第3話 天界前編

 俺は少しうるさくて目が覚めると突如目の間に俺が見えていたのだ。

 昼飯ひるいが泣きながら不快の権化共と言い争っている姿を見て、俺は死んだと確信する。


「ハ、ハハ。まさか自分の死にざまを見る事になるなんてな」


 この三十八年間、彼女いない歴=年齢なのに最後は孤独ではねられるなんて思いもしなかった。いや、昼飯ひるいがいたから孤独じゃないな。

 それはさておき、この後はどうすれば良いか分からずに考えていた。

 えっと確か、三途の川を渡らなきゃいけないのに、どうやって行けるんだ? そもそも気が付いたらあの世にいたとかならないのか!?

 うんうんと唸っていると、急に目の前が眩しくなって一度目を閉じる。しばらくして目を開けると、そこには六人の天使が俺の前に降り立っていた。

 先頭の天使はいかにも高位のオーラで、一般人である俺でさえ強さを感じさせる。

 姿は白銀のロングに、青緑の瞳、端正とした顔つきに、天使らしくない豊満な肢体、純白の羽が左右合わせて六枚あり、分かりやすく言えばクール系グラマー天使だろう。

 先頭の天使の左右後ろにいる方は、四人の中に片手剣だけ武装している奴がいるが槍と盾を持っていて、通り魔やストーカーを撃退できる程度戦えそうだった。

 姿は青のパーマに、素顔は見えないが真鍮の仮面を着けて、純白のローブの隙間から羽が出ていて、一瞬兄弟かと思った。

 後尾の天使は歴戦の猛者を連想させるくらい、剛健な鎧を着ているけど、下半身が台車と連結していた。

 姿は褐色のウルフカットで、紅玉の瞳、口元にはマスクを着けて、鎧の隙間から赤い羽が見えていた。

 一体何が起きたかと思うと、白銀天使が俺に近づいてくる。


「あなたは三堂みどう琢磨たくまですよね?」

「そうだけど、どうして俺の名前を知っているんだ?」


 白銀天使が俺の名前を知っている事に聞こうとする。

 すると彼女は後ろにいる天使に書類を貰うと、俺に見せる。


三堂みどう様の情報は全て天界に共通されています」

「天界!?」


 白銀天使が言った事に驚く。

 天界ってヴァルハラや高天ヶ原と同じ場所って聞くぞ! そんなすごい所にいる天使が何で俺の前に現れたんだ?

 少し考えていると白銀天使は何かに気付いて、頭を下げる。


「申し訳ございません、自己紹介がまだでした。私の名前はフィム、位は熾天使セラフィムです」


 フィムさんは自己紹介を終えると、後に続くように自己紹介を始める。


「私たちは名前はないので、天使エンジェルと呼んでください」

「俺様の名前はグラフィティ、位は座天使ソロネだ」


 フィムさんとグラフィティさんは、やはり高位の天使だった。

 やっぱりなんというべきかオーラが違うというか分からない。だけどものすごく強い事だけは分かった。

 それよりもなんでフィムさんが俺の前に現れたか聞こうとする。


「何で俺の前に出てきたんだ、それに天界に行って何をするんだ?」

「それについては天界で詳しく説明しますので、グラフィティの台車に乗ってください」


 俺はフィムさんに言われた通りに、乗ろうとした前に忘れていた事を思い出す。

 そう言えば、パソコンのデータのこと忘れてた! 俺は急いで天使エンジェルに頼んで遺書を作ってカバンの中に入れる。

 これでもう悔いが無いな。それにあいつらの驚く顔が見れなくて残念だけど。

 そう思いながら台車に乗ると、グラフィティさんは高らかに叫ぶ。


「行くぜェェ!」


 叫ぶと同じに走り出して、あまりの速さに驚く。


「ウォォ!?」


 驚きつつも周りを見るともう上空にいて、この世界に感慨深くなる。

 本当に死んだ上に、今から天界に連れていかれるんだな。そう思いつつ台車は進みだす。

 しばらく台車で進むと深い霧に包まれ、目を瞑る。少し経って開けると景色に目を奪われてしまう。

 それは絶滅した生き物であるサーベルタイガーやマンモス、空想上の生き物であるペガサスやグリフォンが生きて、見た事が無い果物や宝石で出来た大樹が生えている上に、天女や天使達が天界に住んでいた。

 あまりの凄さに啞然としているとフィムさんが肩を突く。


「着きましたよ」

「アア、着きましたってことは……」

「はい。今から神様に合います」


 やっぱり天界や神聖な場所には神様がいるのがセオリーだな。

 そう思いつつフィムさんについて行く。

 ちなみに天使エンジェルとグラフィティさんは「他の仕事がある」と言って別れた。


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