File01-06
「何でリュウは戻ってこないのよ?!」
[あと少しで戻ると言っている! お前が落ちつかないでどうする、ルミナ!]
避難補助を終え、五十キロ圏外に出ていたルミナはデュオに通信で状況を確認していた。
「落ちつくって、仲間が一人帰ってきてないのに落ちついてられないでしょ?! やっぱりあたしも結界内に入る!」
ルミナは結界のほうを向いて、飛び出そうとした。が、それをそばにいた魔導士たちが取り押さえて止める。
「やめろルミナ! 危険すぎる!」
「お前が行ってもどうしようもないだろ!!」
「放して! リュウが危ないって言うのに!!」
[お前も行って巻き込まれたらどうする! 落ちつけ、ルミナ!!]
「リュウが死んだらどうすんのよ!!」
「誰が死んだって?」
ルミナが叫んだとき、上空から第三者の声がした。その声に、ルミナだけでなくルミナを取り押さえていた魔導士や、通信先のデュオたちも驚きの表情を浮かべた。
「……リュウ」
顔をあげて、ルミナがその姿を見た瞬間、青い瞳がふるふると揺れ始めた。
「あ、だ、大丈夫、だ、った……!」
そして、ルミナはたん、と跳躍した。それを押さえる者は誰もおらず、そのままルミナは上に向かって飛んだ。
「うおぉ?!」
上にいたリュウは、下から飛んできたルミナを何とか受け止めた。胸にしがみつくルミナが震えているのを見て、リュウはふっと微笑んだ。
「悪いな、ルミナ。心配かけた」
「本っ当にね!! あー、もう! デュオさんも心配してたんだよ?!」
「それは知ってる」
「ああもう! 心配している人がいるってのに、そいう態度は良くないんじゃないの?!」
「ああ、わかったから! 悪いが、俺、もう本部に戻らないといけないから」
ルミナの肩を掴み、リュウは胸元からルミナを離す。それから、逃げるようにリュウはその場から去った。去っていったリュウに向かって、ルミナは怒鳴る。
「ちょ、ちょっとリュウ?! もうちょっと再会の何かがあるでしょー!!」
「ところで、あのリュウさんの後ろにいた少女は一体?」
「え?」
言われるまで、そんな少女の存在に気づきもしなかったルミナはぽかんとした表情でリュウの去っていった方向を見た。
本部に戻ってきたリュウを待っていたのはデュオと、白衣の人物たちだった。
「無事戻ってきたなリュウ」
デュオが言った瞬間、リュウの両脇を白衣の男二人ががっちりと固めた。突然のことに、リュウは驚きを隠せず「は?!」と声を上げた。
「な、何だデュオ?! どういうことだ!」
「うるせぇ、さっさと検査室に連れて行かれろ」
「はあ?!」
白衣の男たちは、引きずるようにリュウを連れて歩き出す。抵抗しようとするリュウだったが、しっかりと腕をつかまれてしまっていて、逃げることは出来ない。両脇にいる男たちは二人とも眼鏡をかけていて、反射でその目の下の表情が見えない。二人を不気味に思いながら、リュウは苦笑いを浮かべた。そんなリュウの一歩後ろを黒い髪の少女がついて歩いていた。
「……あれが、リュウ・フジカズが契約したドールですか」
「ああ、みたいだな」
デュオに、一人の白衣の女が声をかける。女もまた、先ほどリュウを連れて行った男たちと同じように眼鏡をかけている。司令室を上げて、少し目を細めて少女の背中を見つめていた女は、小さく息を吐き出した。
「前代未聞ですよ。魔導士がドールと契約するなんて」
「俺も聞いたことないな。まあ、あいつの存在自体が前代未聞だから、イマサラって感じだけどな」
半ば呆れるようにデュオが答えると、女も同じような笑みを二人の背中に見せた。そして、女も司令室を出る。
「結果は出たらすぐに報告させていただきます。あの状態だと、多分、異常はないと思いますけどね」
「だろうけど、一応隅から隅まで調べといてくれ。何かあったら困るからな、うちのエースに」
デュオが言うと、女は背を向けたままで手を振った。
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