第32話 打ち上げの予約

文化祭を翌日に控え、3年だけが早々に下校となる中、千世と校舎を出ようとしたところで、山川先生に呼ばれた。


「茅野さーん! ちょっと!」

「はい?」

「あのね、茅野さんのご親戚の方、確か居酒屋さんだったよね?」

「そうです」

「急なんだけど、月曜の夕方って予約とれないかなぁ? 8人なんだけど」

「聞いてみましょうか?」

「助かる。磯辺先生がこっちに帰って来られてて、せっかくだから、文化祭の打ち上げもかねて、先生方で集まれないかって話になったの。磯辺先生のお家の近くで早めに始められるいいお店探してて、茅野さん思い出したから」

「今、聞いてみますね」

「ありがとう!」


吉にぃに聞くと、月曜だから予約も入っていないし、お店も早めに開けてくれると言ってくれた。


そのことを伝えると、山川先生は「ありがとう! お願いします」と、喜んで職員室に戻って行った。


「磯辺先生来るんだ! 月曜日、花乃のとこ遊びに行こうかな」

「いいよ、来る?」





その日の夜、桔平ちゃんから電話があった。


「花乃~、文化祭の打ち上げ吉でやることになったんだけど……」

「あ……」

「何?」

「桔平ちゃんも来るやつだったの?」

「知ってたんだ」

「山川先生にお願いされたから」

「花乃とのこと挨拶もできていないのに」

「気にしなくていいよ。叔父なんだから」


桔平ちゃんが来るということは……


「もしかして、筒井先生も来る?」

「行くよ」

「そう、なんだ」


弥生さんのことが頭に浮かんだ。

弥生さんの言っている「筒井」という人と、筒井先生が同じだったら……大丈夫なのかな……


「花乃?」

「吉にぃも弥生さんも、桔平ちゃんのことは常連さんとしか思ってないから、知らんぷりでいいよ」

「それでいいんだろうか……」

「いいってば!」

「花乃が卒業したら、正式にご挨拶させてもらうから」

「まじめだなぁ」

「そんな中途半端なわけにはいかないから。とにかく飲みすぎないようにするよ」

「今更遅いと思うよ?」

「そうだった……既に醜態をさらしてる」

「大丈夫だよ。わたしの好きな桔平ちゃんなら」

「その根拠のない説得でも安心する。緊張はするけど」

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