第26話4月13日

 昨日デートをしてから明くる日。つまり今日なのだが。

 昨日リリス様から届いた通信具をネモフィラに渡そうとしたところで、待ったが掛かった。なんでも使ったのは一度だがずっと持っていたから、愛着が湧いてしまったのだ、とのこと。スイセンに確認を取ると、私は気にしないからネモフィラに渡してあげて、と言う。


 なのでスイセンから貸与していた通信具はネモフィラの物となり、新しく貰った通信具はスイセンの物となった。

 そこでネモフィラが、他にもこういう物はあるのか?と聞いたために急遽、魔道具について皆で学ぶことになった。


 いつものように、リコリスとカトレアが教えてくれる。

 アスターは変身すれば同じだけの知識を持っているのではないか?と聞いたのだが、変身している間は覚えていてもそれを自分自身に還元できるかはまた別の話しなんすよ、との回答をいただいた。楽に知識を得ようと思っても出来ないというのは、知識を得ることに近道はないらしいと実感するには十分な出来事だった。


 そうして、魔道具について教えて貰ったのだが。

 まずは生活魔法について学ぶことになった。なんでも、魔道具とはそのほとんどが生活魔法では出来ない日常的なことを行うことを目指した道具だと思われているから前提知識として必要なのだそうだ。


 まずは、何をおいても必要になる水の生成。飲み水に使ったり、何かを洗うときなんかに使ったりする。ここで、何かをずっと冷やすということが出来ないので冷蔵庫の魔道具が開発されているということだ。

 氷も作ろうと思えば作れるのだが、常に一定の温度で保冷する。というのは不可能だからとのこと。

 学園では自分で出来るものがほとんどのため、水は無料で使える。生成するのに大した手間も要らないために、無料で使えるというのは助かったものだ。


 次に火を点けること。これについては生活魔法の範疇で温度を上げたり下げたり出来るので、特に魔道具の開発はされていないとのことだ。

 俺は魔力がないので、料理の授業は自力で火種を点けるところから始めなければいけなかった。そのため、開発されていればよかったのにと何度も思うことになったことを覚えている。


 次は浄化の魔法。物や体を綺麗にする魔法だ。洗濯物や洗い物、掃除や体を綺麗にするのに使ったりする。これも特に魔道具が開発されていない。

 家事仕事が大変だったので、リコリスが召喚されてからはずいぶんと楽をさせて貰ってしまっている。

 体を洗うにも水で流さないとスッキリしないという者のために学園には大浴場が設置されている。

 ここでは、使用時間が決まっているが温水も流れるようになっているため居心地が悪いながらも使っていた。しかし、それを知ったリコリスが部屋のシャワーを使うように提案してそれに甘えさせて貰っている。


 俺たちの人数も増えたため、リコリスの負担が大きいように思えるがアスターが来てからはリコリスを写し取って貰っているためある程度軽減できている。

 カトレアはどうかというと、あくまで使えるというレベルなのでリコリスの二度手間になるため行えないと語っていた。


 生活魔法は以上となる。つまりこれらの方法で行えない日常に密接したことが、魔道具として開発が進んでいるということだ。


 その中でも俺たちがよく使っている通信具は、もうひとつの通信具との間に登録をすれば通話が出来るというものだ。

 現在俺たちは全員が通信具を持っているが、そこに登録されている連絡先に差がある。まず俺はリリス様、ガーネット様、学園、カーミラ様の連絡先が。ガーベラはリリス様、ガーネット様、カーミラ様。スイセン以外がリリス様とカーミラ様。最後にスイセンがリリス様。


 スイセンがネモフィラに貸与していた通信具を譲渡していいのかと、確認を取った理由でもある。もちろん誰かと一緒に居れば同時に話すことは出来るだろうが、誰にも知られずに相談などはできないだろう。

 特に隠し事にする理由も存在するとは思えないが、気楽に連絡できるというのは便利でもある。


 もし今度カーミラ様に会う機会があれば、スイセンにも連絡先を登録して貰えるようお願いしてみるつもりだ。きっと快く引き受けてくださるだろう。


 そして次は、そのカーミラ様が使った過去へ飛ぶ魔道具だ。これは時間魔法といわれるものを再現したものらしい。効果は俺たちも使ったように過去へ飛ぶというものだ。これについては特に語ることもこれ以上ないので、割愛することとする。


 今度は何度も学園から使って貰っている空間拡張の魔道具だ。彼女たちの個室で6部屋にリビングとシャワー室、トイレや元々の俺の部屋など何度も拡張して貰っている。消すときは同じ魔道具を使って消すので、いつ消えるかといった不安を感じることもない。とても便利に使わせて貰っている魔道具だ。


 アスターと真名契約するときに、俺が使った魔道具は詳細が分からないらしい。あの魔道具は、リリス様が悪用されないようにしっかりと管理すると聞いている。


 俺の知っている魔道具については以上なので、ここまでにするそうだ。実際に知っているものを皆で挙げていったら、とても1日では教えきれないらしい。


 最後にどの魔道具にも共通していることについて学んで、今日は終わるそうだ。


 実は魔道具は現在作られていないらしい。正確には作ることが出来ないとのこと。いつの時代からかは不明だが失伝してしまったとのことだ。今あるものは、遺跡から発掘された物や魔道具を作る魔道具というものが存在しているためらしい。

 後者は冷蔵庫を作る魔道具を本の複製を作成する魔道具、コピー機を作る魔道具というものが存在し世界的に助かっているとのこと。


 その中でリリス様からこれだけ通信具を頂いているのは、とても厚遇されているとのこと。そこまでは知らなかったのでまた今度、こっそりと感謝を伝えようと思う。リコリスを救出して貰うために手伝っていただいたときにも感謝を伝えたのだが、気にしないでいいわよ、と一言伝えられただけだったのでまた同じようになるだろうがそれでも伝えたいと思う。


 また共通する事柄として、どんな力を用いても作動するという仕組みがあるらしい。そうでなかったら俺も使える魔道具が制限されていたかもしれないと思うと、怖くなった。


 そうして、身近にあるものにもまだまだ知らないことがあるということを知った1日になったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る