恋踏み
双葉紫明
第1話
最初に要件を伝えるのが手紙のマナーだと言う人がある。それに倣って。
きみが好きだ。僕の彼女になってくれ。
あれ、理由も述べてしまったね。これだけで良いのかもしれない。
けれど僕らは複雑だ。引っ絡まって、ねじ曲がって、押し潰されて、かくれんぼに影踏み、糸電話。ふたりだけでずうっと一年この調子。
だいたい誰かに相談するもんだ。僕はその一喜一憂を親友に全部見せて来た。きみが本当に誰にも相談してないのなら悲しい。相談に乗ってくれるのは、きみを好きな人だからね。
けれども若い時の恋とは違う。せっかくこんなに壊し合ったんだ。お互いの知りたいところも知りたくないところも知ってて、だからわからなくなってる。
僕の精神状態は最悪だ。しかし、きみの精神状態も良くは無い事を知った。お互い忙しい。
だけれど僕らは離れて、離れ切れてない。きみはいつもはっきりしない。それがきみの為なのか、僕の為なのか、それもはっきりしない。
はっきりしようじゃないか。
はっきりしないままが良いかい?
それならばそうしようか。
とにかく色んなきみと僕の事、穴が空くまで真っ黒に書き連ねて。
それで考えてみるのも悪くない。
きみも僕も美しいから、きっと美しい話が書けるに違いない。
きみにだけ書いて来たんだから、きみがわくわく開いて、ふっ、と笑って閉じる様な。
最初からそれが書きたかったのに、書いては破り、書いては破り、破る原稿きみが読み。
だからこの恋文が僕の処女作なんだ。
はじめまして、作家、双葉紫明です。
読者はきみと少しの友達。
明るく、楽しい、物語を書きたいと、この一年間書いては破って来ました。
どうぞよろしくお願い致します。
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