが崩壊する様をボーっと見つめた後、バツが悪そうにそう呟いた。そして、公園を立ち去ろうと一歩踏み出した。


 ヒュッ!!

 その時だ、何か白い物が少女目掛けて飛来してきたのだ。

 


 ぺチッ!

 少女はそれを叩き落とし、足元に目を向けた。すると、変な文字や絵のようなものが書かれた紙切れが落ちていた。

「なんじゃこりぁ?」


 少女が視線を上げると、真っ黒な黒髪に、長めのもみあげを白いヘアバンドで留めた巫女服の女が立っていたのだ。

 そして、腰には一本の日本刀を下げていた。


「いきなり何するんだよ?」


「あんたがこの町で問題を起こしたからよ。噂を聞きつけて妖怪退治にきてみればこの有様よ。というわけで、代わりにあんたを退治させていただくわ」


 巫女服の女はポケットから3枚のお札を取り出すと、腰に下げた刀を抜き放った。


「おいおい、なんだか面白いことになってきたじゃねえか」

 金髪少女は不敵な笑みを浮かべると、光を纏った拳を握りしめ、巫女服の女に向かって駆け出していった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る